《ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜》17話 悪魔崇拝って?
藤也はホワイトボードに文字を書きながら、悪魔崇拝者の歴史について語り始めた。
聖書を片手にホワイトボードの前で解説している藤也は、やけに楽しそうだった。子供みたいとも思ったが、元々この男は邪気みたいなものがない。は腐っていないと杏奈は思う。むしろ見た目は子力で裝飾しているが、が腐っている自覚は杏奈にもあった。
「そもそも悪魔って何かを説明しよう。杏奈、悪魔はどんなイメージか?」
「そうね、あんまり良いイメージはないよ。普通にイメージ悪い」
藤也はホワイトボードに悪魔の絵を描く。しかし何故かの天使という説明もついていた。
『藤也、意外と絵が上手いわね!』
ミャーが褒めるとすっかり藤也は気分をよくしてノリノリで、悪魔の起源を説明しはじめた。
「悪魔は元々天使だったんだよ。しかもかなり上位の天使長・ルシファーだった。聖書に書いてある」
「意外。どうして天使から悪魔になっちゃったのよ」
杏奈はすっかり冷めたポテトをテーブルに橫によけ、コーラを一口だけ口に含む。
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ミャーはテーブルの上にのぼり、藤也の演説をよく見えるように眺めていた。これはは解説というより演説っぽい。やっぱり牧師は普段説教で聲を出して説明する事などは慣れているのだろう。
聲も意外と通るし、聞きやすい。元英語教師としては、ちょっとジェラシーをじてしまうぐらいだ。
「自惚れたんだ。自分こそ神様になれるって反抗した。これは聖書には書いていないので、憶測だが、神様や神様の子供に対する人間・アダムにもジェラシーがかなりあったのかも知れない。アダムっていうか人間は、天使よりも大事な子供だからね。神様の目からすると」
ジェラシーをじていた杏奈は、ドキッとする。
『杏奈、自惚れや嫉妬は罪よ。悪魔から出てきただから気をつけて』
「う、心當たりがありすぎるって」
「まあ、それはともかく。反抗した天使は、神様になれるわけもなくあっさりと負けて地に墮とされたんだ」
「それでどうなっての?」
「悪魔として人間のしたり、罪を告発するものとなった」
藤也はため息をついてホワイトボードに描いた悪魔のイラストをペンでコンコンと叩く。
「そして、創世記3章だ。悪魔は蛇の形をとり、アダムの妻・イブにを仕掛けた」
『本當、この蛇にの仕方は最悪なのよ!』
藤也は創世記3章を朗読した。蛇はイブに「神様のようになれる」と騙し、斷の果実を食べさせるのに功。
「あのー、質問していい? これって何が問題なの? 斷の果実に毒でもっていたの?」
単純に杏奈は疑問だった。
「大問題さ。神様がじていた事に反抗したのが悪いんだよ。その上、アダムとイブは神様の前でも言い訳を繰り返してる」
『この言い訳いうアダムがの腐ったヤツみたいで最悪なのよね』
ミャーは若干興しながらぶ。聖書を読んだことのない杏奈はイマイチ納得はできないが、アダムとイブは神様の言いつけを守らず、謝らず、責任転嫁したのが問題だったと結論づけた。
「それでどうなったの?アダムとイブは」
『楽園追放よ。せっかく何でも手にれられる楽園に住んでいたのに』
「それだけじゃない。こうして人間に罪がってしまったから、死ぬようになった。苦しんで働くようになり、出産の苦しみも加えられた。は男に支配されるようにもなった。自然もも神様が創った完全なものではなくなり、罪がって不完全なものとなった。呪われてしまったんだよ」
そういえばミャーも同じような事を言っていたのを思い出す。人類の租であるアダムとイブがこうして神様に逆らったので、神様とケンカ狀態なのか。でもイエス・キリストのおで神様と仲直りできるというわけか。
杏奈はキリストの看板の「神と和解せよ」の意味が再び腑に落ちる。
「呪われたのはや植だけでない。この世も悪魔の支配下になってしまったんだ」
藤也とミャーは苦い顔をしていた。
「金、名譽なんかも悪魔のオモチャになってしまった」
キュッキュと音をたてながら藤也はホワイトボードの悪魔のイラストに橫に金、名譽と書く。
「そんな……。それが悪魔のものだなんて。神様はそれでいいわけ?」
杏奈は単純に疑問だった。お金も名譽も大事まものでがないの?
『神様はそんなものはあんまり重要だとは思ってないの。それよりは隣人をしたり、弱者に手を貸したり、なんの損得勘定もなく神様だけを信じてしいと思ってる。ご利益宗教じゃないのよ』
「だったらクリスチャンはみんな貧乏で迫害されるって事?」
杏奈はつい口を尖らせる。意味がわからない。なんのリターンもなしに、神様を信じているなんて杏奈の中には全く無い価値観だった。
「ただ、神様を信じればお金なんか生活に必要なものはオマケでついてくる。貧乏になれとは聖書には書いてない。貧乏人に施せとは書いてあるが、まず神様の事を一番にしろって書いてある」
杏奈はよくわからない価値観ではあるが、金とか名譽よりは抜きにして、神様を信じてしいという気持ちはちょっとわかる。
確かに困った時だけ神頼みする日本人は杏奈も違和があった。まあ、無駄な事が嫌いな杏奈はご利益を求めて神社に行く事はない。それよりは自分ができる努力をした方が生産的だと思うタイプだった。それに金や名譽は、絶対的に幸福を運んでくるかと言えば微妙なところだ。金も名譽もある蕓能人が自殺してたりする。
「マタイ4章にあるが、悪魔はイエス様をしるシーンがある」
藤也は聖書をめくり、その部分を朗読する。その悪魔のの仕方が実にいやらしい。斷食中のイエス・キリストに石をパンにかえろとか……。
『ここ悪魔は、自分を拝めば全ての國と栄華を見せて、自分を拝めばこれを全部あげようと言うのよね』
「つまり、悪魔を拝めば金も名譽も栄華もなんでもやるって言ってんだ。それで悪魔崇拝者達が悪魔を拝んでいるっていうわけさ」
聖書を拠になぜ悪魔崇拝があるのかはなんとなく杏奈もわかってきた。
「でもどうやって悪魔崇拝なんてするの? クリスチャンみたいに祈ったりするわけ?」
この質問に藤也もミャーも「一緒にするな」と言わんばかりに顔を顰めた。
「そんな事はしない。悪魔を拝む方法は、聖書で言われている罪を犯す事と同等といっていい」
藤也はホワイトボードの悪魔のイラストを消し、「罪」と大きく書いた。
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