《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第76話 レストランサニーにて

「さ! これがメニューよ、なんでも好きなもの頼んでね」

「遠慮なんてするなよ」

連れてこられたのはあのラゴウと出會い、話をした公園からさらにし歩いた表通りの一本奧にあるレストランサニーだった。

ソファ席に案されて、それぞれラゴウとケイトにメニューを手渡されてキラははたとその口ぶりから気づいた。これはこの人達、奢るつもりでいるな、と。隣に座ったニジノタビビトの方を見ると見たことも聞いたこともない料理の數々に夢中でそれには気がついていないようだった。

まあ、レインの場合はニジノタビビトなわけだし、ラゴウさんの虹をつくる前と後の様子を見るにまだ奢られる理由もあるかと思って、それであるならば自分はせめて程々にしておこうと思った。

そもそもキラはこの星で使える所持金がゼロなので、外食となれば気を使うなと言われてもそれは無理な話であった。

「キラ、何にする? 々あって悩んじゃうね……」

「えっ、ああ、そうだな……」

キラは慌ててメニューに意識を戻して右側に書いてある數字の部分に意識を寄せながら目を通した。良かった、地元にざしたレストランといったところなのだろう、キラが試験とレポート明けにご褒の贅沢で手を出せるぐらいの価格帯だった。

メニュー名だけだと分からないものも多いが、ほとんどのメニューに寫真が著いていたので料理に何が使われているかはなんとなく分かる。

「じゃあ、このカメルカのランチセットにしようかな」

キラが指さしたのは牛とガウニを使ったカメルカだった。ラゴウにおすすめされたこともあるし、全を照らして見ても程よい価格だった。

「えっ、キラもう決まったの?」

キラがぱっぱと決めたことに焦って、ニジノタビビトはパラパラとメニューをめくって行ったり來たりした。キラは自分が持っていたメニューを閉じて會釈と共にラゴウに渡すとニジノタビビトのメニューを覗き込むように肘をついてを乗り出した。

「レインは今のところ何で悩んでるの?」

「いっぱいありすぎて決めらんないんだけど、キラが選んだカメルカも気になるし、さっきラゴウさんが言ってたククルも、こっちのワッフルみたいなやつも気になる。それから、こっちのスープも……」

「分かった分かった。じゃあ半分こしよう。俺が頼むカメルカと、レインが食べたいやつ。それであと甘いのか」

「いいの!?」

ニジノタビビトはきらきらと目を輝かせてキラの方を向いた。キラはニジノタビビトの手元にあるメニューを覗き込むためにを乗り出していたせいで、急に目の前に迫ったニジノタビビトの顔にびっくりしてつんのめって背中を反らせた。

「もちろん、俺もいろいろ食べてみたいから。じゃあ、ランチセットじゃなくて単品にしようかなあ……」

「決まったかい?」

キラはラゴウの方を見た。ラゴウとケイトのちょうど真ん中に置かれたメニューは開いてはいるものの、すっかりページをめくっていなかったのでもうすでに何を頼むかは決めてしまっているらしかった。二人はこのレストランサニーに何度も來たことがあるらしいので、もう著く前にほとんど決まっていたのかもしれない。

「はい、俺がカメルカで、レインは?」

「私はこの海鮮のククル三種にします。セットスープ付きで!」

「私がさっき言ったやつにしてくれたのか。すみません、注文お願いします!」

ラゴウは一つ頷くと、手をあげて店員を呼んだ。そのまま慣れた様子で自分の分とケイトの分、それからキラとニジノタビビトの分も注文をしてくれた。キラは別にセットドリンクを頼むつもりがなかったのだが、ラゴウに何にするのか店員がいる前で聞かれたので、流れで無難にアイスティーをを選んだ。

「まあ、足りなかったら追加で注文すればいい。もう明日旅立ってしまうのならせっかくだから食べたいもの全部食べる勢いでいこう」

流石にラゴウもこの店で出しているこの星の伝統料理全てを食べ切れるとは思っていないので、二人が食べたくて食べきれない分に関しては晩ごはんに食べられるように包んでもらって二人に持たせるか、レシピが分かるものなら教えるつもりでいた。

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