《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》60 ぐるぐる飛びの怪

し先、道の脇、大きな樹の下、まだ夜の闇が居座っているところに、何やら構築らしきものがある。

ますます好都合だ。

人里が近い証拠。

切り石を組み合わせた小さな祠。

が。

えっ!

祠がいた。

いや、いたように見えただけかもしれない。

疲れ果てている。

立ち止まり、息を整えた。

げえっ!

いている!

ガタガタ、ガタガタ。

祠の屋の石が!

わ、わっ!

浮き上がった!

十センチほど浮いた位置で、ぐるぐると回りだす。

今まさにこちらに飛んできそうな勢いで。

足が震えだした。

これも妖怪の仕業か。

前を通ることはとてもできない。

かといって、沢も渡れそうにない。

逃れるすべは、斜面を登ることだけだが、かといって、元來た道を引き返すつもりはない。

街へ降りるのだ!

ミリッサは勢いをつけて右手の斜面を登りにかかった。

かん木をかき分け、手や顔をますます傷だらけにしながら。

構ってられるか!

祠はまだ見えている。

見えているところで迂回しよう。

もうあの道から離れるわけにはいかない。

町の燈が見えているのだ。

何としてでも辿りつかねば。

かなり登って左に進路を変えた。

緩やかに下りになる。

遠く、左手に祠。

相変わらず、屋の石は回り続けている。

巖や窪地をかん木や草が覆い隠し、歩きにくい。

けつまづき、足を踏み外して転びそうになる。

足首を痛めた。構っていられない。

巨巖を回り込む。

一軒家ほどもある巖の上には土が積もり、小さな松の木まで生えている。

巖の裏側の地面は窪みになっていて落ち葉が降り積もっていた。

危うくその中に足を取られそうになって、思わず手をついた。

つっ!

掌の傷が広がった。

が噴き出す。

くそ!

まだ祠の石は回っている。

くそ!

なんだっていうんだ!

俺の目の錯覚か?

いや、違う。

明らかに回っている。

ちくしょう!

意味が分からん!

道からし上ったことで、遠く木々越しにまた町の燈がちらちら見えていた。

もうすぐ朝が來る。

空はそんな様子。

そうすれば、歩きやすくなるだろうし、あの化け石もおとなしくなるかもしれない。

よ、差してくれ!

あの蛇も、もう來やしないだろう。

が、ミリッサはその場に蹲った。

呼吸を整えねば、もう、まともにけなかった。

「おのおのがた……」

もう冗談も言えないほど息が切れていた。

祠の石は回っているばかりで、襲ってはこない。

今のところは。

しかし実際は、足だけでなく、頭も働いていなかった。

ただ呆然と、地面と祠を見比べていた。

一息。

まずはここで一息。

ふう!

何気なく、足元の白いものを拾い上げた。

獣の骨だな。

急に気持ちが悪くなって周りを見た。

鹿であろうと豬であろうと、死の上に座り込むのは気持ちのいいものではない。

ゆるゆると立ち上がった。

何の骨か知らないが、散らばっている。

狐や貍の骨ではない。

そんな量ではない。

えっ。

これは!

猿か!

ええええっ!

頭蓋骨?

わ、わ、わわっ!

赤い服の名殘。

赤い靴。

ミリッサはもう後も見ずに、走り出した。

走って走って、道に飛び降りては転び、木のに躓いては転び、それでも全速力で山を駆け下った。

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