《高収悪夢治療バイト・未経験者歓迎》第42話 答え合わせ

もうこれ以上……何も考えたくない。凜太は芋蟲が聲を発しだした時に芋蟲から目を逸らした。目を逸らして天井の赤いをじっと見た。頭が勝手にかしたという行だった。きっとめんどくさくなってしまったんだと思う。

簡単な夢ではなかったのか。バイトをやめるつもりでここに來て、最後も簡単な夢だったはずなのに、今どうして自分はこうして赤いを冷めた目で見ているのか。

しだけ……ほんのしだけ休むだけだ。し現実から目を逸らしたらまた戻るから。嫌だけどやらなければいけないから戻る。赤いを見る凜太の目はぼやけてきていて、赤いがいくつも重なって見えた。

「助けて……助けてよ」

「あなた喋れるの?聲は聞こえてる?」

「私の聲が聞こえてるの?喋れる……喋れるよ。私は喋れる」

「うん。聞こえてるよ」

「聞いて……私本當は人間なの」

春山と芋蟲が何やら喋っているのが聞こえる。芋蟲の聲も若いの聲だった。

「信じてくれますか?」

「うん。信じるよ」

「ありがとう。私を助けて……人間に戻して」

「大丈夫。聞いて。これは夢。ただの夢なの。だから気づいて。あなたが本當の患者さんね」

凜太はそこまで聞くと、目を一瞬強く閉じてから會話に加わった。

「そうですよ。これは夢です。分かりますか?」

春山の隣にしゃがんで、よく見た芋蟲はまた泣いていた。いや芋蟲ではなく人間だった生きか。芋蟲がそう言っていた。

この芋蟲が人間であるなら、これは自分が芋蟲にされてしまうというような悪夢だろうか。そういう類の悪夢なら悪夢らしくて、そんな悪夢を毎日見るのなら治療が必要なのも納得がいく。

けれど、悪夢ファイルの容はそんなものじゃなかったはずだ。

「夢ですか。たしかにこれは悪い夢。でも私にとっては永遠に覚めることがないかもしれない」

「え、夢だと分かってるんですか?」

「はい。何でそんなこと聞くんですか。そもそもあなたたち誰ですか。私の妄想ではないの。患者って何?」

凜太達と同じように芋蟲も混しているようだった。未だに何がどうなっているかは見えてこない。解決に向かっているようで何も終わりに屆かない。

「えっと、僕たちは悪夢を治療する病院の者で……今この夢の中にってきていて……」

凜太はありのままのことの経緯を簡潔に話した。事実だけを一つずつ手短に話した。

芋蟲が話を聞く間に、芋蟲の涙は流れなくなっていた。相槌を打ちながら話を聞く芋蟲は凜太にとっても人間に見えるようになってきた。本當に何かの手違いで悪夢ファイルの容が違っていたのだと思うようになってきた。

「なるほどなるほど……そうだったんですか。ありがとうございます。大どういうことか分かりました。ついに本気で私を殺しに來たのか……」

凜太が話を終えると、芋蟲は何か納得したようなことを言って目を閉じた。そして數秒の後、今度は芋蟲が真実を説明した。

「私、二重人格なんです。ある時、私の中にもう1つの人格ができて、その人格はどんどん私の中で大きくなっていて私はほとんど表に出れなくなった。私は毎晩夢の中で姿を変えられてもう1人の私に命を狙われてるんです」

ようやく凜太は頭の中で答えに近づいていくことができた。さらにそれは駆け足での接近だった。

「だから、たぶんあなた達は私を殺すための助っ人としてここに呼ばれたってことだと思います。私はずっとこの安全な家に隠れてますから……信じられないような話だと思いますけど」

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