《高収悪夢治療バイト・未経験者歓迎》第6話 夢の中へ

「いや、聞いてるんですけど……その悪夢の中にるっていうのが信じられなくて」

「まあ初めはそうだよね。俺も最初に來たときは驚いたなあ」

「あの、詳しく教えてくれませんか。その悪夢治療について……」

「詳しくって言われてもなあ……言葉通りの意味だし……どう言えばいいかな……」

やっぱりそうなのか……。何かの間違いだったということも期待していたけれど増川は平然と笑っていた。バイトの人間も一緒になって自分へ噓をついているのでもなければこれから本當に…………。

凜太は自分の腕をつねって、なくとも今は現実にいることを確かめた。れたロッカーから金屬の冷たさも確かに指に伝わってくる――。

「おはようございます。……あ、新人ってこの子ですか?」

不安にを悩ませていると準備室のドアが開いた。ってきたのはモデルのような容姿をしただった。

「おはよう。そうそう新人の草部君」

「誰の紹介ですか?」

「いや、求人見て來た子って院長から聞いてる」

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「へー。そうなんですか」

ってくる場所を間違えたんじゃないかと思える増川の同僚らしきは深夜バイトにも怪しいバイトにも似つかわしくなかった。すらっとしたはヒールを履いていなくても自分と同じ人間とは思えないほど綺麗で、顔も抜群に整っている。

その容姿に見とれた凜太は、が増川と話し出したということもあって挨拶のタイミングを逃してしまった。すると向こうから目を合わせてきて會釈される。

「あ、初めまして。今日からバイト始めた草部です」

「桜田です。よろしくね」

服裝や仕草がお嬢様みたいなら名前まで桜というしい文字がってしまっている。凜太は一応お風呂にってきて正解だったと思った。

「でも、初めてなら大変ですよね。増川さんは今日の患者リスト見ました?」

「見たよ。1人男の人が來てる」

「どんな悪夢だったんです?やばそう?」

「今日のやつくらいなら初めてでも大丈夫なんじゃないかな」

「ああ。たいしたことない悪夢ですか……。でも、新人の子がいるならいいか」

喜んでいたのも束の間、桜田も悪夢の話を始めたのだった……。

こう言うと増川に失禮だけれど、増川と桜田がカップルだと紹介されたらすごく不釣り合いだとじる。2人が並べば背はの桜田のほうがし高いくらいなのに顔は増川のほうが大きい。

そんな凸凹な男は時間になると早速といったじで凜太をある部屋に案した。

「時間になったらまずはこの部屋に來るのね。俺らのバイトは基本的にこの部屋で過ごすことになるから」

「はい」

部屋の中にはデスクとパソコンが1……2……3……6つ並べて置いてあって、そのの2つの電源が付いていた。

「ここで、患者さんの睡眠の狀態をチェックするの。それが主な仕事かな」

パソコンのモニターに心電図みたいな波形が映し出されている。その隣にも下にも何かを計測しているらしい波形が波打っていた。

「こっちが脳波で、こっちが、患者の呼吸狀態ね。でもまあ細かいことはとりあえず今日のところは覚えんでいいよ」

「はい」

「患者の睡眠狀態が悪くなると、なくともどれかがれるから。それをここで見守るのね」

睡眠治療のサポートに患者の見守り……求人に載っていた通りの業務容ならばありそうな仕事だった。しかし……。

「問題はここ。この緑にってるセンサー。これが今は緑にってるけど、患者が悪夢を見始めると赤くなるの。これだけはちゃんと見てなきゃいけない」

「これ以外は私たちもあんまり注意して見てないですよね」

「うん。普段けっこうダラダラしちゃってるよね」

増川も桜田も新人の指導を優しく行ってくれた。笑顔で接してくれて2人とも良い人そうである。バイトの先輩くじは大當たりの部類だと思った。

何でこんな人たちがこんなところでバイトしているのか……。

「悪夢治療さえ乗り越えられれば、あとは楽ですよね。時給も高いし」

「楽だね。院長もめんどくさいこと言ってこないし。でも、そこがなあ」

「いったいこれから何をするんですか……」

恐怖がもうすぐそこまで迫ってきたようにじて、凜太は思わず口を挾んで聲を出した。

すると、その聲に反応したかのようにパソコンの橫に付いた豆電球みたいな緑が……花を咲かすようにじんわりと赤く変わっていった……。

「ちょうど始まったみたいだし、行こうか……夢の中へ。話すよりも実際見たほうが分かりやすいと思う」

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