桜田と行う闇憑き洋館の悪夢治療當日、自宅にいる凜太は1人で笑っていた。何もなくても笑みを抑えられなかった。

勝ちを確信していたからだ。そしてその先にある自分との約束、無事に治療を終えられたら桜田をちゃんとしたデートにう。

昨日の休みの日も一心不にやり続けた闇憑き洋館のクリアタイムはRTA畫と比較したところ既に凜太が上だった。その気になった凜太がネット上で闇憑き洋館のRTAを配信することがあれば、ランカーとしてその名を売ることができてしまう。

しかし、ひっそりと達してしまったその記録は凜太にとってどうでもいいものだった。

人気のゲームでRTAを楽しむものとしても質が高いのでRTA走者はかなり多いらしい。検索すればすぐに誰かしらプレイ中の配信者が見つかる。それを見ても「ゲームでも勝ってしまったか」という想だった。

――家を出る前に食事の支度をしていると、電子レンジにれようとした冷凍食品が既にっていたということがあった。袋ごと溫められる冷凍食品を気づかぬうちに2個れようとしていた。

浮かれすぎてぼけていたのか、凜太は前にれた記憶が全くなかった。

同じようなことがもう1つあった。今度は逆に収納からしっかり出した記憶がある著替えがどこかに消えてしまって、探してみればまだ収納にったままの服が見つかった。

まるで夢を見ているようにじる不思議な出來事だった。凜太はそんな全く逆の記憶違いは初めての経験だった。

しかし、なぜだか凜太はこれまた夢のように自然とその現象をけれることができた。夢の中で人は不自然を當たり前に行うことがある。ああ、こういうものかと。

夜道を自転車で進んでいると、すれ違う歩行者が何人か道端で倒れた。突然に強烈な眠気を催したように、すっと力が抜けたみたいだった。

何でいきなり道端で寢てしまうんだよ。うっかり轢き殺してしまったらシャレにならんだろ……。

道路に大の字で倒れ伏したり、植木へ頭から突っ込んだ人たちを見た時に……凜太も眠くなった。目をこすりながら倒れている人をタイヤで轢かないように気を付けて自転車を漕いだ。

眠りを求めた頭がくらくらする。たくさんのを浴びた日に思いっきり酒を飲んだくらいに……でも、とまと睡眠治療クリニックに著いた時にはいつの間にやら眠気は無くなっていた。

ついにやってきた勝負の時、凜太は自転車を止めてからはのストレッチをしながら歩いた。

「おはようございまーす」

裏口の扉を開けば、やる気が獨り歩きして想像以上の聲が廊下に響き渡った。