この前と同じように始まった場所は森の中だった。凜太にとってももう見慣れてしまったその森をものの數分で歩いて抜けた。

洋館までたどり著くと、増川と春山は初見時の凜太と同じような反応をした。いかにも不自然で怪しい洋館を前に、これから恐怖が待っていると分かっていながらもそれがどれほどか分からない。だから怖がりながらも洋館にるときに躊躇は無かった。

口の扉では凜太がドアノブを握った。凜太はもうこの先に何がいるか知っていた。

たぶん、この夢にる中で今回が1番怖い。恐怖をじる。中途半端に知識を付けてしまっているから、それから完璧に逃げ切る自信が無いから。

増川と春山のことはおそらく守ってあげられないだろう。何を思ったか春山もここに來てしまったが申し訳ない。自分の目的を果たすのにいっぱいだ。やれるだけのことはやるけど……。

「これ……すごいね。このゲームちらっと見たことあるけど完全に再現されてるじゃん」

「はい」

「……で、これが化けの足音か」

「ですね。こっからはなるべく喋らないでください。僕だけが聲を出して行先を言うのでし後ろに付いてきてください」

「了解」

凜太は言った後に固唾を飲んだ。その場まで來たらける印象はまるで違っていた。ゲームでは慣れてきた風景なので余裕を持てると思ったが、実際にじる空気は畫面の向こうのものと比較にならないほどじめじめしていて重い。

「春山さんも大丈夫？」

春山はもう聲を出す余裕もないようで、ただ數回頷いた。この場でこの子をどこまで守ってやれるやら。

「まずは階段を上って左に」

凜太は決めていたルート通りに洋館を進み始めた。まずは敵になるべく遭遇しないように。

廊下もいくつもある部屋も電気が點いていたり付いていなっかたりする。明るい部屋があるからこそ暗い廊下や弱弱しい明かりの怖さが際立つ。そして明るい部屋にも容赦なく化けが侵する場合がある。

凜太はある部屋にった時に、奧に並んだ棚の右から二番目の真ん中の引き出しを開けた。一つだけの付いた手袋が置かれている棚の中にはストーリーを次の段階に進めるのに重要な鍵がある。

そしてそれを取って振り返ると……そこには今までは無かった「見ている」という文字が壁に無數に浮かび上がってきていて、り口の近くで寢ていた白い化けが目だけを開いてこちらをじっと見る。

まず確認したかった項目はゲームがどれだけ忠実に再現されているか。攻略に必要な道はゲームと同じ場所にあるか、條件を満たした時に起こる現象は同じか……。

確認の為に取った最初の行だけでは確信は持てないが、白い化けの見開く大きな目を見た凜太は再現度を信用してもいいと思った。

さらにその後、不快な接敵BGMが流れ始めて部屋にランダムで化けがってくる。

「2人ともこっちへ」

初見では気づきにくいがその部屋にはを隠す判定になる場所があった。3人では狹いベッドの下で、化けの足音とBGMが靜かになるのを待つ。

床につく手から汗が滲んできて、隣に見えないように目をつぶる。すぐには向き合う勇気が出ないが1度は追いかけられて確かめたいことがある。

「もしあれだったら、2人はここに殘っててもいいですよ。序盤ではここは結構安全な場所なので」

そう言ってベッドから出たが増川と春山も一緒にベッドから出た。2人から見れば凜太は頼もしく見えているのだろうが、凜太はその段階でかなり神に來ていた。

次に目指した部屋への道の途中で思いがけない接敵をする。BGMは敵が近いほど大きくなるがいきなりの大音量。し特殊なその敵は突然後ろに出現する。

「2人とも。後ろに何かいるじするけど絶対に振り向かないで――」

「え」

前を向いたまま急いで言ったが、その後すぐに増川の悲鳴とが飛び散るような音が後ろから聞こえた。