《後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりをけて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜》それってじゃないのかしら?

妹チェチーリアのお話です。

それを聞いたとき、思わず告げたグレイに摑みかかってしまいました。

「噓ですわ! お姉様が死ぬなんて!」

修道院にわたくしの聲が響きました。こちらを気遣うようなグレイの表で、噓ではないと分かってしまいました。

學園でも、ここにきてからも、彼は誠実でしたから。

「ヴェロニカさんの行方は分からない。でも、周囲の狀況から、命はないだろうと……」

グレイ曰く、お姉様の乗った馬車が山の中で見つかり、周囲には大量のの跡があったというのです。

お父様が逮捕されたことは、この修道院に來て、すぐに知らされました。悲しかったですけど、覚悟はしていたことでした。でも、お姉様の死なんて、そんなこと……。

「でも、が見付かっていないなら、生きてる可能だってあるのでしょう?」

微かな可能を見つけたわたくしが尋ねると、グレイは黙りました。だから、可能は限りなく低いだと知りました。

「……たとえ、痕がヴェロニカさんのものでないとしても、深い山の中で、生きていられるとは思えない」

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「なんてことを言うの!? あなたはひどい人です!」

グレイに怒っても仕方ないと分かっていても、の矛先がわからず、なんども彼のを叩いてしまいました。彼は黙っているだけです。

わたくしは修道院を飛び出そうとしました。しかしグレイに腕を捕まれてしまいます。

「どこへ!」

「決まっているでしょう!? お姉様を探しに行くのですわ!」

「無理だ! 山の中だぞ!」

「止めても無駄です!」

「行ってはダメだ! あなたがここを出ると、オレはそれを見逃すわけにはいかない。今度こそあなたを本當に捕らえることになる! オレに、そんなことをさせないでくれ!」

「それがなんだと言うのです! わたくし、怖くありませんわ!」

激しい言い合いに、他の修道さんたちもこちらの様子を覗くように見ています。こんな大聲を出して、後で怒られてしまうでしょうか? でも気になりません。大切な人の安否が分からないのに、自分のことなんてかまっていられません。

目の前のグレイは、とても苦しそうな顔をしていました。わたくしを見張るだけの彼が、どうしてこんな表をするのか分かりません。でも、その顔を見て、わたくしはとても悲しくなってしまいました。

グレイは言います。

「行かないでくれ。チェチーリア、あなたを危険な目に遭わせたくないんだ」

「あなたには、関係の無いことですわ」

「関係なくなんてない!!」

驚いてグレイを見ました。グレイが怒ったように思えたのです。そして、その勢いのままぶように言いました。

「……好きなんだ、あなたのことが! 好きだから、安全な場所にいてしいんだ!」

好き、ですって?

ゲームではこの男は盲目的にヒロインを慕っていましたから、他のに間違っても好きだと言わないはずです。

これも策略でしょうか? でも、彼がそんな格でないことは分かっています。なら、本當に、本心なのでしょう……。わたくしのは張り裂けそうでした。苦しくて、辛くて、どうしようもなくて。

「……ずるいですわ、そんなことを言うなんて」

わたくしの勢いは無くなってしまいまいた。それが分かったのか、彼も腕を摑んでいた手を離しました。

「そんなことを言われてしまったら、行けるわけ、無いじゃありませんか……。わたくしも、グレイのこと、好きですわ」

「え」

グレイは目を大きく開いた後、真っ赤な顔になりました。

この青年は、とても真面目な方なのです。彼は結局、部外者だということで修道院には住めずに、町に住むことになりました。でもわたくしを見張るという任務を忠実にこなすべく、毎日こうして通ってきます。

時々、二人で町に行くこともありました。基本的に、修道は町には出ないのですが、修道院で使うを買ってきてしいと頼まれることも多いものですから。

そんなときは必ず彼も側にいました。たまに、彼がおやつを買ってくれることもありました。餌付け? うーん、そうかもしれないですわ。奈良の鹿も、人間に慣れていますものね。

ともかく、そんな彼に、わたくしも、次第に張が解け心を許していきました。彼と町を歩くのは、とても楽しかったのですわ。

彼は正直に話してくれました。だからわたくしも、自分の思いを正直に言います。彼が大切だと言うことを。

「ええ。わたくしも、グレイのこと、本當にかけがえのない友人だと思っておりますわ」

「ゆ、友人……?」

グレイは何やらふらつき、壁に手をかけました。修道たちが駆け寄ってめています。

「ファイトよウニ」

「負けないで」

「チェチーリアは天然なのよ」

「友達よ、見張りから一歩昇格じゃないの」

そんなことを言っているような気もしますが、あまり聞いていませんでした。だってわたくしは、お姉様のことを考えていましたもの。

こんなことになってしまうなんて。

わたくしが、あの時もし、ミーア嬢をいじめていない潔白だ、ともっと強く主張していたら、何か変わったのでしょうか?

お姉様は無事にアルベルトと結婚して、お父様はさらに家の繁栄をし遂げることができたのではないでしょうか。

ゲームがハッピーエンドになった後で、悪役令嬢チェチーリアの家族はどうなってしまったんですの? どうしてそれは語られないんですの?

こうして思うのは、後悔ばかりです。

お姉様はいつも強くて優しかったのです。わたくしは甘えすぎていたのかもしれません。いつも彼を困らせていました。

あのうさぎのぬいぐるみだって、本當にしかった訳ではないのです。本當に、わたくしがしかったのは。

しかったのは……。

お姉様の笑顔を思い出そうとして、失敗しました。最後に見たのは、いつだったでしょうか。覚えていません。

……だけど、お姉様が死ぬわけありませんわ。

だって、強い人ですもの。

これからは、家族のために祈ります。どうかまた、かったあの日のように、家族揃って笑える日が來ることを……。

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