《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第50話 黒真珠の瞳
「ふっ、そうか、いや今まで君と虹をつくる人か何人もいたのは、それはそうだろうなあ」
「確かに、私はすべてみせてもらったのだろう。そして改めて言おう。私は虹をつくりたい」
「はい、ありがとうございます。」
ニジノタビビトはベンチに座ったままラゴウに頭を下げた。キラは今までニジノタビビトが遮蔽して見えていなかったラゴウと目を合わせることになってし気まずかった。
「しかし、本當に私に虹がつくれるのかい?」
「それは大丈夫です。今まで虹をつくる候補でない人たちは皆、カケラを握っても何も見ることが出來ていません」
もしかしてカケラが教えてくれないのは自分だけなのではないかと、以前虹をつくった人の親近者にも握ってもらったが、何か覚えるものはないかと聞いたところでほんのり暖かいかもしれないという見當違いな返答があるのみだった。
現にキラもカケラを握ったが、何も見えるものも験するものもなかった。そもそもキラが虹をつくることが出來るのであればニジノタビビトの元にずっとかけられたカケラが熱を持たないはずがないのだが。
「そうか、それは安心した。では早速、と言いたいのだが今日はもう遅いし、明日も仕事だ。明後日が休みだから、明後日でも構わないかな?」
「ええ、それはもちろん」
そしてラゴウはさっさとニジノタビビトと約束を取りつけてしまうと、ではまた明後日と言って去っていってしまった。その足取りはほんのしだけ軽くなったようにキラには見えた。
「キラ、ごめん、々置いてけぼりにしてしまったね」
「いやあ、元々俺が口出せるようなものでもないからな。でもちょっと殘念かもな、カケラを握ってもなんにも見れないの」
「ふふ、でもすぐに虹なら見れるさ。あのカケラはそのカケラを生した人の虹の風景なんかが見れるらしいからね」
二人は久しぶりにし張から解放されていた。しばらくどうなるか分からなかったがようやく見通しが著いた。
ザッ——。
ふと誰かが強い足取り近づいてきて止まった足音がした。キラとニジノタビビトがそちらを見ると、そこにはなぜかケイトがいた。ケイトは肩を上げて両手を握りしめながら俯いていた。キラもニジノタビビトも突然のケイトの登場に言葉を無くしていると、ケイトはバッと顔を上げて顔を歪ませながらぶように言った。
「どうして? どうしてラゴウがあなた達と會っていたの。どうしてラゴウが虹をつくることになっているの。ラゴウに、無理強いはしないって話だったじゃない!」
だから私は、ラゴウとあなたたちを會わせてあげたのに! ケイトは落ち著いた人、という印象が強かったので、キラもニジノタビビトも驚いていた。
「いや、ちゃんと説明をして納得してただきました……!」
キラはとっさにニジノタビビトを背に庇って両手を振って弁解した。
「噓よ! ラゴウはあんなに苦しんでいたでしょう! もうやめて、お願い、これ以上もう……!」
ケイトはわっと顔を覆ってしまった。そのケイトの後ろからびてくる腕があった。その両腕はケイトの肩の辺りに回った。
「あっ……?」
「ケイト、ケイト。待って、ごめん、私が決めたんだ。ケイトにはずっと心配かけていたよね、ごめん。でも私が、私の意思で決めたことなんだよ」
後ろからケイトをその腕の中におさめたのはラゴウだった。その力は強くケイトはその腕の強さと驚きとで顎が沿って後頭部がラゴウの肩に乗った。ラゴウはゆっくり腕を解いてケイトと向き合うようにすると、その背に見合う大きな手でケイトの肩を包み込んだ。
「ケイト、ケイト。しているよ。本當に、心から。でもずっと言えていないことがあったんだ、きっと何かしらに気付いてくれていただろうに何も言わずにいてくれたね」
ラゴウは肩から手の上らせてそっとケイトの両頬を包んだ。その頬はいつの間にか、濡れていた。
「どうして苦しいのかすら分からなくて、こんな自分がみっともなくて何も言えなかった。こんな私が見放されたって何も言えないけれど、でも、できればどうか、そばで君には見守っていてほしい。これが終わったらきっと、また君のことだけを考えられる時が訪れてくれると思うんだ」
ケイトはこんなにも近くにラゴウがいることもその顔を間近で見るのも、その深い黒の瞳を覗き込んだのだっていつぶりか分からなかった。ケイトは、ラゴウの深い深い靜かな夜のような黒真珠のような瞳がとても好きなのだ。そして、その中に自分が映ることが嬉しくって仕方がなかった。
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