「さて、順を追って話していかなくてはいけませんね。と言っても今まで説明してきたことをより詳しく実や寫真を見せて説明していくばかりで新しいことはあまりないと思います」

ニジノタビビトはキラが淹れてくれた紅茶を一口飲んでからそう切り出した。ニジノタビビトの手元のソーサーにはキラが焼いたクッキー二種類が二枚ずつ乗っていた。

「まず先程も言った通り、虹をつくるにはの現化を行ってカケラを生する必要があります。このカケラの生は限られた人しか行えず、それ故に虹をつくれる人が限られているのです」

カケラはえも言われぬや大きな思いを主にして生する。そして今まで虹をつくってきた人々から推測されるに、それらのを複數抱え、かつそれを抱え込んでいる人がカケラをつくる。

これはニジノタビビトの推測も混じるが、えも言われぬや大きな思いを抱える人というのは結局のところほとんどの人がそうなのではないかと考えられる。きっと誰にだって譲れないものがあり、誰にも負けないという思いや、自分の中で大切にしているものがあればそれは大きな思い、であると當然言える。これだったらカケラを生できない、虹をつくれないニジノタビビトにだってある。

しかし、虹をつくれる人々はそれだけではない。虹をつくれる、つまりカケラを生できる人々は、まるで自分よりもはるかに大きく膨らみすぎたいくつもの風船が自らを圧迫するようになってしまった人ばかりであった。

その激とも言える風船は、決して割りたいものでも忌むべきものでも捨てたいようなものでもないのに自分自を苦しめるにまで至ってしまったり、適度に空気も抜けず、消化や昇華が出來なくなってしまったりして行き場をなくし、膨らむばかりになっていた。

宇宙船に殘されている実験結果によれば、んで虹をつくることに功しているので、恐らく大きく膨らんだ激が七つもあれば虹はつくれるようだが、意(・)図(・)的(・)に(・)激をため込むということ自がニジノタビビトには出來なかったし、出來る人に出會ったことがない。

そもそも虹をつくる候補は前回虹をつくった人が託してくれたカケラが教えてくれるのだが、教えてくれる時點で既に激を複數抱いているので意図的に激をため込んで貰うということ自をしてもらったこともなかった。

「カケラの生というのは、その、ちょっと非科學的な部分がだいぶあるんですが、そもそもの現化というファンタジックなことなので……」

そう前置きしてからニジノタビビトはカケラの生について手順を話した。

カケラは自らの意思で機械のスイッチを押すことで自分の心や記憶などがあるところを視覚する。これは本人の神の部分の話なので心や記憶などがあるところが見えていてもは目を瞑っていて、周りの人には椅子に座って眠っているように見える。

心や記憶などがあるところが見えたら、膨れ上がった激を選び、れて手の中に取り出し、好きなや虹に使いたい、相応しいと思うを付ける。これを七度繰り返してから目覚めると、機械のシリンダーの中にカケラが生されている。

あとはまた別の、隣に設置した機械にカケラを七つセットして、また本人の意思で機械を作させれば宇宙船が上空二百五十から三百メートルの高さまで飛び立ち虹をかける。機械を作させてからすぐに飛び立たないようにも出來るので、地上からでも上空の宇宙船の窓からでも好きなところから虹を見ることが出來る。

「ふう、こんなじですかね……、寫真はこのアルバムにいくつかあります。虹をつくるというのは工程の中のを現化してカケラをつくることが難しいんです。この後機械を実際に見てもらってから質問などをけて改めて虹をつくるかどうかゆっくり決めてください」

「まだ、虹をつくらない、という選択肢があるのか……」

「そうですね、そもそもが自分の意思で行わなくてはできないことなので強制は一切出來ないんです」

なので自分は一杯説明をするだけなのだとニジノタビビトは笑った。