《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》50 私、先生が好きになった

妖にとっても雨はおっくう。

が濡れる。

気は滅る。

雨に打たれてまどろみもできやせぬ。

教室にっておってもよいが、中には、ワレを厳しい目で見るおなごが二人もいる。

しかもヘビまで。

ミリッサという男の見張り。

このお役目の意味が、しだがわかってきた。

ワレラと同類になるときを見逃すな、というわけだ。

そして異常な行をせぬかどうか、見ておれというわけだ。

かつ、危急のことあれば、助太刀せよと。

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三限、四限と、いつも通り進む。

雨のため、裏山行きは中止。

誰からもブーイングは聞かれない。

唯一、ランががっかりした顔をしただけだ。

つい一昨日、あの神社でメイメイから聞かされた話がに押し寄せるように蘇ってくる。

は今、何食わぬ顔で教室に座っている。

ハルニナは、學校に來ていないのか、授業に姿を見せない。

様々な疑問が頭をもたげてくる。

しかし、授業に集中しよう。

デザイン演習に取り組んでいるメイメイに特段変わったところは見られない。

あくまでいつも通り、メイメイはメイメイなりの取り組み方で、頭をひねりペンをかす。ただそれだけ。

一緒に下校する約束のあるランも同じ。

ただ、今日のランとの下校。

単に、一緒に帰ろうね、というシンプルなアトラクションではないだろう。

きっと、とんでもない話を仕掛けてくるに違いない。

なにしろ、いつもとかなり違う黒裝束。

ノーウェの件について、摑んだことが何かあるのだろう。

騒ぎがする。

毎回のことであるが、デザイン演習には居殘る學生がいる。

メイメイとランはさっさと出ていってしまい、殘るは一人。

が一緒に下校を、と思っているなら気まずいことになるが、そこそこのところで満足したのか、ものの十分もしないうちに提出して出て行った。

後は、一人で最後の整理整頓。

窓の外は雨。

しかも土砂降り。

ふと、誰かに見られているような気がして、ブラインドを閉めた。

正門で待っていたランは、黒裝束がかなり目立つ。

案の定、大事な話があるんです、と大きな瞳をさらに大きくした。

學校前の下り坂。

歩道を打つ雨腳がいよいよ激しくなってきた。

水が歩道の上を流れている。

正門まで戻って、待機中のタクシーに乗ろうかと思うが、學生と一緒だと、それもはばかられる。

おっ、メイメイ。

追い越そうとしたタクシーが急停止した。

乗っていく? というように手招きしてくれる。

が、ランは、いえいえ、というように手を振り返し、拝む仕草で謝意を表した。

ちょっと怪訝な顔を見せたメイメイ。彼を乗せたタクシーは水しぶきを上げて坂道を走り下っていった。

「ミリッサ、だいぶ前に、授業で雑談してたでしょ」

と言って、歩き出したラン。

やれやれ。

乗せてもらえばいいものを。

「神の存在は信じないけど、妖怪はいると思うって」

意表を突く質問に、ミリッサは思わず構えた。

「ああ、言った、と思う」

実は、失言だったと後悔している。

神を信じるかどうかは個人の問題。

そこに教師たるもの、言及してよいはずがない。

しかも、斷言してしまったことに。

大學から注意をけること、必然。

「それ、今も変わりません?」

答えに詰まる。

黙っていることを諾ととったか、ランがクスリと笑った。

「あれを聞いて、私、先生が好きになった」

指摘されるかと思いきや、ランの言葉にホッとはしたものの、別の張が走る。

好き、という言葉に。

それに、人を好きになる理由やきっかけは様々あろうが、それにしても妙な理由だ。

ランの背は低い。

傘の下で、どんな顔をしてそう言ったのか、わからない。

ただ、ニュアンスとして危険の臭いはない。

栄だな」

「そう? 言われ慣れていると思うけど、私は」

「まあ、もう言うな」

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