《高収悪夢治療バイト・未経験者歓迎》第90話 眠っていたはずの

……は腕を上げた。

そうすると、桜田が宙に浮いた。

首から天井へ上がっていく桜田は苦しそうだった。見えない明な手に倉をつかまれているように見えた。

……は軽く手を払った。

そうすると、宙に浮いた桜田がゆらゆらと右に左に揺れた。

無邪気に遊ばれる人形のようにく桜田のは不思議で、ただ珍しく見えた。それを人間だと認識したくなかったのかもしれない。

……はしばらく桜田を使って遊んだ。手だけで他人のを自在にった。

が怪し気に指をかせば、桜田のは回転したり逆さになったりした。人間のがどこまで痛みに耐えられるか実験しているかのように、ゆっくりと骨が折れるまで足を開かせたり、を山折り谷折りにした。

當然それ相応に聞いたことが無い痛みの音も聞こえてきて……桜田が恐怖で発する悲鳴もそこで初めて聞いた。

桜田でもあんな聲を出すのだと、凜太はその一部始終を他人事のように眺めていた。立ち盡くしたまま傍観した。

眠かったのだ。凄く。座ろうかとも思った……。

いつも夢を見ている時と同じような覚。その気になれば自力でける夢の中だった。

……やがては桜田をる手を暴にかした。

軽く手をかすだけで壊れた桜田のが、折られ過ぎてついに腰の所で真っ二つになった時だった。それ以上はもうどのように壊れていったのかよく分からなかった。

次は自分なんだろうな。これも映畫の登場人を見ているように思った。

……は歩みを止めなかった。

桜田を殺したことに関して特に反応を見せることなく、當たり前にドアから凜太のほうへ歩いた。

自分の夢よりは幾分か意識を保っていられる空間で、凜太は初めての姿をしっかりと目に映した。

自分が見る悪夢のだとは直で分かった。人形のようなだった。恐ろしさというものは見た目には表れていなくて、無を形づけたような。いつも意味の分からないうちに殺されているので怖いイメージが強かったけれど、一見普通のだった。

ただ、目のが全く無くて引き込まれそうなほど黒い。

電波が悪くて時折ノイズが走る映像のように見える視界の中、凜太が咄嗟に意識を取り戻して走れたのはが凜太のすぐ近くまで來てれようとした時だった。

その時凜太は、れられるとここで死んでも現実に戻れないような気がした。朦朧とする意識の中でも、リアルな死をじ取ると考えるよりも先にいた。

を反転させて走り出す。遅れて意識が目覚めると、凜太もかつてないほどの恐怖に包まれた。

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