考えてみれば確かに俺はかっこよかったんじゃなかろうか。化けたちに襲われる夢の中で、手を引いて一緒に逃げてくれる男なんて春山の気持ちになるとをしてもなんら不自然じゃない。

今まで春山が自分のことを好きな可能なんて考えてこなかったけど気付かぬうちに手にしていた。

凜太は洋館のある鍵のかかった扉で、さっき手した鍵を使った。大きな扉のその先は大広間で、映畫のようにダンスパーティーが開かれていそうなお灑落で広い空間がある。

立派なシャンデリアがあるのに明かりが無くて暗いその部屋では、真ん中に見知らぬが座り込んでいて、そのがプレイヤーに気づいて立ち上がると赤黒い球が部屋にやってくる。

球は、プレイヤーと同じく洋館に迷い込んでしまったらしいに侵して化けへと姿を変える。それが最初のボスのような立ち位置にいる化けだった。

全が大きくなり、特に肩が大化する。肩の化けとなったはもの凄く奇抜な肩パットを仕込んでいるような系になって、何故か腰に手を當てモデル歩きでプレイヤーを襲ってくるようになる。

……気持ちがハイになっていなければ、その姿を見て心が折れていたかもしれない。けれど凜太はボスの攻略法通り完璧にをかせた。ゲームでやるよりもスムーズにその化けを処理してしまった。

さらに凜太の快進撃は続いた。元々の予定では最初のボスを倒すくらいまで行けば悪夢の下調べとしては十分だと考えていたがをかすのが楽しくなってしまってさらに奧へと進む。

どうせ20分くらいで現実に戻るのなら、それまで進めるところまで進んでしまおう。それで何か気づくこともあるかもしれない。

確認しておきたかった項目は大確認出來て、あとは馬場が裏技を提案する前から考えていたこの夢の中と現実とのタイムラグ……何時間攻略に使える時間があるのかということ。

それに加えて、もし1度殺されて夢から覚めてしまった場合にゲームの進行狀況はリセットされるのかということ。これの可否で難易度は変わるがどちらなのか。この2つだった。どちらも1度馬場に起こしてもらわないと確認できない。

そろそろでは20分が経つんじゃないかという時にも凜太は化けたちを引き連れて廊下を走っていた。なんだかもう余裕だと思えてしまう。こんなもんなら來週には絶対にクリアできる。

それよりも春山が――ずっと思い続けていた春山が自分にあんなことを言った。この後に夢から覚めたらどんな顔をして會って、どんなことを言おうか。

「うおおお。春山さんしてるよっ。天使っ。最高っ。結婚しようっ。」

次の瞬間、調子に乗って廊下をノンストップで右に左に曲がり続けていた凜太はついに化けと間近でぶつかって、ツッコミをれられるように頭が吹き飛ぶほどの張り手をくらった。