「どうぞあがってください」

「おじゃまします。わあ、男の子の部屋に來るのなんて久しぶりだな」

凜太はもうその一言だけで途方もない幸福を味わった。やっていいのならこの場で両手を使ってガッツポーズを取りたい。

男なら誰もが憧れるかわいい先輩子。後輩男子にとっては手の屆かない高嶺に生えたしい花。そんな尊い存在が今自分の部屋の中にやってきた。

「ここがゲームするスペース？今もやってたんだ偉いね」

「はい。まだほんのりだけでほとんどプレイしてないですけど。基本的な作は分かって、あとは敵の種類とか調べときました」

「ここ座っていい？」

「どうぞどうぞ。どこでも」

一緒に難しい悪夢を治療することになり、それならゲームで一緒に練習したほうがいいだろうということで桜田のほうからどちらかの家に集まろうといがあった。お互いにどちらの家でやっても良かったが軽い話し合いの末、凜太の家で練習することになった。願ってもない夢のような話だった。

同級生よりもし落ち著いた私服の桜田がベッドの上に座る。いつも凜太が寢ているベッドにだ。凜太はもうそれだけで天に向かって勝ちを宣言した。人の先輩が自分のベッドに座った。その事実だけで勝利なのだ。

一応は諸々の準備は滯りなく済ませていて、冷蔵庫にも何種類か飲みがあるのでお菓子と一緒になにか出そうかと思う。しかし後輩の自分がいきなりそんあおもてなし方をすると逆に居心地が悪くなるではとも思う。

「さっそくやろうよ。私も2週目の闇憑き洋館楽しみにしてきたんだ」

「あ、本當ですか。やりましょう。作は桜田さんがやります？」

「いやまずは草部君がやって。練習しなきゃだし。それに誰かがやってるの見てるのも面白そう」

「分かりました」

凜太はさっきまで座っていた椅子に座ってコントローラーを握った。やはりバイトで會う時の何倍も張してしまう。ホラゲーにビビりすぎないようにもしなければならないと気合をれた。

「これってまずは普通に僕の思うようにプレイしていきますか？」

「うん。それでいいんじゃない」

「攻略サイトとか見てサクサクプレイとかはなしでいきます？」

「それだと初見プレイの人の反応を私が楽しめないじゃん。草部君がどうしてもつまった時は私がヒント出すよ」

「ですよね。了解です――」

凜太はそれから1時間くらい畫面だけを見て闇憑き洋館をプレイした。桜田のほうを振り向けなくてゲームにだけひたすら集中した。

序盤の凜太が夢の中でみたままの世界にいる主人公をかして、ゲームオーバーとリトライを繰り返しながらもしづつストーリーを進めていった。

こんなに張するのはゲームが怖いからだろうか……。いや違う、このドキドキは桜田が斜め後ろにいるからだ。いやそれも違うかもしれない。両方だ。

凜太はかつてないほどに心臓の鼓が大きくなっていた。離れている桜田にも音が聞こえてるんじゃないかと思うほど。お化け屋敷効果と呼ばれるものが働いているようで桜田の目を見ることもできない。ただ時折香ってくる斜め後ろからの良い匂いで度々鼓をさらに大きくしていた。

そして、1時間集中して闇憑き洋館をプレイしたことで凜太もようやくこのゲームの大の報がまとまった。