《ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜》9話 藤也と再會
外に出たミャーは、必死な顔で走っていた。杏奈もミャーの後を小走りでついてはいく。
アパートから細い道をぬけ、駅まで続く市道を歩く。
「ミャー、どこ行くの? このまま行くと商店街の方に行っちゃう」
『うるさいわよ。貓の誰かが苦しみをけてるの。助けなきゃ』
「苦しみって何?」
『わからない。ただの私の勘違いだといいんだけど!』
ミャーはかなり慌てていた。
本當はミャーを抱きしめて杏奈が走った方がいいのかもしれないが、とにかくミャーが走るので追っていた。
ミャーとこうして會話する姿は、側から見ると大分おかしいかもしれないが、田舎の夜は人気がないので、その點は安心だ。田舎でアタオカ扱いされたら噂が広まって々面倒だ。
街頭と月明かりのおかげで、足元が見えないほど暗くは無いが、やっぱり安易に夜出てよかったかはわからない。
ミャーは、ついに地平商店街の中にった。街頭のはあるが、人気は全くない。ケーキ屋も花屋も書店もお茶屋も、もちろん杏奈のカフェもシャッターが降ろされていた。
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賑やかな晝間の様子と比べると、人気のない商店街は別世界のように思えた。
「ちょと、ミャー? 本當にどこ行くつもり?」
商店街を抜けると、薄暗い雑木林がある。商店街は駅にも近いが、し暗い場所にも近い。雑木林は、変な噂もある。一度ったら神隠しにあうとか、異世界に繋がっているとか。おで地平町の住民からは怖がられ、放置されていた。ちょっとした心霊スポットになっているという噂もあった。
『うるさい、杏奈は黙っていて』
ミャーがそうんだ瞬間、そばに人がいるのに気づいた。しゃべる貓を見てかなりびっくりとした表を見ていた。
「貓が喋ってる? は? どういう事?」
ミャーは、明らかに「しまった!」と言う顔を見せていた。その表がとても人間らしくて、それだけでも単なる貓に見えない。どうもミャーの顔の筋は普通の貓と違うようで表かだ。
杏奈は、その人をよく見てみた。見覚えのある顔だった。正直會いたく無い相手でもあった。同じ中學だった柏木藤也かしわぎとうやだった。
藤也はとにかく変わり者の男だった。オカルトやUFO、謀論が大好きで、休み時間は「ムー」という雑誌を読していた。當時はよく知らなかったが有名なオカルト雑誌らしい。
クラスでは浮に浮きまくり、いじめっ子やヤンキー達も怖気付くほどの変わり者だった。
績がよく、意外となんでも論理的に話す。今で言えばネットでよくある「論破」というやつだ。
當時杏奈は、アイドルやv系バンドマンにハマってキャーキャー騒いでいたのだが、藤也に「悪魔崇拝蕓能人なんてどこがいいの?」と水をさされた。それ以來、杏奈と藤也は犬猿の仲となった。藤也の細い目の塩顔も可げがなく、実に嫌味ったらしい。黙っていれば6ヶ月ぐらい寢不足の坂口健太郎に見えなくはないのに。
地平町でカフェを継いでから何度か藤也と顔を合わせたが、會うたびに嫌味を言われ、カフェは藤也は出にしている。
論理的で「論破」大好きな藤也だったが、しゃべる貓に面食らっていた。この嫌味っぽい男がこんな反応なのは、ちょっと面白くなったが、藤也はミャーに話しかけていた。しゃがんで視線も合わせている。杏奈もつられてミャーのそばに座った。
「お前、なんで話せるんだ?」
『知らにゃい!』
「信じられないかもしれないけど、この子話せるのよ。なんか自稱・キリスト教関係の貓らしい」
杏奈はとても冷靜にざっくりとミャーの事を説明した。いい歳した男が貓を取り囲んで會話する様子は、なんてもシュールであるが、なぜか藤也は深く頷く。
「そうか。君は使いなんだね。私は牧師だ。協力出來る事はなんでもしよう」
そういえば藤也はこの町の教會で牧師をやっていた事を思い出した。両親の教會をけ継いだという話は噂で聞いていた。ただ、藤也はネットで謀論も発表しているらしく、謀論ファンも信徒になっているらしい。杏奈のカフェにも謀論好きが客として來ていた。
真澄が牧師と結婚したことについて、微妙な気持ちになったのもこの藤也の事を無意識に思い出したからだろう。そういえば、藤也も金が足りなくて時々コンビニでバイトしているのを見かけた。
杏奈はその事を思い出して、冷めていく気持ちになってきたが、ミャーは牧師と聞いて藤也にをならして懐いてきた。初対面の時の杏奈より懐いているように見えて、ますます杏奈の気持ちは冷めていく。
ミャーの話は、牧師の藤也にとっては自然にけれられる話らしい。ミャーはここに來た事を話したが、あっという間に藤也と意気投合していた。
「そんな藤也がいいなら、私の家から出ていったら?」
杏奈はついそんな事も口走る。杏奈は見た目は子力が高いが、けっこう中は気が強く毒舌だった。子っぽく擬態するのは下手ではないが、こんなこと言う自分の中は男っぽいという自覚はあった。
「おぉ、杏奈は相変わらず気が強いな」
「杏奈って気安く呼ばないでよ」
『私は一応の子だから、オスの藤也と暮らしたくないわ』
「そっかー、だったら杏奈の家にいた方がいいな」
何が面白いのか藤也は聲をあげて大笑いしていた。
「だったらミャー、晝間はうちに來いよ。一緒に伝道や宣教について計畫を練ろうじゃないか」
『そうするわ。晝間は藤也のとこ行く』
ミャーは自分が可いである自覚があるのだろう。すりすりと藤也にり寄っていた。可いと思っていたミャーだが、こうして見るとぶりっ子系子にしか見えず、杏奈は「ケっ!」というような表をしてしまう。実際、藤也も目を下げてミャーの背中をでている。
「ところでミャー、どこか行くつもりじゃなかったの?」
杏奈は自分がなぜここにいるかを思い出し、ミャーに話しかけた。
『忘れてた! 仲間が危なかったんだ!』
ミャーはハッとし、再び走り始めた。
「ちょっと、待ってよ。ミャー、どこに行くのよ?」
杏奈は再びミャーを追いかけたが、藤也もついてきた。
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