《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》アロナの願い

ドンッ!

突然、アロナは背後から思いきり突き飛ばされる。力の抜けたは、為すもなく床へと倒れ込んだ。

「慘めな姿ね、アロナ・フルバート。ずっと私を馬鹿にして、さぞ気分がよかったでしょう」

「……」

を見下ろし、三日月のように目を細めるククルを見ても、アロナは何もじなかった。ただルーファスに裏切られたことだけが、彼の頭にこびりついている。

い頃から今までずっと心の中で丁寧に綴ってきた彼への文は、目の前でびりびりに破かれてしまった。

アロナの心の拠り所は、ルーファスただ一人だけ。彼が傍にいない世界など、アロナにはなんの価値もない。このまま生きられたとしても、それは無意味だ。

「ちょうどいいわ。今ここで済ませてしまいましょうか」

優雅な仕草で口元を覆いながら、エルエベが言う。

「ほら、早くなさい!あなたがやらなければ、困るのはあなたの家族なんだから!」

「…っ」

「エルエベ、ククル。ここでというのは流石に…」

「あら、どうしたのルーファス。まさかこの期に及んで、怖気付いてしまったのかしら」

ククルの表が、みるみるうちに歪んでいく。その大きな瞳からは、ぽろぽろと涙が溢れていた。

「酷いわルーファス…私のことが一番大切だって言ってくれたのは、噓だったの?」

「ククル…」

「このままでは、いつか私はアロナに殺されてしまうわ!嫉妬に狂った醜いに!」

さめざめと泣くククルの肩に、エルエベがそっと手を掛ける。彼は聖母のごとき眼差しで、優しくルーファスを見つめた。

「ルーファス、私達だって心が痛いわ。だけど仕方ないの。言ったでしょう?これはアロナの救済でもあるのだからと」

アロナは虛な目でルーファスを見つめる。再びふいと逸らされた視線が、全てを語っていた。

「はぁ…っ、はぁ……っ」

メイドの荒い呼吸が、段々とアロナに近付いてくる。それがすぐ耳元で聞こえたと同時に、短刀が彼の心臓を貫いた。

「…カハ……ッ」

聲を出すことができない。まるで火で炙られたかのように、刺されたところが熱くて堪らない。大きく咳き込んだ瞬間に、びちゃびちゃと音を立てて床に吐した。

(ルーファス…)

していた、心から。そうでなければ、二度殺されてもなお彼の傍にいたいなどとは思わない。

アロナは慘めに頬を床にりつける。その冷たさが、やけに心地良くじた。

「さようなら、アロナ」

それは一、誰の臺詞だったのだろうか。アロナの意識は混濁し、もうほとんど何も考えられなくなっていた。焼け千切れるような痛みも、段々とじなくなっていく。

ふわふわとする頭の中でたった一つ、アロナは神に祈った。

三度目はどうか、このまま死ぬことができますように、と。

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