《キチかわいい猟奇的とダンジョンを攻略する日々》よつばのくろーばー

「サユっ! アユっ! 起きて……起きてよぉ!」

いくらゆすっても、サユはかない。

どんなに聲をかけても、アユは起きない。

うそだ。

ちがう。

ぜったい、ぜったい、だいじょうぶ。

でも、どうすれば……。

マユはどうすればいいの……?

「あ……おいしゃさん! おいしゃさんにみてもらえば、きっと……!」

「お醫者さぁんん?? にゃっハハハハぁあぁああっ! そぉんなのぜぇぇんぜん意味ないですってぇえぇえ、死んじゃってるんですからぁああ。お醫者さんなんてえまぁぁあったく役立たず! ですよおぉおおおっ」

「そ、そんな…………」

やだ……。

やだやだやだやだやだ。

なんで?

なんで、こんなことになっちゃったの?

マユ、なにかわるいことしたの?

サユもアユも、とってもいい子だったよ?

なんで…………。

「辛いですかぁ? 苦しいですかあぁあ?? ご傷心のお気持ちわぁぁとおおおっても分かりますぅうぅぅ。おんなじ人をいぃぃっぱい見てきましたからぁぁ僕ぅ」

「……ルカ……さん…………マユ、どうしたら………どうしたら、いいの……?」

この人は……なんでこんなに、楽しそうなんだろう?

パパのお友だちの、組員さんのはずなのに。

マユのことなんか……サユのことなんか……アユのことなんか……どうでもいいのかな……?

それでも今は、この人しか……すぐそばにいるのは、たよれるのは、ルカさんしかいない。

「だぁぁいじょぉおぶ! 確かにお二人は死んじゃいましたケドぉぉお、僕にスバラシイぃい考えがあるんですよぉおお! でもでもぉ、その前にいぃぃ……」

ゆっくりと。

ルカさんは顔を近づけて、ちっちゃな聲でささやいた。

「実はですねぇえ……いるんですよぉおぉ、まだおうちの中にぃぃ……サユちゃんとアユちゃんをイジめた、すごくすごぉぉおおおぉおく悪い奴が……ネ♪」

「……………………え…………?」

「みぃんなで捕まえようとしたんですけどぉおぉ……にゃハぁっ、カーーンタンにやられちゃいましたぁああwww 僕は命からがら逃げ延びましてぇ……マユちゃんが心配で心配で心配だからあぁぁ、こうしてお守りに來たってワケなんですよぉおおぉお」

今……おうちの中に……。

サユとアユを……こんなことにした、人が……?

「もぉぉそろそろ來ちゃうと思うんですよねぇええ、ココにぃ……。そ・れ・でぇええぇえええ……どうしましょっか? マユちゃぁぁあん?」

「ど…………どう……って…………」

なんでだろう……。

へんな、気持ちがする。

むねのおくで、蟲がはい回ってるような……。

すごく気持ちわるい。

「まあぁ、もぉおおっちろん殺すんですけどぉぉぉ…………マユちゃん……やりませんかぁ? ってことですよぉぉおおおおぉおっ」

「マユ…………が……?」

こわいはずなのに、ぜんぜんこわくない。

それよりも……それよりも……よくわからない気持ちで、頭がいっぱいになっちゃってる。

「とぉぉぉおぜんですよおぉおおっ! だぁあってだってぇぇぇマユちゃんの大事な大事な妹を殺したんですよぉぉお?! サクーッ! っとやっちゃいたいと思いませんかあああぁあ??」

ころ……す…………?

そんな……そんなこと、できるわけ、ない。

だって……そんなの、わるいことだから。

やっちゃいけないことだから。

だれかがしんじゃったら、こんなに…………苦しくなるんだから。

できない。

そんなひどいこと……マユには――――――

バンッッ!!

「ここにいやがったか、ルカぁぁああああああっ!」

とつぜん、いきおいよく開けられたドア。

パパよりも年上の、おこった男の人。

耳がいたくなるくらいおっきな聲。

ないちゃうくらい、こわい、はずなのに……。

おかしいな……。

今は…………あんまり、こわくない。

「ほぉぉおらぁ……もおお來ちゃいましたよぉお、マユちゃぁぁぁん。で…………どうしますぅうぅう?」

「マ…………マユは…………マユ、は………………」

わかんない……。

だめなのに。

ちゃんとそう思ってるのに……言葉にならない。

ううん……たぶん今、マユは……まよってる。

この人を……サユに、アユに、こんなことをした人を、許せないから。

「…………にゃっハアア。じますよぉおぉ……憎しみと慈がせめぎ合う、しく心地イイぃい葛藤がぁあぁ……イイぃいですねええぇええええっ!」

「なっ……!? こ……これは…………!!?」

名前も知らないおじさんが……わるい人が、サユとアユを見て、そしてルカさんを見た。

ルカさんは、まるでわるい人がそこにいないみたいにそっぽを向いて、マユを見てわらってる。

「てんめえ……やりやがったな、ルカぁ……!!」

「マユちゃぁぁん……キミはほんっとぉおぉおおにイイぃ子ですねぇえええ。でもぉお……」

わるい人が、ルカさんに向けて手をつきだした。

なにか持ってる。

黒いもの……パパに見せてもらったことがある、あれは……。

けんじゅう。

「今度こそブッ殺――――――ぐッ!?」

わるい人が、おこった聲でさけぶ。

それが、マユに聞こえたって思った時には……。

ルカさんはもう、いつの間にか持ってたナイフでけんじゅうをはじきとばしてて……わるい人の口をぐっとつかんで、おっきなをかるそうに持ち上げてた。

「こぉぉんな悪い人を相手にぃぃ迷う必要なんてないんですよぉぉお、マユちゃぁあぁあん。ってことでぇぇぇ……お手本、お見せしちゃいまショーーぉぉおおぉかあああっ♪」

ルカさんの手といっしょに、きれいなが線になって消える。

そして、その線が當たったわるい人のおなかから、がいっぱいいっぱいバーッて出てくる。

「~~~~~~~ッ!!」

わるい人が、苦しそうに手足をばたばたさせる。

でも、ルカさんはやっぱり楽しそう。

テレビで見たことがある、音楽の、ぼうを持った人……あの人みたいに、気持ちよさそうにナイフをあっちにこっちにふってる。

「ニャハハはははは! にゃははハハハハはハハハハぁあぁあぁああ♡」

ルカさん。

さっきまで、あんなにやさしそうでおだやかだったのに。

ぜんぜんちがう人になったみたいに、こわいのに。

こわい……のに…………。

「はぁあぁぁあぁあぁあぁあぁぁ…………こぉおおおんなカンジですよぉぉ、マユちゃぁん。これっぽっちも難しくないでしょぉおぉおお?」

真っ白だったシャツが、きれいなはだが、わるい人ので真っ赤になって。

ナイフからはぽたぽたとが落ちて。

わるい人はぐったりして、かなくなって。

それでもルカさんはなんにも気にしないで、マユの目を見て。

楽しそうにわらって……。

そんなルカさんが、マユは…………。

マユには…………。

とってもつよくて、いい人に見えた――――。

「さぁぁ、見學ターーイムはしゅーりょーーでぇえぇす。そしてぇぇタイミングのいいことにぃぃぃ…………」

ちらっと、おへやの口に目を向けるルカさんの先には……。

青い顔をした知らない人が、目をまんまるくして立ってた。

「ヒ……ヒ…………ヒロキさんっ!!」

「なんと! 悪い人のお仲間がやってきたじゃぁあぁありませんかああ! にゃははははぁあぁああっ!」

このお兄さんも、わるい人……?

じゃあ、この人もサユとアユを…………。

「くっ……悪く言う人もいますけど、俺は尊敬してたのに……どうしてこんなことをっ! ル――――――がっは!!?」

二人目のわるい人がなにかを言おうとしたけど……ルカさんはさいごまで聞かずに、その人のノドを思いっきりパンチした。

わるい人が、あお向けにたおれた。

「シーーーーッ! お靜かに願いますねぇえぇ、悪い悪ーい殺人鬼さぁん☆ それじゃぁぁあマユちゃんの番ですよぉぉおぉ。あ、どうぞコレ、使ってくださぁあああぁぁいい」

そう言ってルカさんは、マユのすぐ目の前になにかをぽいっと投げた。

大好きなママが使ってた、おっきなほうちょう。

かわった形で、サユはいっつもカッコイイって言ってた。

これでいつもうどんを作ってたママのすがたが、頭にうかんだ。

「いやぁあぁぁ、臺所から拝借してきちゃいましたぁぁぁ。馴染みのあるの方が抵抗がないかと思いましてねええぇえ。さぁさあぁあ遠慮なくどうぞぉおお、マユちゃぁあぁぁあん♪」

「あ………………あ……」

重い、重いほうちょうを、両手でにぎる。

あぶないからって、ママは一回もさわらせてくれなかった、ほうちょうを。

これで……この人を……きる、の?

マユが?

いたい……ぜったいに、いたいよ。

いたいのは…………だれだって、やだよ。

…………。

…………………………。

「うぅぅうぅん……まぁぁぁぁだためらってるんですかぁぁ、マユちゃぁあぁん」

「………………」

息が、苦しい。

手が、ふるえる。

が…………かない。

「にゃっはぁ……考えすぎなんですよぉおぉマユちゃんわぁああ。……そぉぉいえばあぁあ、サユちゃんが最後まで大事にだぁあぁいじに握り締めてたぁ、四つ葉のクローバーの花言葉ってぇぇ……知ってますぅうぅぅ?」

「…………?」

四つ葉のクローバーの……花言葉……?

々あるんですけどぉおぉ……僕のお気にりがぁぁ……『復讐』! なんですよぉおお。とぉぉおってもステキでしょぉおお?」

「……ふく……しゅ、う…………?」

「つまりぃ……『仕返し』ってことですよぉおぉ。今のマユちゃんにぃぃちょぉおおどピッタリじゃないですかああぁあぁああっ♪」

しかえし……?

ああ……そう、だよね……。

これは仕返しなんだ。

サユが、アユが、なんにもわるいことしてないのに、ひどいことされたから。

とってもいたい思いをしたのに、この人たちはなんともないから。

「もっと素直ぉぉおぉおおに! もぉおっと自由ぅぅぅううぅにっ! さあぁあ! さあさあさあさあさあぁあぁぁあっ!」

サユとアユをきずつけたから。

わるい人をこらしめる。

ただそれだけなんだ――――。

「がっ……はっ…………」

苦しかったのが、なんだかとっても楽になった。

手のふるえが止まった。

わるい人のところまで、ちゃんと歩けた。

「や…………や、やめ……………!」

目をつぶって。

のどをおさえてうずくまる、わるい人の頭に。

ほうちょうを。

大好きなママの、カッコイイほうちょうを――――――

「あ……あ…………たす――ゲッッ!!」

ズカッッッ!!

――――手に伝わる、ぞわぞわするいやなかんじと。

にぶい、気持ちわるい音といっしょに。

あったかいが、顔にびしゃっとかかって。

わるい人の聲が。

息が。

はいずる音が。

ぴたっと聞こえなくなった…………。

「にゃっははぁあぁあぁあああ……イイですねぇええ! さいっこぉおおぉおぉおにイイぃぃいショーですよぉぉおぉお、マユちゃぁあぁああん♡」

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