洋館の中にって1歩進むと後ろの扉は勝手に閉じられた。鍵が閉まる音も聞かせるように暗い空間へ響いてきた。想定と言えば想定。ここから出られなくならなければホラーゲームがり立たない。

迎えたエントランスもおかしなところはなく、一見したところでは誰もがイメージするような洋館の裝だった。天井にはシャンデリアで正面には大きな階段があった。右にも左にも廊下がびている。

床の絨毯も……飾られた花瓶も本そのもの。最新のゲームだからか実際に山奧の洋館にってきてしまったようで何一つ違和がない。

照明なしで壁のロウソクだけがまばらに燈っているエントランスはまあ不気味だ。こんな洋館の奧には行きたくない。普通に怖さをじる。

だけどそれより張を屆けるのは洋館のどこかから聞こえてくる大きな足音だった。ひょっとしたら足音じゃないかもしれないが、規則的な重い音が洋館を右から左へ移しているのは音で分かる。

「桜田さん……この足音近づいてきてませんか」

「……そうだね」

「いいんですか。ここにいて」

「…………」

凜太の聞いているじでは近いうちに足音の主がここから見える2階の廊下から現れそうだった。

なのに桜田は固まったようにそこに立ったままだった。

「あの桜田さん？」

桜田に限ってここに來て怖くなったなんてことはないと思うが逃げなくていいのかと思う。足音から遠ざかるのであれば1階の廊下のほうへ進めそうだ。

桜田がかないまま、重い足音は確かに一歩一歩近づいてきていた。もうそこまで來ているじがする。あと十秒もしないうちにあそこを通り過ぎる。開けている広間のほうをちらりと見るだけでこちらの存在にも気づくだろう。

そこで凜太は前に立つ桜田の正面へ回り込んだ。ゆらめくロウソクのの中で桜田の表が目に映った時、凜太は「こいつ……」と思ってしまった。

のような笑顔で上を見てやがる……。

「桜田さんっ」

「大丈夫。あの足音はたぶん3階。聞きなれてるから分かるの」

振り返って耳を澄ます――。たしかにもう正面に足音は來ているのに何かしらの化けの姿はなかった。

「でもね。他の奴があそこから出てくる」

凜太がもう一度桜田が指差したほうへ振り向くよりも前に音楽が洋館に響いた。その不気味さに一瞬が強張る。

そして目にした二階の階段からは化けが下りてきていた。いくらか數がいるこのゲームでプレイヤーを殺しに來る化けたち。凜太も見たことがある奴がいたが最初に出會ったのは手だけが異様にでかい化けだった。

闇憑き洋館に出てくる化けは一応人の形はしているものの全てが奇形。手が大きい化けはと足が貧相なので移も二足歩行を手で支える形で行う。

手の化けはこちらに向かって4つの足音で素早くこちらに向かってきていた。

「草部君。あいつのこと抱きしめられるかなっ」

「いやちょっと。桜田さんやめて」

どうする時間もないまま桜田は手の化けに向かっていった。手を広げてお互いに全速力でぶつかろうとする――。

次の瞬間あっけなく桜田は敗れた。

最強の桜田があんな化けをどう捌くのかと見ていると、目で追えないくらいの速度で化けの手がのどに刺さった。

桜田の首が引き裂かれて首の骨が出している。衝撃でが飛び散り、桜田の目も今にも零れ落ちそうなほど飛び出した。骨だけで支えられる頭は後方へ90度折れる……。

「え……」