《高収悪夢治療バイト・未経験者歓迎》第30話 怖いよ

春山は何度見ても春山だった。一目見ただけですぐにそうだと分かったけど何度見ても同じだった。

今この時間が夢なのかと思う……。患者の夢の狀態をチェックするパソコンの前に春山と並んで座る凜太はドキドキしていた。しかもそのドキドキは元々覚悟をしていた悪夢への恐怖のドキドキではない。

の予のドキドキだった。

「草部君は今日で一週間。シフトにるのは3回目?」

「いや、今日で4回目かな」

「そうなんだ。じゃあちょっとだけ慣れたくらいか」

「うん。まあ」

「この部屋でパソコン見てるの面白いよね。なんか賢い醫者になったみたいで」

春山がパソコンに映る波形を指差して笑う。凜太はこれではまるで2人で仲良く映畫鑑賞をする人ではないかと心の中で悶えた。

その燃え上がるを頭で制して押し殺し、自然に會話を続ける。

「春山さんはここのバイトいつからやってるの?」

「私は……その……実は大學學當初からずっとやってるよ」

「マジで?1年のときからか」

「うん。大學生になったらすぐバイト始めたかったし」

「それにしても……何というかよくこんなとこ選んだね。まあ俺もここ選んで來たんだけどさ」

この前まで早く時間が過ぎてくれないかとか、帰りたいと考えながら過ごしていた部屋が幸せな空間だった。

「でもほんと知らなかったな春山さんがこんなところでバイトしてたの」

「……にしてたからね。本當に仲いい友達には言ってたけど、その子にも他に言わないでって頼んでたし」

「それは院長に悪夢治療のこと人に話すなって言われたから?」

「あ、草部君もやっぱり言われたんだそれ。まあそれもあるけど……単純に変なバイトだから恥ずかしいというか……とにかくさ草部君も私がここでバイトしてるのにして」

「ああ。うん」

「私も草部君のこと他の人に言わないから。お互いに2人だけのね」

その、恥ずかし気な表と「2人だけの」という言葉で凜太は春山に惚れ直した。しあざといとさえ思うが気にならない。凜太の心が喜んでいた。

しかし馬場はこのことをどこまで知っているんだろうか。バイトをやめてもいい1週間後に思いを寄せている春山と一緒なんて、もしも把握していて狙っているのであれば凄すぎる。

けれど、さすがにそんなことはありえないか。自分の個人報まで知っているはずがない。

その後も凜太と春山は他もない雑談を続けた。最近のニュースについてだとか、大學の友人がこの前どうだったとか。その中で凜太は最も気になっていることをずばり聞いた。

「――でもさ、春山さんは怖くないの?こんなバイト」

「草部君は?」

「俺はまあ……正直怖い思いしてるかな」

悪夢が怖いだなんて言うと格好悪いとも思ったが凜太は正直に答えた。噓をついてもすぐにばれるかもれないし、怖いものは怖い。

「もうなんかすごい怖い悪夢あった?」

「どれくらいから怖い悪夢に分類されるのか分かんないけどあったかな」

「そっか。……私もね……怖いよ」

し聲を小さくしてかすれさせながら春山は言った。行った後はを軽く噛んでうつむく。

不意にを漂わせるような雰囲気で春山が言うものだから凜太もすぐに次の言葉が出なかった。

そして、その時ちょうど悪夢を知らせる赤いが點燈した。

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