《後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりをけて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜》國越えですわ!
【assemble】集合。 集めること。
目が覚めたとき、らかく清潔な布に包まれていることに気がついた。いつもと違い大層よく眠ることができた。
「ロス……?」
自分がどこにいるのか分からずに、側にいるはずの男の名を呼んだ。しかし、返ってくるのはざわざわとした正不明な大勢の人間の気配だけで、期待した男からの返答はない。
むき出しの木の天井に、窓からが差している。知らない建。晝間。
(ここはどこ!?)
ヴェロニカは、ようやく森の中でないことに気がついた。慌てて飛び起き辺りを見回す。數臺のベッドがあり、人が寢ている。起きている人も、眠っている人も、皆包帯を巻かれていた。そして自分の傷にも手當てがされていることを知った。
「まさか、病院?」
前の記憶があやふやだ。どうしてこんな場所にいるのか分からない。
(確か、ロスを問い詰めて、それから、それから……)
思い出せない。気を失ったのか。それで、あの男はどこに?
Advertisement
「そうともお嬢さん」
突然聞こえた知らない聲に驚き慌てて目を向ける。
隣のベッドの腕のない男がこちらを向き、笑いかけられる。
「ここはB國前線付近の病院さ。どうして君のようなかわいいがこんな場所にいるのか皆で噂してたんだよ」
「B國ですって!?」
驚いて聞き返すと男も驚いたように目を見張った。その騒ぎを聞いた看護師の一人の中年がヴェロニカの側にやってくる。
「目が覚めたかい、まったく、軽傷のくせに一晩もベッドを占領してさ。起きたなら、空けとくれよ」
「あの、ここは病院なの?」
「あんた、この建の目の前に眠ってたのさ」
(建の前に?)
ヴェロニカの頭はまだ混している。まとまらない思考のまま尋ねた。
「ねえ、わたしの他に男がいなかった? の大きな男よ、異國人みたいな顔つきですごく人相の悪い……」
「さあ、あんた一人だけだったけどね」
中年の看護師がぶっきらぼうに言うと、
「お嬢ちゃん、もしかして男に捨てられたのかい?」
Advertisement
腕のない男が心底哀れんだ目を向けてきた。
それから數日、ヴェロニカは何もせずに過ごした。初日こそ國境付近に橫たわっていたヴェロニカを怪しく思った兵士たちに尋問まがいのことをされたが、「何も覚えていない」と言い張った。
もちろん、名乗った名も噓だ。「アルティ・スミス」と伝えたが、それはアルテミスから取った名だった。
やがて兵士たちも、害意なく、見るからに貧弱そうなは何者でもなく、悪い男に騙され人売買から逃れたのだろうということで結論づけたようだ。実際、悪い男に騙されたのは事実である。
何もしないヴェロニカは看護師たちに疎まれ、病院に院している兵士たちには好の目を向けられ、行力のある幾人かには派の聲をかけられたが、すべて無視した。
判明したことがある。
まず、ここはB國領土、A國との國境にほど近い場所に突貫的に建てたれている兵士宿舎をかねた病院であるということ。
近くに宿舎があり、B國兵士がうろついている。
それから激戦があった後らしく、多くの怪我人が収容されていること。B國は順調にA國に兵を進めているらしい。A國貴族のヴェロニカとしては複雑な気分でもある。
最後に、どうやらロスは本當に姿を消したらしいことだ。彼の気配はどこにもなく、あれが最後のお別れだったらしい。
(わたしが邪魔になったのね)
そう思ってみるが、心の中では気がついていた。……彼が心底悪人でないということを。
A國で追われ生きていけなくなったヴェロニカに、B國でやり直せと言っているようにじた。
(……今更、別の生き方なんてできるのかしら)
生粋の貴族であるヴェロニカにとって、ふつうの町娘のようにをにして働くことも、ましてやここのたちのように看護をするなど考えられなかった。
だから一日中、ほとんど窓辺に椅子を持ってきて、山や外を見て過ごした。紅葉は真っ盛りのようだ。こうしていると、山であの激烈な日々を過ごしたなど夢のように思える。あの震えるような激も、抱いたことすら噓のようだ。
そんな何もしないヴェロニカにも、ただで服と料理、そして寢床が出てくるのはありがたかった。A國で暮らしていた時よりも格段に質は落ちるが、土の上で眠るよりも、寒さも獣も、ましてや敵に襲われる恐怖もなく、多數の人の気配のする中にいるのは安心して眠れるのであった。
ある日、傷ついた兵士が運び込まれてきた。発見が遅くなったらしく、傷にはウジがわき、既に蟲の息である。
流石のヴェロニカも忙しくく看護師たちに聲をかけた。
「手伝うわ」
初日にヴェロニカに聲をかけたあの中年の看護師が驚いたような顔をした後で、首を橫に振った。
「殘念だけどね、お嬢さん。この人はもう助からないよ。あたしらは他の病人の手當てに向かうよ」
他にも數人の怪我人が運ばれている。看護師たちはそこに向かった。目前の兵士は助からないと判斷され手當ての対象から外れたようだ。
ヴェロニカはいたたまれなくなってうじの沸いた男の側に寄る。建の中にもれてもらえずに、外の冷たい土の上に寢かされている。それがこの男の最期の地なのだ。
人の気配に気がついたのか、男は手をばしてきた。頭には目まで覆う包帯が巻かれ、腐りかけのような異臭がする。だがが付くのも厭わずにその手を握った。
「あなたを助けたいわ」
聲が聞こえるのか不明だが、そう伝えると男は涙を流した。そして懐から、一枚の紙を取り出し、やっと絞り出したような聲で言った。
「……エミリー」
け取ると、一組の男が寫っていた。仲睦まじそうに手を握り合う二人は、將來の幸せを微塵も疑ってはいない。
「奧様ね? これをエミリーさんに渡せばいいの?」
寫真には文字で“必ず帰る。を込めて”と書かれていた。男は何度も頷く。ヴェロニカはしっかりとその寫真を握りしめた。
「分かったわ。安心して。必ず伝える。あなたがしていることを。最期まで誇りを失わずに気高く生きたことを。ねえ、大丈夫よ、あなたが眠るまでわたしが側にいるもの。だから……」
男は、まるでそこに神でも見えるかのように祈る仕草をした後、微笑んで目を閉じた。その目が二度と開くことがないと知っていても、ヴェロニカは男のが冷たくなるまで、その手を握っていた。
「わたしも、ここの仕事をするわ」
運び込まれた者たちの手當てが一通り終わったのを見計らって、中年の看護師に聲をかけると、ひどく訝しがられた。
「あんたがかい? お嬢さん」
「ええ」
「糞尿の世話も、沸いたうじを取るのもかい?」
「ええ」
「死を運ぶのもかい?」
「ええ。なんだって」
看護師はヴェロニカを黙って見つめた後、ため息を吐いた。
「あんた、大方どっかの金持ちの娘だろ? しかも、かなりの訳ありだろ」
「分かるの?」
「分かるさ。多くの人を見てきたからね。それに……」
そう言って、看護師はヴェロニカにブローチを差しだした。
「あんなにぼろぼろの服を著て、これを握ってたからね」
ロスに初めて會った日に、彼に渡したものだ。これが手元に戻ったということは、彼が自分の元から永遠に去ろうとしているのだと改めて実した。
見事な寶石でできたブローチを握りしめて、ヴェロニカは再び看護師に向き直る。
「明日から、仕事を教えてくださるかしら」
「明日から教えるだって? とんでもない。今日からだよ、それに見て覚えな。丁寧に世話してやるほど、あたしらは暇じゃないんでね」
結局、その日は看護師……名をスーザンというらしい……に付いて回ったものの、邪魔扱いされてしまった。しかしヴェロニカの心は充実していた。
夜、窮屈な二段ベッドの下でブローチを見ながら、いない彼に尋ねる。
(それで、あなたはどうするつもりなの?)
返事はない。當たり前だ。彼は去った。ヴェロニカは笑う。
(かっこつけても、あの男はわたしから逃げたんだわ)
脳裏に浮かんだ彼の顔を振り払うように頭を橫に振る。もう戦いは終わった。彼との間に起きたことも、現実のないあの日々も、すべて森の中に閉じ込めて忘れてしまわなければ。何もかも変わってしまっても、日常は続いていくのだから。
初めての戀
美男美女。リア充達のハーレム物。 とは程遠い。年齢=彼女いない歴。要するに童貞が主人公の物語。 僕が初めて人を好きになったのは高校二年の春。まさかまさかの一目ぼれだった。 しかし、それは一目ぼれではなくて必然だったんだ。 運命的な出會いのはずなのに、運命はとうの昔から動いており、僕だけがそれを忘卻の彼方に置き去りにしていた。そう、忘れてしまっていたのだ彼女のことも、あの子との約束をも。 そしてあの人のことも---。 ある日を境に見るようになった夢、性別を超えて仲のいい幼馴染、心の闇を隠しムードメーカを演じる親友、初対面なのに目の敵にしてくる男子生徒、そして僕が戀に奧手だったのも、全部意味があった。 それらに気が付いたのはもちろん偶然じゃない、必然的に一目ぼれした彼女と出會ったからである――。 それでも君が好きだから。 必ず君を迎えにいくよ。 戀に不器用な男子高校生と一途に彼を想い続ける女子高生の、青春をかけたドタバタラブコメディー。 【更新頻度】 H31.2月より週一を目処に更新致します。
8 160冷たい部長の甘い素顔【完】
冷徹で堅物な部長 話せばいい人なのに みんな分かってくれない 部長には私だけが知ってる素顔がある ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ 園部爽(そのべ さわ)28歳 OL × 秦野將軍(はたの しょうい)35歳 部長 ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ 2020.8.1 連載開始
8 69貴方を知りたい//BoysLove
これはどこかで小さく咲いている、可憐な花達の物語。 とある生徒と教師は戀という道の上を彷徨う。 「好き」「もっと」「貴方を、知りたい。」
8 104星乙女の天秤~夫に浮気されたので調停を申し立てた人妻が幸せになるお話~
■電子書籍化されました レーベル:アマゾナイトノベルズ 発売日:2021年2月25日(1巻)、4月22日(2巻) (こちらに投稿している部分は「第一章」として1巻に収録されています) 夫に浮気され、結婚記念日を獨りで過ごしていた林原梓と、見た目は極道の変わり者弁護士桐木敬也が、些細なきっかけで出會って、夫とその不倫相手に離婚調停を申し立て、慰謝料請求するお話。 どう見ても極道です。本當にありがとうございました。 不倫・離婚がテーマではありますが、中身は少女漫畫テイストです。 ■表紙は八魂さま(Twitter→@yadamaxxxxx)に描いて頂きました。キラキラ! →2021/02/08 井笠令子さま(Twitter→@zuborapin)がタイトルロゴを作ってくださいました。八魂さまに調整して頂き、表紙に使わせて頂きました~ ■他サイトに続編を掲載しています。下記をご參照ください。 (この作品は、小説家になろうにも掲載しています。また、この作品を第一章とした作品をムーンライトノベルズおよびエブリスタに掲載しています) 初出・小説家になろう
8 632番目の村娘は竜の生贄(嫁)にされる
なんかいつも2番目の人を応援したい小説--- 村で2番目に美しいといい気になっていた私ジュリエットだが、どうしても村1番のポーリーナには敵わなかった…。 そしてある日家に帰ると豪華な食事が? 私…何か竜の生贄にされるそうです。最期の晩餐ってわけかい!!そこは村1番のポーリーナじゃないんかいっ!!お前等いい加減にせいよっ!? 翌日迎えにきた竜に本當は生贄じゃなくて竜が人に化けたイケメン王子のお嫁さんになると聞いて浮かれたのだがーー???
8 86【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔女』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法學園にざまぁして、國を救う。
短編版の連載開始です。序盤の方から短編にない新キャラ等も登場予定です。 魔法王國で唯一魔法が使えない『無能令嬢』リンジー・ハリンソン。ある日、公衆の面前で婚約者アンドルー王子から婚約破棄を言い渡される。學院ではいじめられ、侯爵家である家族には冷遇され、使用人からもいびられる毎日。居場所のない日々だったが、ある日謎の旅人に出會い、『伝説の大魔女』だった前世の記憶がよみがえる。そして、伝説の虛(ゼロ)級魔法使いとして覚醒。とりあえず、學院でいじめてきた生徒たちを圧倒。掌返しをするアンドルーも拒否。家族や使用人にもざまぁします。さて、次はなにをしよう……と悩んでいたら、國王陛下から呼び出し?國を救って欲しい?辺境の魔物討伐?とりあえず、褒美を頂けるなら無雙しちゃいましょう。 チート級魔法での無雙あり。ざまぁあり。
8 65