《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》鼻持ちならない側近達

そよそよと吹く風が心地良い。樹齢の長いどっしりとした木の幹に腰掛けると、青々と生い茂る葉が照つけるしからアロナの白いを覆い隠してくれる。

さらりとした著心地の良いワンピースにを包み、なにをするでもなくただ流れる時間を靜かに楽しむ。

(たまには、こういう時間も良いかもしれないわ)

學園にこそ通っていないものの、家庭教師であるリュート夫人のレッスンに加え、いくつもの淑教育をこなしている。ここならば両親の小言も聞かなくて済むし、貴族達の醜い爭いの噂も耳にはらない。

「ラーラ、冷たいお水をちょうだい」

「かしこまりました、お嬢様」

アロナが十の時にフルバート家にやってきたラーラは、彼にとって信頼できる侍だった。これまでアロナはルーファス以外に心を許したことがなく、そのせいでラーラも彼の前では萎していた。

けれど四度目の今、ラーラはアロナに怯えていない。それは彼がラーラを頼り、自を曝け出しているからだった。

「ルーファス様、これを」

ラーラからけ取ったよく冷えた水を、ちょうど帰ってきたルーファスに手渡す。彼は側近達と共に、狩りに出掛けていたのだ。アロナもわれたのだが、丁重にお斷りした。

「ありがとう、アロナ」

額に玉のような汗を浮かべながら、ルーファスは微笑む。暑いなかわざわざ狩りに勤しむなど、アロナには理解できなかった。

「殿下とアロナ様は本當に仲が良いですね」

ルーファスの側近であるダイノ・クルーガーが聲を上げる。クルーガー伯爵家嫡男であり、高い背屈強なが目立つ自信家の男。

「アロナ嬢のような才兼備のご令嬢が婚約者とは、殿下が羨ましいです」

そう続けたのは、同じく側近であるエドモンド・レオニクル。レオニクル公爵家の次男であり、頭の切れる狡猾な男。

どちらも家柄、そして能力重視で選ばれた存在であり、ルーファスとは合わない。

國王は元より王妃もルーファスに目をかけておらず、形式的に側近を選んだだけで中などどうでも良いのだろう。

が苦手であるというアロナの噓を信じているルーファスは、彼への配慮で、二人に距離を取らせている。

(こうして見ると、ルーファスって哀れだわ)

二人ともルーファスを馬鹿にしたような態度であるが、それはアロナが人生四度目だからこそ気付けることであり、表面上は彼に仕える優秀な側近達である。

「アロナはなにをしてたの?」

「なにも」

「退屈だった?」

「いえ」

アロナは本心を言ったまで。にも関わらず、なぜかルーファスは哀しそうな表を浮かべた。

「ごめんね、一人にして」

(斷ったのは私なのに)

なぜ謝られなければならないのか、アロナは理解できない。なにもせずにゆっくりと寛いでいた自分は、ルーファスにとって哀れに見えたのだろうか。

これも彼なりの優しさなのだろうが、アロナには必要なかった。

「殿下、今日は惜しかったですね」

「運が悪かったとしか言えません」

ダイノとエドモンドが、二人の間に割り込んでくる。

「そうかな。狩りは好きなんだけど、いつまで経っても上達はしないから」

頭に手をやり笑うルーファスに、二人もにこやかに返す。アロナにはそれが、嘲笑にしか見えなかった。

「ルーファス様」

は一歩前に出ると、ハンカチを取り出しルーファスの額にそっとれた。

「汗が目にってしまわれます」

「あ、ああ。ありがとう」

その所作一つとっても、アロナは完璧だった。側近二人が遠くから自を凝視していることに気付いている彼は、心ふんと鼻を鳴らす。

アロナから漂う花のような香りに、ルーファスはとろりと瞳を細めた。

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