《高収悪夢治療バイト・未経験者歓迎》第48話 経過

時間は経過した。そしてその時間という概念は凜太の心境を徐々に良い方向に回復させていった。

もしも凜太がバイトを宣言通りさっさとやめてしまった場合を考えていたのか、凜太には4日も休む期間が與えられていた。凜太が馬場に見せていた態度は続けると言った先日のシフトまではやめる気満々のものだった。さすがにあの図々しい男も絶対の自信は無かったららしい。

それならそれで逆に4日の休みではないかもしれないが、凜太にとってはありがたい時間だった。

時間というものは何もせずに過ごしているだけでも人の考え方を変えてしまう。悲しみや怒りなんては特に時間によって薄められていってしまう。時間が解決してくれるとはよく言ったもので、凜太が生きてきた中でまたその言葉を実する時であった。

逆に時間によってより不安になってしまう悩みもこの世にはたくさん存在するだろうし、忘れたくないはずのも時には時間が忘れさせてしまう。そんなこともあるけど、今回の凜太の悩みは時間が薬になるものだった。

何もしていないと言っても、しづつ凜太の考えを変化させることはあった。まずは春山から連絡があったこと。

大學の講義で一緒になることも多かったし、何かのグループトークでメッセージのやり取りをしたことはあって、お互いに連絡先は知っていた。けれど、個人では一度もやり取りしたことが無かった。

そんな近いようで遠い距離が今回の件でまった。

「院長に前の患者さんと會いたいって言ってみたけどダメだった。私はもう忘れることにしたから、草部君もまだ悩んでるなら元気出して。考えたって仕方ないよ」

そんなじのメッセージだった。単純に書いていることを読み解くのなら、勵まされている応援の言葉で、春山が回復したなら自分もと思えた。しかし、凜太は春山もまだ悩んでいるんだなと思ってしまった。無理しているように見えた。凜太の知る春山はそういうの子だった。

しかし、気持ちが楽になったメッセージであることは間違いなかった。自分と同じ気持ちを抱えている人が確かにいる。それが分かった。

あとはどんなメッセージでも春山から自分に送信されたという事実を嬉しく思ってしまった。今までは眺めるだけだった春山のアイコンが自分に向けて文字を出している。

それでも……それでもまだ寢る前に電気を消すと、あの時の絶が蘇ってきて眠れなくなる。

考えたって仕方ない……凜太も出した答えだった。どう考えてもその答えにしか辿り著かない。初めから答えはそうだった。

だから、凜太は今の悪夢治療バイトを続けることにあの日決めた。罪を犯した分、より多くの人を救うとかそんな立派な醫者のようなことがちらりと頭に浮かんだ。そんな大層な志を本気で掲げたわけではないが、きっとあのままやめてしまうとより苦しかった。

バイトを続けてもっとんな悪夢を見て、自分の手で治療出來た人が増えたほうが気持ちが楽になると思った。

だから凜太はまた明日、悪夢治療バイトにむ。

生活リズムがれて、晝夜逆転した凜太が眠る午前5時過ぎのベッドの中。外からは車が走る音が聞こえだした。

睡眠導剤として飲んだアルコール度數の高いチューハイが歯磨きをした後も、ミントと共に口の中に風味を殘す。

凜太はクッションを抱きながら、ほとんど何も考えられなくなった頭で、眠る寸前に「明日からは。明日こそは」と念じた。

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