《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第36話 たずねびと

第六二四系の第七星クルニに著陸してもう三日目の朝になる。幸いにも虹をつくる人の候補は早く見つかったものの、それがあくまで候補でしかないということを知ることになった二日目。

今日もニジノタビビトとキラは手分けして探すことに決めていた。しかしそれは虹をつくり、カケラを生する人を探すのではない。昨日出會った虹をつくりカケラを生する候補のラゴウという人が、あのままされる中で孤獨で息苦しくなって、そんな自分に思いを向けてくれる人に申し訳なくなってまたさらに苦しんでいるのは、悲しいことだと思って、この人を探そうということで意見が一致した。

ラゴウの報で分かっているのは名前と長、容姿くらいのものなので、手がかりはほぼないと言っても過言ではなかった。そのため、闇雲に探すほかない。

昨日でカケラが熱を持つことで虹をつくれる人を教えてくれるのはニジノタビビトだけだと分かったので、ニジノタビビトが街を巡ってラゴウを探す。キラは來る可能は低いがあの公園でラゴウを探しながら報収集をする。

「よし、それじゃあ私は街を回ってラゴウさんを探す」

「俺が公園で報収集をしながらラゴウさんを探す。見つけたらどうする?」

もうすでに公園にたどり著いているというのに、行き當たりばったりで、探す方法は無鉄砲、その後はノープランという有様だった。

「そうだね、ひとまず合流できるようにしたほうがいいんだけど……」

相変わらず通信手段というものは持っていなかったので、昨日と同様に時計のメモリが次のメモリまで半分進んだらニジノタビビトが一度公園に戻ってくるという方法をとることにした。

じゃあと言って二人は別れると、ニジノタビビトは公園の外へ、キラは公園をひとまず探索するために歩き出した。

キラも流石に昨日の今日でラゴウさんが公園に、まして茂みの奧にいるとは思わなかったが、念には念をれてよくよく辺りを見回しながら公園を練り歩いた。

この公園はそこそこの広さがあって、公園の真ん中に來ても端から端まで見えない。時間を忘れてあまりゆっくり見過ぎると宇宙船から一番近い公園のり口で待ち合わせをしているニジノタビビトと合流できなくなってしまうので気をつけなくていけなかった。

「やっぱり今日は來てないか……」

時間には間に合うように、公園をぐるっと一周してきたが、やはりラゴウは見つからなかった。流石に昨日の今日で同じ公園で同じようにしてうずくまっているようなことはなかった。

「キラ!」

ニジノタビビトが呼ぶ聲が聞こえて顔を上げると、こちらに向かって駆け足で戻ってくるニジノタビビトの姿があった。キラはニジノタビビトの方に手を振りながら軽く聲を張った。

「レイン! どう、ラゴウさん見つかった?」

ニジノタビビトはキラのもとまできて足を止めてから首を振った。

「キラの方は……」

「こっちもダメだった。とりあえずこの公園一周してきたけど流石にね。この後また公園を回りながら容姿と名前で何とか探してみるよ」

流石にこんなに簡単には見つからないかと落膽してしまったが、まだ探し始めたばかりだから、続けて探そうとニジノタビビトはまた公園の外に探しに行った。次に戻ってくるのは半分まで進んだ時計の針が次のメモリまで進んだときだ。

さて、キラはこれからこの名前くらいしか知らない星で、名前と容姿しか知らない人を探さなくてはいけなくなってしまった。パチンと一度頬を叩いて気合いをいれる。

「よし、絶対にラゴウさんを見つけるぞ」

そう聲を出して意気込んだキラに背後から聲がかかった。

「あの、ラゴウに何か……?」

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