《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》63 當學始まって以來の珍事

大學に向かう車の中で、運転席のヨウドウが話してくれた。

「このランって學生には驚いたな。當學始まって以來の珍事だ」

助手席のフウカが再現してくれる。

「ラン、ったらね。ネコ妖怪だっていうのよ。先生を連れまわしたのは私だって」

信じようとしない警察に向かって、ロビーの真ん中で、大勢の人がいる前で、ランは変してみせたのだという。

これが本當の私! 妖怪界七人衆の一人、化け貓とは私のことよ!

ランの大きな目がますます大きくなったと思ったら、いきなり中に変化が現れたのよ。

ググッと背がんで、四足になり、服は消えて大きな、黒い貓の姿になった。

その顔は明らかに怒り狂ってた。

牙を剝き出し、爪を現し、背中のは逆立って。

今にも飛び掛からんばかりに。

さすがに、取り囲んだ刑事から悲鳴が上がった。

拳銃を取り出す者もいる。付の非常ベルを押しに走る刑事もいた。

「わかったか!」

と言うなり、化け貓はたちまちランの姿に戻った。

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「ミリッサがどんなことを話したのか、知らぬ! しかし、これで十分だろう!」

それは一瞬のことだった。

目の前にいるのは若い學生。

今見たものが幻だったのかと思うほどに、鮮やか変劇だった。

「さあ、ミリッサを釈放しなさい!」

ランの要求に即答できない刑事にとどめを刺したのはフウカだった。

こちらはランが説明してくれる。

「フウカがさ、ずるいよ。いつから持ってたのか知らないけど、一枚の書類を出してきてさ。これが見えぬかってじで。刑事たち、青ざめちゃって。何が書いてあるのか、知らないけど」

きっとあれだ。

フウカの両親の名を出したのだろう。

警察庁大幹部の父と母の名を。

「なんて書いてあったの?」

「ひ、み、つ」

「ケチ。私だけ、あんな恥ずかしいことしたのに」

「恥ずかしい? めちゃくちゃ格好良かったよ」

「フウカが先に、効果てきめんの紙を出してくれたらよかったのに」

「そう? あの順番でよかったんだと思うよ。なにしろ、ランのド迫力。それがあってこそ」

いずれにしろ、ミリッサはランとフウカに謝した。

この援軍なしに、自分だけであの部屋から晴れて出てくることは、絶対に出來なかった。

「それにしても」

と、またヨウドウが言う。

「うちに妖怪の學生がいたとはな」

「先生は、驚かない?」

「とんでもない! 気がどうかしたかと思ったさ」

「もう、驚いてないし。というより、怖がってもいないし」

「怖いさ。これから先、君を絶対に怒らせちゃいけないんだからな」

「大丈夫。ちょっと怒ったくらいであんなことしないし」

「ミリッサを助けるためには、するんだ」

「助ける? 違います。元はと言えば私が撒いた種。ミリッサには本當にごめんとしか言いようがない」

ヨウドウに電話があった。

ブルートゥースだから筒抜けだ。

ハルニナからだった。メイメイも一緒だという。

今、警察に著いたんですけど、ミリッサ先生、釈放されたんですね!

よかった!

今、どちらです?

え、大學に向かってる?

ヨウドウ先生と二人?

あ、フウカとランも一緒なんですね。

いやあ、ほんとに心配しました。

すみません。駆け付けるのが遅くなって。

それで、ミリッサ先生は、どんなご様子?

そうですか。

お元気なら、安心です。

お怪我とかは?

などとやり取りがあったが、結局、ハルニナはそのまま失禮します、先生にくれぐれもよろしくお伝えください、と電話を切った。

ヨウドウが、冗談めかして言ってくれる。

「人気講師はやはり違うな。俺がもし逮捕されたって、誰も學生は気にも留めないぞ」

ところで、大事なことがあった。

「今の一件、どうする?」

「ん?」

「口外無用ってことにしておかないか」

ヨウドウが言いたいことはわかる。

もちろんだ。

だがそれは、ランとフウカが決めること。

「でも、たくさんの人が見ていたし、きっとカメラにも記録されてると思う」

「カメラ? 記録されないわよ。あの変は。そこにいる人にだけ、というか、わからせなくちゃいけない人にだけ見えるようにしたから」

「わお! すごい技!」

「でも、私はどっちでもいいし。妖怪って思われてもいいし。実際、妖怪なんだから。フウカは?」

「私はいやかな。親の威でなんでもするって思われたくないし」

結局、あえて口にはしない。

むしろ、できるだけ隠しておく。

ミリッサの主張を警察が認めた、ということにしようということになった。

「でも、ガリさんには會ったよ。梅田で」

「どういうこと?」

「そか、まだ昨日の晩の経緯は話してなかったね」

「ま、それはおいおいってことで。ガリさんにはちゃんと話しておこう」

「だね。彼に噓は通じないしね」

ミリッサは、ホッとして、後部座席の隣に座ってまだ手を繋いでいるランに囁いた。

「今度、俺にも見せてくれよ。オマエの変

「いつでも! なんなら、今夜」

「いや、帰らせてくれ。疲れすぎ」

仕事の約束をすっぽかしたことに今更気付いたが、後で謝りの電話をれておこう。

ちょっと早いが、夕飯を、となった。

もうこの時間、學生食堂は閉まっている。

「ミリッサの好みは、串カツだな」

「開いてるか?」

「ファミレス。そこらの。君らはどうする?」

「もちろん、ご相伴に預からせていただきます!」

「ってことは、俺のおごりか」

「ご馳走になります!」

「複數人だから、それに部長さんも一緒だから、ミリッサ、いいよね?」

と、ランはポンッ、と瞬間、可い黒貓の姿になってみせた。

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