《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第69話 運命とアザ
キラはユニーバーシティの學生であった。
學んでいた分野は経済學であるが、それを選んだのは、得意で、興味があって、何より大事だったのは職に困らなそうということであった。
いわゆる苦學生というものなりに苦労はしてきた。生きている中で、學んできた中でトキメキや高揚だってもちろん経験してきた。それでもこんなの高鳴りがあるということをキラは今、生まれて初めて知り得たのだ。
「ああ、レイン。俺、翡翠の渦に巻き込まれたのは、運命だったのかもしれない」
いいや、むしろ、自分はこの虹を見るために生まれてきたのかもしれない。それほどだった。
キラは現実主義者でときどき楽観主義者であった。神社に行って神様を敬う気持ちを人並み以上に持ち合わせていたが、運命というものはしっくりきていないタチだった。否定はしないけれど、自分に関係のないことだと思っていた。とんでもなかった、自分にだって劇的な運命は確かに存在していた。まだ二十有余年ばかりしか生きていない若造が運命なんて大きなものを悟るには到底早かった。
正直な話、キラは自分がここにいるのは場違いだと思っていた。
ニジノタビビトはもちろんニ(・)ジ(・)ノ(・)タ(・)ビ(・)ビ(・)ト(・)がいなければ始まらない。ラゴウは「虹をつくる」當事者で、ケイトはその人で、虹をつくることにおいて重要なや心の部分に深く関わる人である。
自分はり行きとニジノタビビトの配慮とでここにいれることなったが、ラゴウと最初に出會ったのは自分とはいえ、それは街で調が悪そうにしている人をその後に急用もないような人間が助けただけ、という話でしかないのだ。たまたま、ニジノタビビトがその人が虹をつくれる候補者だと気付いたからこうなったが、そもそもあの公園にラゴウがいたのであれば、自分が見つけるまでもなくラゴウという人とは出會っていた可能だって高かった。
要するに、キラはここにいなくてもこの虹は無事につくられた可能の方が高いのだ。
「キラ、その、どう……?」
「どうも何もないよ、きもちが溢れて仕方がない。こんなの初めてだ」
ニジノタビビトはラゴウとケイトに気をつかってキラにだけ屆くような聲量で問いかけた。キラはこのをうまいこと言葉に落とし込めないことがもどかしくて仕方がなかった。
ニジノタビビトが、どの虹一つも忘れることは決してないと言っていた意味が今よく分かった。キラはこれから故郷の星メカニカに帰るまでにもう何度かはこの虹を見ることができるだろうが、その虹だってきっと一生涯忘れることなど葉わないものになるという確信が今からあった。
「ケイト、々心配かけたね。ありがとう、ずっと見守っていてくれて。でももうきっと大丈夫だ。この虹を自分がつくれたという事実がある限り、もう私は私を見失わないでいられるだろう」
ラゴウは虹を見上げたまま、ケイトに語りかけた。
一呼吸置いてラゴウは続きを口にするか悩んだ。悩んですぐに、もうここまで自分を曝け出したのだから今更だと、ケイトにはこれから先言葉を盡くして、せめて自分がどう思っているのかくらいは後悔しないためにもきちんと伝えたいと思った。それでも顔だけはケイトの方に向けられなくてチラチラと視線を彷徨わせて、モゴモゴとさせていた口をもう一度開いた。
「ケイト、この虹は間違いなくこれからの私を支えるものになるけれど、私がこの虹を作ることができたのは君がいてくれたからなんだ。……ありがとう」
キラはラゴウの虹と二人の姿を見て、ニジノタビビトがいつか自らの手で、一から虹をつくれるようになりますように、とそう願わずにはいられなかった。
ニジノタビビトの方を見てそう思っていたキラは次の瞬間目を見張った。虹をかけるという役目を終えた宇宙船がゆっくりと著陸していることによっておきた風に煽られたニジノタビビトの首の後ろ、普段隠れている髪の生え際の辺りに自分の腰にもある、二週間弱経っても消える気配も薄れる気配もない、ひし形のようなダイヤのような形のアザがあった。
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