《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第11話 宇宙船

ニジノタビビトが一人で乗っているらしい宇宙船の中は外観以上に広くじられた。外側だけで縦橫およそ六、七メートルもあるため、考えてみれば一軒家と同じくらいで當然といば當然なのだが、ところどころ四角張っていても全的には丸いという印象が勝るせいか、小さく見えていたらしい。高さは二階建てよりも高いが、三階建てほどではない気がした。

キラはキョロキョロと忙しなく視線をかしながら、ポカンと口を開けてアイルニムの市場で購してきた荷り落としそうになって慌てて抱え直した。

ニジノタビビトは、そんなり口から數歩のところで立ち止まっているキラに向かって聲をかけると、まずは準星アイルニムの市場で購してきた商品を冷蔵庫や保管庫にしまいに向かった。その後、ここでしばらく生活するのがから、と出立の前に宇宙船の案もしてくれた。

因みにキラの分の食料であるが、市場で食事をとった頃にはニジノタビビトはこっそりもうキラを連れていくことを決めていたので普段の倍以上の食料を購していたそうだ。冷蔵庫に移すときにくすくすと笑いながら言われたものでキラは口をへの字に曲げながら肩をかくんと落として呆けた。

「さ、ここが、バスルームとお手洗いだよ。々浄水とか循環システムとか積んでいて、二人でも十分足りる設計だけど、一応節水するように心がけてね。それから君が寢る場所だけど、今置として使ってる部屋の壁に収納式のベッドがあるんだ」

こっちだよ、というニジノタビビトに続いて顔を覗かせてみたのは、がいくつか置かれている質素な部屋であった。置とは言われたが大きな箱が二つと細々したものが置かれているくらいのもので、むしろこのまま三人くらいで生活しろと言われてもなんとかできそうなくらいスペースが殘っていた。ニジノタビビトが部屋の中にって左手奧の壁についているパネルを作すると楕円狀に迫り出していた壁の上の部分が離れて手前に九十度傾き、平らになった。壁の中に収納されていた上面部分が布張りになっていて、ベッドとして使えるらしかった。

「これがベッドだよ。シーツと枕は予備があるからそれを使ってもらうとして……申し訳ないんだけど今日はを端にかして簡単に掃除して使ってもらってもいいかな、はどこか移せる場所を調整するから」

「いや、端に寄せるだけで充分ですよ! むしろこんないい部屋をありがとうございます」

キラはニジノタビビトに出會えていなければ、森の木のうろが寢床になっていたはずなので、ベッドどころか室で寢れるだけでもありがたかった。

「最後にこの部屋なんだけど、ここにはらないでしいんだ。あとでぼちぼち話すけど、私が旅をしている目的に関連する……なんて言ったらいいのかな。まあ要するにとかがあるかわらないでしいって話なんだ」

そう言うとニジノタビビトはドアを開けて中を軽く見せてくれた。確かに中にはなんだかよく分からない大きな機械があった。キラはあいにく日常で使うような通信機なんかの扱いは得意だったが、それくらいなのでニジノタビビトに見せられた機械を見てもてんでさっぱりだった。

「分かりました。この部屋にはりません」

「ありがとう。よろしくね」

キラは元々人が引く境界線に敏で、それを大切にしたい人間だったので、ニジノタビビトの言葉に神妙そうに頷いてみせた。

「それじゃあ、座標を打ち込んで次の目的地に早速出発しよう。それでお茶でも飲みながら君の故郷の座標を正確に割り出してみよう」

他に説明しておきたいこともあるからね、と言ってニジノタビビトは食卓があるリビングダイニングにしていると言っていた、宇宙船にってすぐの一番広い部屋に歩いていった。キラはもう閉められた扉を一度振り返ってから、ニジノタビビトの後をついていった。

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