《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》52 あなたにぴったりじゃない。初歩から學ぶシリーズだって

紀伊國屋の店、歩きながらガリがしてくれた話は、かなり衝撃的だった。

ノーウェはノンちゃん、アデリーナはエーちゃん、ジーオはジーちゃんと言い換えられていたが。

ランに聞かせてもいいことかと思うほどに、激しい口調で。

ノンちゃんはとんでもない娘。

のおかげで辭めさせられた人がいたでしょ。

とんだ災難。彼しでも関わったおかげで、弄ばれて、最後は破滅に追い込まれ、行方知れずに。

あの人ほどではないにしろ、同じような目にあった男はたくさんいる。

そのたびに問題にされたけど、男は立場が弱いよね。こと、こういう件に関しては。

自分に男が靡くのを楽しんでいた。

蔑み、おもちゃにして、ポイ。

その後始末の仕方がえげつない。學校のハラスメント相談課に逃げ込んで排除する手。

私、立場上、言えないけど、彼が卒業して、心底ホッとした。

が訴えた「被害」ってのが本當に実在したのかどうか、調べるのが私の役だった。

男たちの涙を何度見たことか。

學校で、學外で、男をたぶらかし回っていたノンちゃん。

が殘した傷跡はまだ學校に殘っている。

ご存じと思うけど、監視カメラやマイク、PC履歴の吸い上げ。

もっとひどいことも行われている。

だけど。

それらは皆、彼がやったことの後癥。

それに、男だけかっていうと、そうじゃない。

たとえばエーちゃん。

かわいそうだった。

あれじゃまるで奴隷。

主人と召使い。エーちゃんはシンデレラ。ジーちゃんは、そう、意地悪なお姉さんね。

私、聞いたことがある。エーちゃんに。

どうしてそこまでして一緒にいる必要があるのかって。

抜けたらいいじゃない、って。

は泣きながら、こう言った。

できないんです、と。

なぜって聞くと、首っこを摑まれていて、前世からの宿命なので、って。

意味は分かりませんでしたけど、苦しくても逃げられない、なにか約束でもあるようでした。

宿命みたいな。

エーちゃんが助手として學校に戻ってきたとき、私、どれだけ喜んだことか。

が溌剌としていたから。

ノンちゃんの呪縛からやっと逃れられたんだなって。

でも、エーちゃん、いつの間にか行方不明に。

これって、どういうこと?

私には何もわかりませんけど、彼がかわいそうで。

どんな呪縛があったのか知りませんけど、逃げ切れなかったのかなと思ったり。

ガリは參考書を取る手を止めて、顔を上げた。

「ということです」

ミリッサは、自分の顔が紅しているだろうと思った。

ランは、何も聞いていなかったよというように、し離れた場所で本を次々に手に取っては放り出している。

「聞いてみたかった話って、こういうことでした?」

どう答えればいいのかわからないが、とりあえずミリッサは禮を言った。

「ありがとうございます。疑念が解けました」

「私、エーちゃんが好きだった。目立つ子じゃないけど、頑張り屋で芯が強くて、まっすぐなところが」

「はい」

ミリッサは耳が痛かった。

先日まで、面影さえ覚えていなかったのだ。

「よかった。ここで先生と會えて。誰にも言えなかったことを聞いてもらえて、ありがとうございました」

「あ、いや、こちらこそ。誰にも聞けなかったことを、聞かせていただいた」

「これなんかどう? あなたにぴったりじゃない。初歩から學ぶシリーズだって」

「もう!」

「うそうそ。知ってますって。貴が最優秀績賞を取った學生だって」

ガリはこうして話を切り上げ、ではまた學校で、たまには授業準備室も覗いてくださいな、と背を見せた。

ミリッサとランは何も買わずに、茶屋町口の出口から書店を出た。

今の話はなかったかように、ランがはしゃいだ聲を出した。

「ガリさんからお墨付きもらったから、そこらへんで晩飯にしよう!」

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