《指風鈴連続殺人事件 ~するカナリアと獄の日記帳~》2001年7月16日(月)

「これだ。きっとそうだ。すごいよ、天ヶ瀬くん!」

晝休み、地下室へのり口らしき階段を安愚楽に教えたら、やつはめっちゃ興していた。

ここを、安愚楽に教えるかどうかずいぶん迷ったが、しかし俺にもやはり好奇心はあったのだ。

元病院の地下室。地下への階段。中はどうなっているんだろう? 知りたい、見てみたい……。

「この下に、病院の地下室があるの? なんか怖いな……」

「オレは別の意味で恐ろしいぜ。不審者っつーか、変なやつとかり込んでねえだろうな」

若菜と長谷川が言った。

この場には、俺と安愚楽のほか、いつものメンバーが集合していたのだ。

長谷川の発言は、いつものヤツにそぐわずビビリだったけど……ぶっちゃけそれは俺も危懼していたところだ。

はるか昔の殺人や、幽霊とか祟りとかそういうのも気味悪いんだけど、一番怖いのは、誰かこの地下にり込んだりしてねえかってこと。なにより怖いのはけっきょく現実の人間だと俺は思うから。

だけど、それは杞憂だった。

俺たち6人で、薄汚れたコンクリートの階段を降りていったら、そこには分厚い鉄のドアがあり、そしてしっかりと施錠されていたからだ。

「當然といえば當然か。……鍵さえあれば、中にれそうだけどね」

「別にらなくていいじゃん。ねえ、もう帰ろうよ。ここ汚いしジメジメしてて嫌い」

なおもドアを調べる安愚楽に対して、キキラはいかにも不愉快そうに周囲を見回しながら言った。

確かに地下へと向かう階段は、古くてカビ臭くて汚い。の子が好みそうなところじゃない。若菜もあまり楽しそうじゃなかった。

ただ、子3人の中でひとりだけ。――そう、みなもだけは、安愚楽と一緒にドアを丹念に調べてまわり、大きな瞳を何度もまばたきさせていた。

「このドア、なんとか開かないかしら……。興味深いわ……。安愚楽くんの言う通り、本當にそんな病院が……地下室があるのなら……」

意外なほど乗り気になっているみなもを、若菜とキキラ、そして長谷川はし呆れ顔で見つめていた。

俺は――だけど俺も、心はみなもや安愚楽といっしょだった。この扉の向こう側、どうなっているんだろう? 見てみたい……。

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