《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第25話 キラが一晩考えたこと
第六二四系の第七星クルニに到著する日の朝、ニジノタビビトがひっそりと起き出してくると、既にキラがキッチンで朝食の用意をしていた。何か聲をかけようとして何も言えず、とりあえず顔を洗おうと洗面所に駆け込んだ。
いつもよりも冷たくじる水で顔を洗い終えて、鏡の中の自分をじっと睨みつけていたものの、いつまでも洗面所に引っ込んでいるわけにもいかないので、意を決してキッチンにいるキラに震えた聲でおはようと聲をかけた。そして振り返っておはようと返してくれたキラの顔を見て仰天してしまった。キラの目の下には濃いクマができていたのだ。
一方キラだって目を見張って驚いていた。ニジノタビビトのキラキラしたし不思議な目はここ最近で一番輝きというか元気がなく、こちらにも薄いもののクマがあった。それで、ああ、この人は不安だったんだと思ってしだけ嬉しくなってしまった。そしてすぐに嬉しく思ったことを申し訳なく思って、軽く手を洗って拭いてからニジノタビビトの目をしっかりと見た。
「ねえレイン。一晩、寢ないで考えたけど、俺はレインを信じたいんだ。だからちゃんと見てるよ」
ニジノタビビトは顔を歪めて何かを言おうとして何も言えなかった。何か言ってしまえば涙が溢れてしまうと思ったのだ。ニジノタビビトはこの、虹をつくることとその方法に関することで泣きたくなかった。今、キラに涙を見せるわけにはいかなかった。
その時、稼働していたらしいオーブンが鳴った。正直ニジノタビビトはそれどころではなかったので気がついていなかったが、オーブンがオレンジにっていたし、何かが焼ける甘さをはらんだいい匂いがしていた。
「お、焼けた。よし、朝食にしましょう。今日はね、寢れなかったんでいっそと思ってスコーンを作ったんだ。ちょうど焼き上がったから焼きたてを食べよう」
キラは手にミトンをはめてオーブンの扉を開けると、中から天板を取り出してIHクッキングヒーターの上に置いて、大きめのフォークを使ってスコーンを六つ、ケーキクーラーの上に移した。
何事もなかったかのように言ったが、昨夜キラはニジノタビビトが部屋に戻ってから、時計の針がメモリ一つ分進むくらいの時間棒立ちで呆然としていた。それからまだ放心したまま部屋に戻ってベッドに座ってずっと考え込んでいた。一度橫になったものの眠れる気配がなかったので諦めてときどき窓の外に見える星々を窓際に立ってぼうっと眺めて考えに耽った。
ベッドと窓際をときどき行き來しながら考えるうちに突然頭の中がクリアになった。眠れなかったことによってハイになってしまったとも言える。おそらくアドレナリンが分泌されているのだろうという自覚を持ったままもう一度考えを巡らせると、ニジノタビビトが自分の作ったお菓子を食べて眉を下げてゆるゆると相好を崩して笑っている姿が思い出された。
その顔を思い出してから、ここまで悩んでいるのがふと馬鹿らしくなってしまったのだ。
だから、自分が見てきたものを、自分がこれから見るものを信じることにした。まだ一週間にも満たないその時間でキラが見てきたニジノタビビトの姿が偽だとは到底思えない。キラは程々の貧乏であったが不自由だと思わなかった理由は、その持ち前の格とかな人脈で、隣人への優しさと隣人からの優しさがあったからだった。つまり、自分の人を見る目と言うものを信頼していた。
これまでも今までも変わらない。自分がれ合ってきたその人を見て、信じるかどうかを決める。キラは星メカニカにいたって、宇宙のどこだか分からないところにいたってぶれなかった。
キラはスコーンといえば、プレーンのを半分に割って生クリームで作ったなんちゃってクロテッドクリームと実がじられるイチゴジャムをたっぷりつけて食べるものか、チョコチップとアーモンドれたものが好きだった。ただ、この宇宙船には生クリームもチョコチップもなかったので、ストックのお菓子にあった板チョコを砕いて刻んだアーモンドも一緒に混ぜて焼いた。
いつもだったら食材ではないストックされているお菓子を確認もせずに使わなかったかもしれないが、一晩寢ていないのでそこまで気が回らなかった。ただ、もし確認していたとしてもニジノタビビトであれば一も二もなく頷いていただろう。
「キラのスコーンなら焼いてしたってもおいしいだろうけど、焼きたてってやっぱりすごくおいしい!」
本當に幸せといったふうにスコーンを頬張るこの孤獨なタビビトが、どうしてか自分と重なる部分があるように見えてしまって、仕方なくなってしまっている自分がいることにキラはとっくに気がついていた。
異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンに入りたい! えっ、18歳未満は禁止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育成しようか
異世界から帰ってきた楢崎聡史と桜の雙子は、胸躍る冒険の日々を忘れられなくて、日本に発生したダンジョンに入場しようとする。だが〔18歳未満入場禁止〕という法律の前に、二人の希望は潰えてしまった。そこに救いの手を差し伸べたのは、魔法學院の學院長。二人の能力に気が付いて、即戦力としてダンジョンの攻略をさせようと、學院への編入を勧める。ダンジョンに入る権利を手に入れようと試験を受ける二人…… だが彼らの想像以上に、日本の魔法はレベルが低かった。異世界帰りの高いレベルと數多くのスキル、そして多種多様な魔法を生かして、學院生活を送りながらダンジョンを攻略する雙子の活躍に、次第に注目が集まっていく。 肩の力を抜いて読める內容です。感想等お寄せいただけると、とても嬉しいです!
8 193ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】
モズヤ・コウは突如遙かな未來、戦亂のネメシス星系の惑星アシアに飛ばされる。 殺人兵器が闊歩する危険な世界で廃棄場に放棄されたTSW-R1ラニウスに搭乗し、大剣一本と自らの剣術を操作に取り入れ敵を撃破した。 謎の少女の導きにより構築技士という資格を得て、コウは様々な兵器を同じく地球から転移した企業たちと開発。仲間とともに殺人機械や敵勢力を相手に惑星アシアの戦亂を生き抜く。 人型兵器から後方機銃搭載戦闘機、パンジャンドラムまで入り亂れての大戦爭! 書籍発売しました! 詳しくはなろう內の書報や活動報告、小説內畫像をクリックしてください! インプレスR&D様の『いずみノベルズ』より電子書籍とPODで販売しています! ジャンルSF〔宇宙〕最高年間ランキング3位。日間~四半期一位。 登場兵器100種類以上の兵器開発系メカアクションSF! ※カクヨム様でも連載しております。 ※毎週金曜日更新です。
8 111【洞窟王】からはじめる楽園ライフ~萬能の採掘スキルで最強に!?~
【本作書籍版1~2巻、MFブックス様より発売中】 【コミックウォーカーで、出店宇生先生によるコミカライズ連載中】 【コミック1巻~2巻、MFC様より発売中】 サンファレス王國の王子ヒールは、【洞窟王】という不遇な紋章を得て生まれた。 その紋章のせいで、ついには父である王によって孤島の領主に左遷させられる。 そこは當然領民もいない、草木も生えない、小さな洞窟が一つの孤島であった。 だが、ヒールが洞窟の中でピッケルを握った瞬間、【洞窟王】の紋章が発動する。 その効果は、採掘に特化し、様々な鉱石を効率よく取れるものだった。 島で取れる鉱石の中には、魔力を増やす石や、壽命を延ばすような石もあって…… ヒールはすっかり採掘に熱中し、いつのまにか最強の國家をつくりあげてしまうのであった。 (舊題:追放されたので洞窟掘りまくってたら、いつのまにか最強賢者になってて、最強國家ができてました)
8 101朝起きたら、幼馴染が悪魔に取り憑かれていた件
ごくごく普通な學園生活を送る、 高校1年生、西田 徳馬は 一つだけ誇れる自慢があった。 それは、成績優秀、運動神経抜群、 容姿端麗な宮園 愛花の幼馴染だということ。 いつものように愛花の家のインターホン を押し、愛花の可愛らしい聲で 1日がスタート。ーのはずだったが⁉︎ ☆不定期更新m(._.)m☆ ☆率直なコメントお待ちしております ☆1話1話が短めです(((o(*゚▽゚*)o)))
8 111俺、覇王になりました。
主人公の転道 覇道は全てに置いて卓越した才能をもっていた。とある中3の夏に寢ていると転生神によって転生させられてしまう。_これは主人公の覇道が最強になるお話です。_
8 70美女女神から授かったチートスキル〜魅了〜を駆使して現代社會でたくさんの嫁を娶りたい!
幼児に戻って美少女開拓!一妻制には大反対!--- 結婚式の主役の新郎。彼の名は佐藤篤樹(サトウ アツキ)。彼は結婚式の途中で何故かしら神界へと飛ばされてしまった。 飛ばされた理由は彼が愛に関して不満があったからだ、と愛を司る美女の女神が言う。彼の不満の正體、それは女神の全てを見通す神眼によって明らかになった。 それは現代の日本では1人の女性としか結婚できないことである、 彼は女神そうに指摘されて、納得する部分があった。 そんな指摘を受け、今度こそ欲望に忠実に突き進もうとする彼に女神は力をいくつか授けた。その一つに【魅了】がある。 その力を駆使して主人公がいろんな可愛いヒロインを社會の常識に囚われることなくひたすらに攻略していく。 そんなわがままな主人公のハーレム作成の物語。 この主人公の行為が現代日本を救うことになるとは……
8 160