あなたは今、幸せですか？――僕は幸せです。

凜太はホラゲーの練習をした。我を忘れて、全ての神経を注いで。

その1週間の間、凜太は頭の中で常に壯大なオーケストラがかかっていた。比喩ではなく本當に聞こえた。超一流の演奏者たちがオーチャードホールで奏でているような音が。

この世の全てが明るく見えた。そして、全てが思い通りになるように思えた。

夜中、食料を調達にコンビニへ歩いて出かけた時に夜だからといってやたらいちゃついているカップルを見かけても勝者の余裕は崩れなかった。

「ああ、お前たちはそこなんだ。へえ……そこで満足なんだ」心の中でそんな言葉を同じ大學生くらいのカップルに渡した。勝手にはぐれ者通しで際を始めたような、ではなく彼氏彼がいる自分が好きそうだと決めつけて酒とつまみを手に取る。

桜田との2度目の部屋で2人きり練習の際も、凜太は前回より強気だった。桜田の家に招かれた今回のほうが自分の家よりもずっと張するはずだがしなかった。超がつく人であるはずの桜田を所詮第二志だという思いがそうさせていた。

凜太のシフトの日に例の患者が突然來訪してしまい、もう1度悪夢にった件もあり、いつの間にか凜太が優位に立つような形で練習は進んだ。のパワーが発した人間の長速度は凄まじく、闇憑き洋館のプレイの腕や知識も凜太のほうが上になっていた。

自分が悪夢と練習で學んだ知識や経験を桜田と共有して迫る約束の治療當日に備えていった。

「同じホラーゲームをやり続けてると次第に敵が全く怖くなくなってくるってあるあるですよね」

「あるあるだね。私も本當に一番最初にやったようなホラーゲームではびびってたな」

「桜田さんでも怖い時があったんすか」

「そりゃそうだよ。稚園児が幽霊を怖がらなかったら異常だよ。小學生になったら怖くなくなったけどね」

「へー。僕もようやくこのゲームの敵が全く怖くなくなってきました。悪夢にった時はやっぱり怖かったんですけど、次はたぶんリアルに見ても怖がらずにけます」

「よく見ると可いよね。抱きしめたいくらい」

さすがにかわいいとは思えなかったが凜太はその言葉に同意した。

……それとなく希して桜田の部屋の風呂にもらせてもらったりなんかもした。さすがにこれを提案する時は張したが、あっさりと許可はもらえた。

桜田がいつも使っている浴室で、桜田がいつも使っている歯ブラシやカミソリに甘い香り……そして落ちているに興したのは言うまでもない。

また朝まで一緒に時間を共にして、桜田がおすすめのホラー映畫なんかも隣に座ってポップコーンを食べながら見た……。