《キチかわいい猟奇的とダンジョンを攻略する日々》マジック&ウィザーズ
NAME:Sayu Kogarashi
LV:72
STR:807
AGI:819
INT:1024
MP:1502/1576
SKILL:Frame dog ran,Thunder hornet,Thorn skewer,Water splash,Icicle pillar,Air cannon,Shining bird,Stone lullaby,Winter wind,Earth wall,Paralys breeze,Sleep mist,Drain clover,Shadow puppet,Land mine,Intelligence up,Magic power recovery rate up,Magic power consumption reduction,Magic sealed invalid,Abnormal state resistance,Reduce fatigue
(『フレイムドッグラン』『サンダーホーネット』『ソーンスキュア』『ウォータースプラッシュ』『アイシクルピラー』『エアーキャノン』『シャイニングバード』『ストーンララバイ』『ウィンターウインド』『アースウォール』『パラライズブリーズ』『スリープミスト』『ドレインクローバー』『シャドウパペット』『ランドマイン』『INT上昇』『MP回復速度上昇』『消費MP軽減』『魔法封印無効』『狀態異常抵抗』『疲労軽減』)
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「もー、しょーがないなぁ……死んじゃっても化けて出ないでよねー! ケルちゃん、ベルちゃん、やっちゃってー! フレイムドッグラーーーーン!」
部屋の広さは、およそ百平方メートル。
その中心、巨大なファフニールの死の上に立つサユは、包囲する四十人近い鋭達に怯むことなく高らかとんだ。
すると、天地にとってはお馴染みとなっている大型犬二匹が炎の中から生まれ出て、左右に分かれて主の敵を目掛けて水面を走り出した。
「シャープエッジ!」
「ウォーターフォール!」
迫り來る未知の魔法に対し、実戦経験が富な鋭達の迎撃は非常に迅速かつ的確だった。
一匹は、ロングソードによる魔法をも切り裂くスキルで真っ二つ。
もう一匹は、滝のように激しい水圧が降り注ぐ水魔法で押し潰した。
「へへっ……何だ、大したことねえじゃ――――」
しかし、両斷されたはすぐにくっついて元の姿へと戻り、水魔法は炎の勢いを弱めることすらできず難なく突き破られて、二匹の犬は近くの敵の元に噛み付いた。
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「「ぐあああぁあぁああああっ!!」」
たちまち、ファフニールが飛翔できるほどの高さを誇る部屋の天井まで達する火柱が立ち上り、それに飲み込まれた二人は苦しみに悶え、のたうち回った。
中央付近と比べると淺いものの水深一メートル以上あることが幸いし、に燃え盛った火はすぐに鎮火することができた……が、全に及ぶ火傷の損傷は決して軽くない。
すぐに回復魔法をかけるべく、數人が駆け寄ろうとする。
――が、炎の犬が火柱から飛び出し、新たな獲を定めて猛烈なスピードで突進するのを見て、慌てて後ずさる。
「どうなってんだ、この魔法!? 生きてるみてえじゃねえか!?」
「二人やられたわ! 早く助けないとっ!」
「つっても、こいつをどうにかしないと……!」
報収集班の調査によると、現在判明している魔法、スキルの種類は約二千。
各層のベースには、その全ての詳細を記した書が保管されており、定期的に容の更新も行われている。
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だが……まるで本の犬のように自由に走り回り、攻撃した後も効果が持続する炎魔法など、この場にいる誰も聞いたことすらなかった。
「くっ……どうすれば…………」
狼狽する集団から離れた最後尾。
二層において東雲に次ぐレベルと指揮権を持つ、サブリーダーを務める壯年の男は迷っていた。
このまま処刑を続行するべきか否かを。
仲間の安全と確実を考慮すると、ここは一時撤退するのが最善だ。
寢込みを襲う計畫は失敗に終わった上、事前の報にはない強力な魔法まで使ってくるなど、當初の目論見から大きく逸している。
だが……脳裏をよぎる懸念が、彼の決斷を曇らせていた。
「……もし、ここで仕留め損なってしまったら……いくら行が不規則なKと言えど、間違いなく他層に逃げてしまう…………」
殺人を犯した大罪人となれば、流石に他層でも本腰をれて処刑に向けてき出すことは想像に難くない。
だが、基本的にどの層も人手は――特に腕の立つ人材は不足している。
となれば、今回ほど大規模な処刑部隊が編されることはまずないだろう。
第一、今回のようにKが偶然どこか特定の場所に留まることなど滅多にない。
通常はダンジョンのそこかしこを気まぐれに移し続けるKを大部隊で追跡して、あまつさえ包囲するなど困難を極める。
すなわち、今こそ唯一にして千載一遇の好機。
そのように彼は考えていた。
「……お前ら、落ち著け! 相手はたった一人、一撃でも當てれば終わりだ! 三班、四班は炎の犬を食い止めろ! 七班は炎耐バフと回復でフォローに専念! 他は全員、Kに一斉攻撃だっ!!」
撤退の選択を捨てたサブリーダーの決意に応えるように、崩壊しかけていた戦線は即座に立て直された。
炎の犬二匹を擔當する班を決めて、陣形を崩させないように引き付ける。
そして間もなく、攻撃魔法を使える殘り十數名が最大級の魔法によって集中砲火する制が整った。
「よし……今だ、殺れーーーーーっ!!」
合図と共に、四方八方から同時に放たれる多種多様の魔法。
回避は不可能。
殺った――――――――と、誰もが確信した。
「ひゃー、すっごい派手だね~。んっと、それじゃー……ウィンターウインド!」
生の人間が直撃したら五がバラバラ……どころか木っ端微塵になるほどの攻撃が迫っているにも関わらず、サユはどこまでも気に、歌うように楽しげに魔法を口ずさむ。
すると、サユを中心に渦狀の冷たく乾いた突風が吹き荒れ、一斉に放った魔法は軌道を変えて錯し、目標に屆くことなく炸裂した。
魔法同士がぶつかり合い、轟音を響かせて辺りに白い煙が立ち込める。
その場の全員が驚愕して立ち盡くす中、傷一つないサユが元気よくぴょこぴょこと飛び跳ねて笑う。
「ざーんねーんでーした~♪ そろそろ諦めて帰る気になったー?」
「……っく……近接戦闘に切り替える! 包囲を狹めて一気に叩け! 魔法が使える者は迎撃と援護に集中しろっ!」
斧や槍を手にした接近戦タイプの十余名が、暴風に耐えながらサユとの距離を徐々にめる。
本來ならば、極力離れて遠距離攻撃を徹底する戦が最も危険はないのだが、それが防がれてしまった以上、直接攻撃に頼る他ない。
サユのMPが切れるまで魔法攻撃を続ける消耗戦という手段もあったが、數の有利、そしてステータス上昇の魔法を重ねがけしたことで、下手に長期戦にもつれ込むよりも安全かつ確実であるとサブリーダーは判斷した。
「むぅー、しつっこいなぁ~……えいっ! アースウォーーール!」
あくまでも戦闘を続行する集団に辟易しながら、サユは魔法で分厚く頑丈な土の壁を次々と生して敵の進軍を阻む。
「かーらーの~~~~……アイシクルピラーーッ!」
さらに、周囲の水面から巨大な氷柱が十メートル以上の高さまで突き出して數人の武を高々と吹き飛ばした。
「くっそが……! どんだけ魔法が使えるんだ、こいつ……!」
「これじゃあ、ちっとも手が出せないじゃない……どうすればいいのよ……」
魔法は軽々と逸らされる。
攻撃することはおろか、近づくことすらできない。
犬の対処に當たった班もきづらい水中で攻撃が効かない相手に打つ手がなく、早くも疲弊している。
突きつけられる勝ち目がないという無な現実に、集団の士気はみるみるに低下していく。
さしものサブリーダーも有効な打開策を見出すことができず、焦る気持ちを募らせていた。
――その時だった。
「……お……おい…………」
二層の鋭達全員が――。
「…………マジ……かよ………………」
処刑を斷念しかけていた、まさにその時――。
「…………ファフニールが…………いてる……っ!?」
無殘な姿で橫たわる竜が、ほんのわずかに……。
いや……。
それは見紛うことのない、たしかなきになり――――。
「グゴォオオオオオォオオオッ!!」
全に包丁が突き刺さったままのファフニールは、いつの間にか切り落とされた頭部が再生していた。
鋭い牙を覗かせる巨大な顎をゆっくりと開き、重機のような低く重々しい唸り聲を上げて真っ赤な泉に深々とした波紋を刻んだ。
「うっそーーーーーっ!!? って……うわわわわーー!」
竜の背に乗っていたサユが、激しいきで振り落とされる。
驚きのあまり上手く著水ができずに背中から泉へと落下し、激しい水柱を立てて姿を消すサユ。
「うわああああああっ! ファフニールが生き返ったぞおおおおっ!!」
「に、逃げろ逃げろおおおおおおおおっ!!」
サユの集中が途切れて炎の犬がふっと消え去り、つい先ほどまで一致団結していた鋭達が口々に悲鳴を上げて我先にと部屋の口へ殺到する。
ただ一人、サブリーダーだけが冷靜に皆を落ち著かせようと聲を張り上げるものの、恐慌狀態に陥った集団のび聲とバシャバシャと必死に水を掻き分ける音に虛しく飲み込まれる。
標的であるサユを顧みる者などはおらず、もはや処刑どころの事態ではなくなっていた。
いくらダンジョン生活が長くとも、これほど巨大な魔を見た者などほとんどいない。
その上、サユのようない子供と違って、ファンタジーではお馴染みの強敵であるドラゴン。
加えて、レベル20近い猛者達を何人も葬ったという恐怖の逸話まで殘されているのだから、無理からぬ反応と言えよう。
ファフニールは頭以外まだ再生していないようだが、長い首を曲げて鈍い金に輝く瞳で集団を睨みつけると、數人を一度に丸飲みできそうな大きな口から吐息と共にかすかな火炎を吐き出していた。
「ぷっはーーっ! けほっけほっ! 鼻に水っちゃったよ、もーー!」
口から向かって右の壁際。
サユが真っ赤な水面を突き破り、陸に上がってむせ返った。
「ふぅー、ドラゴンちゃんには悪いけど……暴れられたら困っちゃうから、大人しくしててもらうよー。うーんと……ソーンスキュア! あーーんどー……アイシクルピラーーッ!」
サユが魔法を唱えると、水面から大木のようなイバラが無數にび、ファフニールの全をぐるぐる巻きにして――――さらには、先刻の倍以上はある氷柱が花のように咲きれ、ファフニールを容易く貫いた。
「す……っげえ…………」
突如、訪れた靜寂。
誰かがぽつりと嘆の聲をらした。
自分達とはスケールの違う強大な魔法に……。
ゴブリンと大差なくファフニールを蹴散らす様に……。
いつしか集団は喚くことも逃げうことも忘れて、ただただしい絵畫に魅られるように、再びぴくりともしなくなった巨大な竜と小さなを呆然と互に見つめていた。
――――ただ一人を除いて……。
「ふぃー……まあ、こんなもんかなー。これで多分だいじょー……――――」
「今だっ! ウインドカッターーッ!!」
誰もが放心狀態で棒立ちする中――。
たった一人、処刑を諦めずに虎視眈々と機會を伺っていた男。
サブリーダーが放った風の刃が、一直線に吸い込まれ――。
ファフニールに気を取られていたサユの両足を、無慈悲に切り飛ばした。
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