《高収悪夢治療バイト・未経験者歓迎》第46話 続けます
ただ、倒れ伏した霊の死を見ていた。背中姿だけなら霊ではなくただの子中高生に見える。ひょっとしたら顔ももう元に戻っているかもしれない。
紺のブレザーに紺のスカート、長い髪が広がり制服を覆っている。その髪が集約した場所からはが流れていた。
凜太が付けた傷だ。
「草部君……私のせいだよね。私が助けようって言ったから」
たぶん10分くらいは経ってから、後ろから聲をかけてきた春山。凜太はゆっくり首をかした。
「いや……俺のせいだ。やっちゃった」
形だけの夜空の下、2人して頭を下げるしかなかった。
凜太と春山は並んで倒れる子中高生の前に座った。近くの塀に背中を預けて、膝を抱きかかえる。
「何で私意地張っちゃったんだろう。ただの勘のくせに……どうしよう」
「春山さんは悪くないよ」
春山がそう言ったので、自分はこう言うべきだと機械のように言った。そこにはこもっていなかった。誰が責任を背負ってくれようとしてもきっと同じ。今は……。
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「もうどうしようもないのかな……どうしようどうしよう……本當にごめんなさい……謝ってもだめだよね」
「……とりあえず今は待つしかないよ」
春山をどうめていいのかも分からないし、その資格もないと凜太は思った。
「夢が覚めたら、馬場院長にこの夢のことを言ってみよう。それまでは……」
「もし何か責任を取らなきゃいけなくなったら私が負うから」
「いや、俺のせいだって」
「違う。私が……私が変だった。私が言ったように草部君はやったんだもん」
「どっちにしろ、俺ならどちらかを殺してた」
「でも、この人が主人格だから……その……えっと……」
「じゃあ、2人で責任取ろう」
息苦しさも無くなって、現実と変わらない夜の澄んだ空気が染み込むようにの中にってくる。冷たいけど心地が良い。だけど頭だけはすっきりしない。
春山は聲や仕草からもあせっているようだったが、凜太がじているのは焦りとはまた違うだった。が締め付けられるとか、背中が熱くなるとか焦りに似ているけど違う。もっとずっと重くて暗い。名もなき絶の。
「春山さん……こんな時に聞くことじゃないかもしれないけどさ。どうして……どうして霊を怖がるがあるのにこのバイトやってんの」
「私は……実はただお金がないから。収の多いバイトやらないと學費も稼げないから。家が貧乏というか。本當にただそれだけ」
春山はすんなり答えた。話し方が考えながらというじでもなかったので本當だと思った。こういう狀況だからこそ隠す気も起きなかったらしい。
「ごめんね。こんな理由で」
「いや、全然謝ることないよ。立派だよ。こっちこそごめん聞いちゃって。にする」
そこから、夢が覚めるまで凜太と春山の會話は無かった。し待てば眠くなってきて、病院の悪夢治療室に意識が戻る。
褒めて出迎えた馬場。笑っていた馬場に凜太と春山はついさっきまで見ていた悪夢がどんなもので、最終的にはどうなったか。あらすじから結末までをすぐに話した。
2人の暗い表を読み取った馬場は真剣な顔でその話を聞いた。
そして、話の終わりに2人は馬場に頭を下げて謝った。
「すみませんでした」
「……仕方なかったんじゃないかな」
すると、馬場は見た目からは想像できないほどに真面目な顔、真面目な聲になって、2人を諭したのだった。
「うん。君たちの話を聞いたじではどうしようもなかったよ。この話は僕が預かるよ。あとは僕に任せなさい」
そんな風にやたらと頼りになるような雰囲気をまとって、凜太と春山の肩を順番に叩いた。
「間違いは誰にでもあるし。まだ間違ったかどうかは分からない。きっと誰がやってもなるようにしかならなかった。今は自分を許せるように考えなさい。責任は僕が取るから。もうバイトの時間は終わりだ。君たちは帰りなさい」
馬場は全く叱ることはしなかった。馬場に促されてみた時計の針は午前3時50分を差していた。
馬場は言い終わると、出口に向かって歩いて行った。
「あ、あとそうだ。最後に草部君。バイトは続けるかい?」
「はい。続けます」
様々な思いを巡らせて、夢から覚める前に出していた答えだった。
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