《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》57 このままではわたくし、同行の者とはぐれてしまいます
提燈を口から落とし、見上げたその先、巖の上部から垂れ下がっていたもの。
見たこともない大蛇だった。
見據えられてミリッサは後ずさった。
巖にまだ足を掛けていなくてよかった。
転げ落ちるところだった。
そろそろ一歩二歩と退くと、蛇も歩調を合わせるかのようにをらせ、ジリ、ジリッと降りてくる。
おい。
待たんかい。
なんだよ。
ラン。
どこにいる。
何とかしろ。
蛇との睨み合いなど、経験はない。
しかもこんな大きな奴。
視點をどこにもっていけばいいのかわからない。
目を合わせていいのか。
そっと提燈を拾い、ゆっくり前に突き出した。
失せろ!
消えてくれ!
お願いだーーー!
しかし、期待は外れた。
大蛇は一気に巖を降り切ると、あろうことか、飛びかかってきた。
その俊敏さたるや。
ミリッサは提燈を取り落とし、腰が抜けそうになるのをかろうじてこらえて、走り出した。
暗い徑だ。
走るのは危険。しかし足は止まらない。
冗談じゃない!
クマザサの葉で顔が切れた。
このままではランとはぐれてしまう!
振り返った。
んが!
蛇が追ってくる!
ゆるゆると!
距離がみるみるまる。
いかん!
これは、いかんぞ!
また走る。
元來た道を。
坂を駆け下り、駆け上り。
くっ!
まだ追ってきやがる!
どういう了見だ!
かなりの徑を駆け戻ったところで、ようやく大蛇は追ってこなくなった。
しかし、徑の橫、シイの大木の一の枝にその巨大なを橫たえた。
徑のちょうど真上に。
そしてこちらを見據えてかなくなった。
枝がしなって、蛇の頭がミリッサの顔のあたりになった。
まずい。
これでは、あいつの真下を潛っていくことになる。
ランと合流できない。
ますます夜が更け、この薄暗がりは完全な闇になるのでは?
そうなればもう一歩も先へは進めなくなる。
意を決して行くべきか。
蛇の下を頭を下げて。
それとも、ランが戻るのを待つべきか。
それとも、茶屋町のあの家まで戻るべきだろうか。
果たして、戻れるのか。
戻れたとしても……。
いや、戻れるとは考えない方がいい。
きっと、あいだみちにはイレギュラーな対応のはずだ。
しかも、なんの「お禮」も持っていない。
そうか!
聲をかけて、通してくれと丁寧にお願いして。
人間の聲を聴き分けるかもしれない。
なにしろ、ここは妖怪の徑。あいだみちの。
「巳さん」
ミリッサは恐る恐る聲を出した。
震えぬよう注意しながら。
「巳さん。通してくださいませんでしょうか。このままではわたくし、同行の者とはぐれてしまいます。どうしても會わねばならぬお人が待っているのです」
通じたか。
きはない。
ミリッサは一杯の勇気を振り絞り、一歩を踏み出した。
が!
失敗だった。
蛇はたちまち鎌首をもたげたかと思うと、クワッと口を開いた。
人間の首など、ひと噛みで喰いちぎってしまう巨大な口を。
親指ほどの巨大な歯が並んでいるのさえ見える。
おい、おい。
巳さんよ。
それ、俺を食う気があるってことか?
そんなことはないんだろ。
その気なら、もうとっくにとっつかまって、ぐるぐる巻きにされて。頭から飲み込まれているはず。
「巳さん、巳さん、お願いです。通してくださいませんか」
また一歩。
が!
飛びかかってきた!
すんでのところで蛇の跳躍は屆かず、地面に落ちた。
ミリッサはまたも走りに走った。
ここは!
なんてことだ!
最初にランがおはぎを置いたところにまで戻ってきていた。
振り返るとまだ蛇が追ってくる。
じりじりと。
やむなし!
茶屋町の家まで戻るしかない!
ん?
違うような気がする。
三叉路だったはず。
茶屋町から來た道は消えていた。
そうか。
茶屋町の口は、鍵が、と言っていたな。
用が済めば道も消えるってわけだ。
さすれば、こちらだが。
徑は細く、すぐそこから笹に埋もれて判然としない。
けもの道のように、人の目にはかろうじて痕跡が殘るのみ。
振り返ると蛇が近づいてくる。
もう迷っているわけにはいかない。
行くしかない。
きっと、いつもあいている口とやらに行きつくと信じるほかない。
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