《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》49 真意よ、伝われ

ガリにどう話せばいいのか。

競馬サークルであの事故の調査を始めたとは言えるはずもない。

即刻、學生にそんなことをさせているんですか! と厳しく反応されるだろう。

フウカが、などと言おうものなら、責任転嫁ととられて、ますます形勢は不利に。

「思い出話をしようとしたんじゃないんだ。純粋に、彼のことをもっと、ちゃんと知っておいてあげたいなと」

誤解しないでほしい。

ノーウェは僕が教えた學生の一人。

競馬サークルのメンバーでもあった。

競馬場でもちょくちょく顔を合わせた。彼が勤めている財団のイベントで。

でも、なんていうか、彼が亡くなって、思った。

のことを何も知らないって。

講師である僕が言うのもおかしいけど、ノーウェだけじゃなく、學生達とある期間一緒にいて、いわば何十時間も顔を合わせていたのに、そしていろいろな話をし、指導し、評価までつけていたのに、卒業とともに関係は一気に薄くなっていく。

いつしか、街ですれ違っても気づきもしない。

たとえ気づいたとしても、知らん顔して往きすぎる。

ノーウェのように、変な縁で、つまり競馬場で顔を合わせるということはあっても、だからといって、學生時代のように関係が深まることはない。

學生がどうというんじゃないよ。

僕の方。

かれこれ、もう四百人はいるだろ。

僕が教えた學生。

でも、名前を憶えていて、かつ顔と一致し、なんて人は數えるほどしかいない。

電車で見かけても、自信をもって聲を掛けられる人は十人、いや、五人いるかどうか。

なんだか、申し訳ないような気がしてね。

ガリは書籍庫にもたれ、閉じたアルバムの上に肘をついて聞いている。

正直に言うよ。

ノーウェが死んでから、彼の噂をいろいろ耳にした。

実に、知らないことだらけ。

ノーウェの、ごく一面、いやごくごく一部しか知らなかったんだなと。

講師だから、それでいいのかもしれないし、それ以上をむこと自、間違っているのかもしれない。

けど、なんとなく、寂しい気がしてね。

僕が男で、彼たちは素敵な

だから、そう思うのかもしれないけど。

でも。

いや。

もうやめるよ。

僕が子大の講師として、まだ半人前、ということだろうから。

ミリッサは、一気にしゃべったのではない。

むしろ、詰まり詰まり、ガリの反応を見ながら、真意よ伝われ、というつもりで話した。

しかし、もう、引き上げるべきときだ。

ガリから話を聞き出すのは、自分には無理なことだった。

ノーウェに関する噂の數々。

すべて真実として、れなければいけないのだろう。

ノーウェの幻想は、まさに幻を見せられていただけのこと。

そう思うしかない。

「じゃ。三限なので」

と、ミリッサは背を向けた。

ガリは何も言わなかった。

ノーウェの噂の真偽を確かめようとする試みは失敗だった。

授業準備室を出て、階段を降りようとした時、ガリが部屋から出て見送ってくれていることに気づいた。

ミリッサが、ひょいと手を挙げると、向こうは小さく頭を下げた。

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