《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第78話 キラという恩人
結局二人で半分こにすればいけると踏んで、ワッフルと、クレープを注文した。
ワッフルは四角く、格子の形がついていて焼きたて熱々。この店で作っているらしいらかでふわふわのバターがディッシャーでアイスのように盛られていて泣かない砂糖も振られている。そのままシンプルに食べても良し、お好みで添えられたシロップをかけて食べても良しで二度楽しめる。
クレープはキラが星メカニカで食べたことがあるような円錐狀の持って食べるタイプではなくて、お皿に折って盛り付けられていた。こちらは王道のチョコバナナで、バニラアイスクリームが乗っている。
「「ごちそうさまでした!」」
お腹いっぱい、腹十分目。キラは最初遠慮しようかとも考えていたのに満腹になってしまった。
食べすぎてしまっただろうかと、食べ終わってから、最後にクレープと一緒に運ばれてきた伏せられた伝票の方をそっと見た。それから恐る恐るラゴウの方を見るとケイトと一緒にこちらを見てニコニコ笑っていた。
「お腹いっぱいになったかい?」
「はい、とっても味しかったです!」
ニジノタビビトは満面の笑みで返した。それはラゴウもケイトも今までに見たことがないい笑顔で、本來の人柄はこの笑みがよく似合う表現がかな子なのだろうという気がした。
ラゴウもケイトも年下の、自分たちからすればまだ子どもとも言えるかもしれない青年がお腹いっぱいになって笑っている景というのが見ていて嬉しかった。しかもそれはラゴウを助けてくれた人たちで、食べていたのはこの星の、自分達の故郷の伝統料理なものだから余計にだった。
キラは自分がラゴウの虹をつくるという事において何もしていないと思っているが、ラゴウにしてみれば決してそんなことは無かった。
確かに、あのラゴウと初めて出會った場にキラがいなかったとしてもニジノタビビトはラゴウを見つけられていたであろうが、見つけられたからといってラゴウと虹をつくることの渉にまで至ったかどうかは微妙である。
それはニジノタビビトがあんなに弱っていたラゴウとどう流したらいいか分からなかったり、ラゴウ自もニジノタビビトなんてよく分からないやつに関わりたくなかったりしただろうからである。しかしキラという、ただうずくまっていた人を助けたいというだけで異星の名前も知らない人間に手を差しべた人がいたから、ニジノタビビトはラゴウと虹をつくることを諦めなかったし、ラゴウは助けようとしてくれた人がいたから話を聞いてもいいと思えたのだ。
キラはそんなふうに思っていなくたって、キラがいなければラゴウは虹をつくるのには至らなかったし、今も苦しいままケイトと距離を置いていたかもしれない。ラゴウはその可能に気がついていたから、ニジノタビビトという恩人だけでなく、キラという恩人がお腹いっぱいで笑っていることが嬉しかった。
「満足できたようでよかった。ちなみに食べたかったものは全部食べられたかい?」
「はい、特に気になっていたものは。でも正直知らない食べばかりだったので気になっているのはありますが……」
「あら、どれ? お料理するんでしょう? レシピが分かるものなら教えてあげられるわ」
ケイトはメニュースタンドに立てていたメニューをもう一度引っ張り出してニジノタビビトの目の前に開いておいた。ニジノタビビトは飲みのカップを左に寄せて場所を開けるといくつかの料理名を指差した。
「これなら全部教えてあげられるわ。このあとお買いに行くんでしょう? その時に食材と一緒に教えればいいかしら」
「あ、主に料理してるのは自分なので、俺に教えていただければ……」
これでこの後も決まった。腹十分目まで食べきったのでしゆっくり食後のお茶を楽しんだ。途中ラゴウが端末に來ていた通知に気がついて一度席を立った。キラは払えるわけではないがまさか今払うつもりなのかとチラリと視線をやってしもいていない伝票があることを確認して息をついた。
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