《キチかわいい猟奇的とダンジョンを攻略する日々》ゆめのおわり

サユもアユも(サユもアユも、)生きてる。(もういない。)

マユの中で、(マユの中は、)ちゃんと(やっぱり)心が生きてる。(空っぽのまま。)

ふれることも、(ふれることも、)わらい合うことも(わらい合うことも)できなくなっちゃった(できなくなっちゃって)けど……でも、(……やっぱり、)おしゃべりは(おしゃべりも)できる。(できない。)

『ふわぁ~~、(………………)ずーっとびょーい(……………………)んにいるなん(………………)てタイクツー! (……………………)早くおうちに(………………)かえりたいねー、(……………………)マユねぇ!(………………)」

「あはは……(サユの聲が)そうだね、サユ……(聞きたいな…………)」

『お父さんとお(………………)母さん、遅い(………………)ね……。どう(………………)したのかな?(………………)』

「うん……心(アユの聲が)配だよね、アユ……(聞きたいな…………)」

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もう、一人ぼ(もう、二度と)っちにな(會えなく)ることはないんだ。(なっちゃったんだ。)

これからは、(これからは、)ずっとずっとずーっと(ずっとずっとずーっと)いっしょなんだ。(一人ぼっちなんだ。)

だから、ぜんぜ(さびしいよ……)んさびしくなん(かなしいよ……)か……ない…(やだ……やだ)………。(よぉ……。)

…………。(…………。)

マユは……。(マユは……。)

マユは……(マユは……)まちがって……(どうすれば……)ない……(よかった)もん…………。(のかなぁ……。)

「――こおぉぉんばぁんわああぁああ、夜分遅くに申し訳ございませぇぇえぇん。にゃはぁぁぁ……またお會いできまして大変嬉しぃいいいぃぃですぅう、マユちゃあぁぁあん♪」

「……ル…………カ……さん…………?」

こんな時間に、(やさしくて、うそつき)どうしたんだろう?(の、お兄さん……。)

おみまい、(もう、どうでもいいや)かな。(……。)

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一人ぼっちだと、(考えれば考えるほど)やなことばっかり(……頭の中がぐるぐる)考えちゃうから、(して、心がつめたくな)うれしいな……。(っちゃうから……。)

「おやおやぁあぁぁ、なあぁああんて失意に満ちた顔をぉぉしてるんですかぁぁあああ。もおおおっと僕みたいにぃ楽しく! 自由に! 人生を謳歌しないとおぉぉもったいなぁぁいじゃぁないですかあぁあああっ♪」

「……あはは……本當に(……そんなこと……)……そうできたら、い(もう、できるわけ)いんだけど…………(……ない…………)」

がっくりとうつむいた(もう、マユにはかま)ままのマユに、ルカさ(わないで……もう、)んは明るくしゃべり続(なんにもしたくない)ける。(……。)

「そおぉぉおんなマユちゃんにぃぃぃ……誕生日プレゼント! ご用意させていただきましたああぁあ、ちょこーっと遅くなりましたけどぉおおおぉぉ」

「……プレ……(……そんなの……)ゼント…………?(そんなの…………)」

顔も見えない真っ暗なおへやで。

ルカさんは、後ろにかくしてた手を出して、なにかを……。

なにかを……ベッドでを起こしてるマユの、ひざの上に、そっとおいた。

ふわっとかおる、あまいにおい。

さらさらで、きれいで、赤い、長いかみ。

見まちがえるわけない。

大好きな……大好きな、ママ。

…………の………………あたま――――――――。

「………………え……………………………?」

「すみませんねぇぇえぇ、本當は全お持ちしたかったんですけどおぉぉ……ちょぉーっと疲れちゃってぇええ余裕がありませんでしたああぁあぁぁぁ♪」

なん……で…………?(やだやだやだやだっ!)

どうして……ママが…(もうやめて……!)…こんな…………?(やめて! やめてっ!)

「…………最後にぃぃ……もぉぉお一度ぉ僕に見せてくださぁああいい。これ……覚えてますかあぁぁああ??」

ルカさんが、マユの手(なんでマユだけ!? )をつつみんこんで、ぎ(なんでマユだけ!? )ゅっとにぎらせる。(なんでなんでっ!?)

なつかしいような、思(パパ! 助けてパパ!)い出したくないような(どうして……どうして)を、ぎゅっと。(そばにいないのっ!?)

ほうちょうと……四つ(なんにもわかんない!)葉のクローバー。( 考えたくないっ!)

「実はだぁぁいすきなママを殺したのわぁあぁ……僕なんですぅうう。ってことでえぇぇ……どうすればいいか……解りますよねえぇえぇええ??」

四つ葉のクローバー(ふくしゅう)……。

「あ…………ああ…………ああ……あ………………」

マユはなんにも(サユ……アユ……プレ)わるくないっ!(ゼント、ありがとう。)

サユはなんにも(でもね……おかし)わるくないっ!(いよね……。)

アユはなんにも(せっかくさがして)わるくないっ!(くれたのに……。)

ママはなんにも(マユたち、いい子に)わるくないっ!(してたのに……。)

パパはなんにも(いいことなんて、なん)わるくないっ!(にもなかったよ……。)

マユたちは、だれもわ(マユたちは、だれもわ)るくなかったっ!(るくなかったっ!)

なのに、なんでこんな(なのに、なんでこんな)ことになるのっ!?(ことになるのっ!?)

わるい人なんて、みん(わるい人なんて、みん)なだいっきらいっ!!(なだいっきらいっ!!)

だから……!(だから……!)

だから…………だ(だから…………だ)から…………!!(から…………!!)

「さぁあぁさああぁあ! 遠慮せず! ためらわず! 心のままに! イイぃぃいいぃいぃいいい表ですよおぉおおぉマユちゃぁあああん! にゃっハハはハハハハああぁああああっ♡」

みんなみんな、死んじゃえばいいんだっっ!!

「ぅああああぁああぁあぁあぁあああああっっ!!!」

――――――ああ…………。

素晴らしい……最っっ高のエンディングですよ……マユちゃん、剛健さん。

あなた達に出會えて、僕は幸せでした。

ねえ、マユちゃん。

四つ葉のクローバーにはね……他にも花言葉があるんですよ。

あなたには何のご利益もありませんでしたけど……僕には、どうでしょうか?

葉いますかね……?

葉ったら……嬉しいです……。

たまにでいいんですよ。

僕が生きた意味を。

価値を。

理由を。

証明してください。

どうか………………。

どうか――――――――『Think of (僕を想ってください)me』。

○○県警は△△日、暴力団広瀬組組長の自宅に押しり、組員の男三名および組長である広瀬興將氏(60)を日本刀で切りつけるなどして殺害したとして、住居侵、殺人の疑いで暴力団凩組の組長、凩剛健容疑者(39)を逮捕した。

容疑者は妻と共に犯行に及んでおり、被害者と激しく爭った末、全の切り傷、頭蓋骨と下顎骨の骨折、臓損傷などにより全治三か月の重傷を負った。

容疑者の妻は刃を刺されたことにより失死しており、死後に頭部を切斷されていた。

また、犯行當日の深夜、容疑者の長院中の病室にて包丁を振り回して暴れているところを、通報をけた警によって取り押さえられた。

その際、長を落ち著かせようと試みた醫師二名と警備員一名、警察二名が切りつけられ、手や顔に軽い切り傷を負った。

病室には容疑者の妻の頭部の他、二十代の男と見られる元不明のがバラバラになった狀態で発見された。

現場の狀況から男の殺害は長によるものと見られているが、事件の経緯は現在も捜査中である。

警察は一連の事件の関連を調べており、剛健容疑者と長に詳しく事を聞く方針だ。

しかし、事件から一ヶ月が経過した現在も長は錯狀態が続いており、全容の解明には時間がかかる見通しである――――。

□□日未明、世界各地にて直徑約三メートルの謎のが突如として出現したとの報告が相次いだ。

は判明しているだけでも日本で十二箇所あり、およそ百三十八名が中にったとされるが、現在まで誰も出てきていないことから政府は自衛隊を派遣して各地の周辺を急封鎖した上、調査を行っている。

今後の対応について、首相は會見にて調査の結果と諸外國のきを見て慎重に対処したいと述べた。

また、から正不明の化が出てきたとの目撃証言が複數上がっているが、真偽は不明――――。

「――――きいてきいて、マユねぇ! アユ! ふっふっふー、あたしねー……しょーらい、プロのマジシャンになるっ!」

「ほんと!? サユならぜったいなれるよー。だって、こーんなにすごいんだもんっ!」

「どうせ、すぐあきちゃうんじゃないの? マユおねえちゃんが信じちゃうから、あんまりてきとうなこと言わないでよ、まったく……」

「むかーっ! 本気にきまってるじゃーん、ぜったいぜったいなるんだからっ! そーゆーアユは大人になったらなにになりたいってゆーの!?」

「私は別に……おねえちゃんたちがだらしないから、うちのかせいふとか……あるいは、じむ所のじむ員かな……」

「よかったぁ、それならずーっといっしょにいられるね。マユうれしいなあ」

「つっまんなー! ゆめがないなーアユは~。でもまあ、たすかるけどねー。じゃあさじゃあさー、マユねぇは? なになに?」

「マユはねぇー……おいしゃさんになりたいなぁ」

「おおー! いいねいいねー、カッコイイ!」

「それは……自分の病気を治したいから、ってこと? マユおねえちゃん」

「ううん、マユはこのままでもいいの。でもね……んっとねぇ、いたいのとか苦しいのってすっごくやな気持ちになるんだなぁって思って……もし、サユにアユにパパにママがそんなことになったら、マユがなんとかできたらいいなぁって……そう思って……」

「マユねぇ……えらいっ! いやー、あたしはカンドーしたよ! もーれつにカンドーしたっ!」

「うん、優しいマユおねえちゃんに向いてると思うよ。すごく頭がよくないといけないけど、きっと大丈夫」

「あはは、ありがとサユ、アユ。がんばるねっ」

あぁ……。

何度も何度も思い出しちまう。

する娘達が戯れる、何でもない日常だった日々を……。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も――――。

栞那……俺はこれから一どうすりゃいいんだ……。

教えてくれ。

そばにいてくれ。

生き返って……くれ…………。

ちくしょう…………。

「――さて……先日、政府からの公式文書にてご通知いたしましたが、改めて口頭にてご説明させていただきます」

世界一めでたいマユの誕生日だったはずの、あの日。

あの忌まわしき事件があった日から、半年。

俺とマユは、突然わんさか現れたとかいう訳の分からねえの前に立たされている。

奇しくも、場所は収容されている薄暗い刑務所の工場。

出現した直後に急遽こしらえられた格子鉄線で囲まれたの周りには、ここ數ヶ月くせぇ飯を共にしてきた囚人達が數十人ほども集められている。

「皆様にはの調査および先遣した自衛隊の救助にご協力いただきます。無論、拒否権はありません、これは正式に閣議決定されました決定事項です」

ああ……そういやぁ、そんな話だったな……。

力が足りねえばっかりに妻と子供を亡くして傷心狀態の哀れな俺に対して、隨分と酷なことをしやがるぜ、國はよぉ。

そもそも、あのクソ野郎のせいで三日も昏睡した挙句、二ヶ月の院、そして退院と同時にすぐさま逮捕されて刑務所にぶち込まれた俺のにもなってみやがれってんだ。

「一定の果を上げて帰還した者には恩赦だけでなく報酬も確約されております。ただし……すでにご存知とは思いますが、このって戻ってきた者は一人もいません。心して責務を全うして下さい」

ふんっ……恩赦だぁ? 報酬だぁ? 白々しいぜ、どうせ俺らのことなんざ死んでもいい使い捨ての駒としか思ってねえくせによ。

……だが、自暴自棄になるわけにゃいかねえ。

俺には、まだ守りたい……守らなきゃいけねえ家族が殘されてるんだ――。

「パぁぁあぁパぁぁ、すっごおおぉぉおいねぇええぇ、このぁぁあ。おっきぃぃぃいねえぇぇ、早くってみたいなぁぁああ。楽しそうだねぇえええぇおもしろそぉぉだねええぇええっ、にゃハハははぁあああぁああ♪」

「……ああ……そうだな、マユ…………」

思い出したくない誰かの面影が脳裏をよぎる、かけがえのない娘の笑顔……そして口調。

俺が目を覚ました時、マユはもう、俺の知っているマユじゃなくなっていた。

優しくて、穏やかで、怖がりで、さみしがり屋で、自分よりも他人のことを一番に考える思いやりのあるマユは……どこにもいなくなった。

醫者が言うには、神的負荷に耐え切れなくなった心が引き起こした退行……らしい。

その影響による記憶障害で、マユは今…………記憶がない。

元気で明るいサユのことも。

世話焼きでしっかり者のアユのことも。

自分を生み、深いを注いで育ててくれた栞那のことも。

何もかも…………忘れている。

覚えているのは、俺のことだけだ。

いや……あと一人。

頭では覚えてねえようだが、あの野郎……。

あのクソ野郎が……心に棲みついちまってる。

「う゛ぅぅうぅぅぅ……パパぁあぁぁ、コレおもたぁああぁいぃぃい」

として支給された貧相な剣を両手に持ったマユが、手をぷるぷるさせて涙目で訴える。

俺はマユの小さな頭に手を乗せて、貓なで聲で囁く。

「よしよし、大丈夫だぞマユ、ちょっと待ってろよ……おいゴラァっ! うちのかよわい娘にこんなもん持てるわけねえだろがボケナスがあっ! 責任者出てこいやぁ!!」

九歳の小さなの子とのタッグでただでさえ目立つ厳つい強面中年の怒鳴り聲に、周囲がざわつく。

さっきまで偉そうに説明してやがったインテリ風のメガネの男がゆっくりと近づいてきた。

くそっ……こんなひょろっちぃ野郎を見ると、今は無に毆りたくなる……。

「申し訳ございません、こちらの配慮が足りませんでした。すぐに代わりをお持ちいたしますので々お待ちください」

「大何だこりゃあ! こんな剣一本で行ってこいとかふざけんてんのかっ! ゲームじゃねんだぞ、あ゛あ゛ん!? 銃でもバズーカでもよこせやクソメガネっ!!」

「いえ、重火は當然ながら、これより危険の高い刃は許可できません。規則ですので」

どれだけんでも平然とした顔で淡々と事務的に対応する男に、俺の怒りメーターは振り切る寸前だった。

そんな俺の囚人服を指でつまんで、マユはにへらと笑う。

「パパぁぁあぁぁぁ、マユねマユねぇええぇぇぇ、ほうちょうがイイぃなああぁあぁぁあ」

「……包丁? いやいやいや。いいかマユ、魚を捌くわけじゃないんだぞ、あんなもんじゃ……」

「やぁぁあぁあだああぁぁ! マユほうちょうがいいもぉぉぉおん、ほかのじゃやだやだやあぁぁあだあああぁあっ!」

「……どうされますか? それならばご用意できますが?」

「ぐっ……」

結局、希通りの武――というか調理――を手にしたマユは、ぶんぶん振り回しながら年齢以上にく無邪気にはしゃぎだした。

……完全武裝した自衛隊が一人も帰ってきてねえんだ、あんな包丁一本じゃ俺だって詰む。

やっぱり、マユは俺が守ってやらねえと……!

栞那……サユ……アユ……。

俺はまだ、お前らを失った傷が消えねえ。

いや……この傷は、これから先も一生殘り続けるだろう。

だが、俺にはまだマユがいる。

マユにはもう、俺しかいねえ。

だから……しばかり、天國で待っててくれ。

………………そう強く心に誓った俺の決意は、噓じゃねえ。

間違いなく俺の本心だ。

けど………………。

「にゃハハハはは! 楽しイイぃぃいいねぇえぇぇわくわくするねえぇえええぇぇぇパぁパぁぁあぁああっ♪ にゃっハハはははぁああぁあああ♡」

「……………………」

あの日、俺が會合に行かなければ――。

あの日、俺がもっと早く戻って來れれば――。

あの日、俺が栞那を守れていれば――。

あの日、俺があのクソ野郎をぶっ殺せていれば――。

マユ……お前は、こんなことにはならなかったんだろうな……。

俺のせいだ……。

全部、全部、俺のせいだ…………。

そう思うと……俺はどうしても、お前の目を真っ直ぐ見つめられねえんだ。

昔から変わらない、お前の優しい瞳を。

すっかり変わっちまった、あのクソ野郎みたいな笑顔を。

ずっとそばにいないと……守らないと……そう思うのに。

時々…………怖くなっちまうんだ。

泣きたくなっちまうんだ。

どう接すればいいのか分からなくなっちまうんだ。

心が押し潰されそうになっちまうんだ。

一緒にいるのが……辛くなっちまうんだ………………。

「それでは時間です。順番にってください」

「じゃぁぁああぁ行こぉおおおおっ♪ パーーパぁああぁぁっ♡」

「…………おう……………………」

俺の力ない返事を聞く間もなく――。

他の誰もが込みする中、マユは喜々として真っ先にへと飛び込んだ。

離さないように固く握り締めてなきゃならねえ手は、マユに屆くことなく虛しく宙を掻く。

ほんの一瞬の迷いを振り払い。

俺はマユに続いて、暗くて深いを投げた――――――。

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