《指風鈴連続殺人事件 ~するカナリアと獄の日記帳~》2001年7月10日(火)

今日は友達とカラオケに行った。

メンバーはいつもの5人……。

堂若菜

袴田《はかまだ》みなも

山本《やまもと》キキラ

長谷川幸平《はせがわこうへい》 ←バカ

この5人でひとつのグループ。

袴田みなもは、ショートカットの若菜とは対照的な、長い黒髪が似合っているお嬢様っぽいの子。禮儀正しい。ピアノとかバイオリンとかできるらしい。なんか父親が県の言義員をやってるとかで、それってスゲーってみんなから言われてるクラスの中心で學級委員。人系。かなり可い(若菜ほどじゃねえけど)。

山本キキラは、髪をちょっと茶に染めてるなんかギャルっちいやつ。でも話してみたら案外普通のいいヤツだった子。目が一重なのを気にしてる。俺も一重だし気持ちは分かる。髪のがちょいクセっなのも俺と同じ。ちょい日焼けしてるのがますますギャルっぽいけど笑うとそこそこ可い(若菜に比べりゃ負けるけど)。

長谷川はただのエロなのでどうでもいい。

ごめん噓。俺とエロ本仲間。まあいいやつ。

このメンバーでカラオケに行った。

俺たちの通うM高校はクソ田舎にある。海岸のすぐ裏手にあるからの香りがプンプン漂ってきて、それはいいけど近くにコンビニさえない。だからみんなで放課後、チャリを20分も飛ばして國道沿いまで行ってカラオケボックスにった。平日晝だから安かった。

俺ら5人でカラオケに行くと、キキラと長谷川が大はしゃぎして、俺とみなもがそれに合わせて、若菜はマイペースにアニソンとか歌うのがお約束。それも最近のアニソンじゃなくて、俺らが小學生のころにやってたアニメのオープニングとかあのへん。みんなは「懐かしい!」って言うんだけど、俺は馬鹿だから、

「若菜、お前、たまには普通の邦楽を歌えよ」

なんてつい言っちゃう。

そしたら若菜は、しょんぼりしたじになって、

「だってわたし、普通の曲、あんまり知らないもん」

って返してくるんだよ。

「佑ちゃんだって、昔はアニメの曲ばかり歌ってたでしょ? なんでいまは歌わないのー?」

「昔って、そりゃ小學生のころの話だろ」

俺と若菜は母親同士が友達だ。小學生のころは、俺と若菜と、俺の母親と若菜の母親の4人でよくカラオケに行ったもんだ。そのころは確かにアニメのオープニング歌ってたなあ。だってガキだったし。

「もう俺ら、高1よ? J-POP歌おうぜ。へーへーへーとか歌番組見てる? マジ熱いから見ろって」

なんて、言っちまった。

カッコつけてる俺。本當はこんなこと、あんまり思ってない。

若菜は若菜のままでいい。アニソンでもなんでも歌って、のほほんと笑っているのが若菜らしい。こうして日記書いてたらそう思うんだけど。

「へーへーへーって、なんチャンネルだっけ……。月曜日にやってるやつだよね? 見たことないよ~」

「じゃあ次のやつ見ろよ。決定な。ちゃんと見たら想くれよ」

想……言わなかったらどうなるの?」

「もうカラオケわない。4人で行く。若菜は置いてく」

「ん~~~~、なんでそんな意地悪言うの~~~~。仲間外れにしないで~~~~……」

頼んだコーラをちゅーちゅー飲みながら、若菜は目を細めて全を左右に揺らした。これは抗議をしているときの若菜のくせなんだ。

それと同時に、さみしいと思っているときのサインでもある。もうここまでくると俺も、やりすぎたって思ったから、

「うそうそ。冗談だって」

そう言いながら、若菜の肩をぽんぽんと叩いた。

そしたら若菜はにっこり笑って、

「よかった~~~~。次もちゃんと連れていってね~~」

って、間延びした聲で言った。

こういう仕草のひとつひとつが、やっぱり可いなって思った。

そろそろ眠い。日記はこれまで。

だけど今夜も夢に、若菜が出てきそうだな。

(筆者注・袴田みなもについて記した『言義員』の部分は、義、の橫に無理やり『言』を付け加えたように書かれてある。最初は義員と書いたあと、誤字に気付いて訂正したものか?)

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