《指風鈴連続殺人事件 ~するカナリアと獄の日記帳~》2001年8月18日(土)

長谷川が殺されてから、俺はずっと家にいた。

新聞やテレビは見ていたけれど、犯人がまだ見つかっていないこと以外、これといった収穫はなく、それどころかM高校の事件についてはほとんど報道されなくなっていった。報じられるのは、総理大臣が靖國神社を參拝した話題ばかりだ。母親に聞いたけど、そもそも今回の事件はあまりニュースになっていないっぽい。九州の田舎で起きた事件なんて、みんな興味がないってか……。

あれから警察が、何度か俺に事聴取に來た。

俺としては知っていることをことごとく教えたつもり。

だけど犯人はまだ見つからないのか。無能な警察め。なにをやっているんだ……。

俺はもう、なにもかもやる気を失っていた。仲間と連絡もとっていなかった。俺から誰かに電話をかけることもなかったし、日中、家の電話が鳴ってもずっと無視していた。我ながらけないが、正直俺は、恐怖のあまり行する気力を失っていた。

勇気といってもいい。若菜を殺されたときの怒りと悲しみは、いまでもまだ持ち続けているけれど、それ以上に、次から次へと続く不思議な事態に、俺自神は完全に參ってしまっていたのだ。だから俺は、もうこの2週間、日記もつけず、ただ自宅に引きこもり、ときどきテレビを見るほかは、ぼんやりと天井を眺めていたり、ゲームをしたりしかしていなかった。

しかし天井も気悪い。

夜、目を覚ますと、天井に死りついているって夢を見た。

その死は若菜だったり長谷川だったりした。若菜たちは俺を恨んでいるようだった。

――佑ちゃん、どうして犯人を見つけてくれないの?

――天ヶ瀬、オレたちが殺されたことは、もうどうでもいいのかよ?

そう、責められているようだった。

だけど、仕方がないだろ。俺になにができるっていうんだ。犯人も事件の真相も、想像さえつかないんだから……。

もう、このままずっと家にいよう。それが安心だ。

母親もそう言っている。「外に出たらきっと危ない。若菜ちゃんみたいになっちゃうんじゃないか。あの學校はちょっとおかしい。いまのうちに、転校も考えておいたほうがいいと思う」って。

うちの家計が苦しいのは知っている。

母子家庭だし、父親は養育費をろくに払わずにいなくなってしまったからだ。

いまでは、どこかのと再婚して、そのとの間に娘まで作ったらしい。つまり俺からすると、母親違いの妹が、世界のどこかにいるわけだが……。正直、そこらへんはどうでもいい。

とにかく。

生活が苦しい天ヶ瀬家だ。

あまり引っ越しとか転校とかはしたくないんだけど。

それでも、こんな事件が連続して起きているんだ。

本心だけ言えば、逃げたい。この町から、この學校から。

若菜、ごめん。

長谷川、すまん。

だけど俺、もう、怖くて仕方がないよ。

眠い。

寢て起きたら、すべてなにもかも夢だったってことにならないかな。

若菜はちゃんと生きていて、長谷川もバッチリ無事で、みなももキキラもいて、安愚楽も……まあいていいや。

みんなで學校に通ってさ、勉強したり遊んだり、またビーチバレーしたり……。あのころに戻れないのかな……。

悔しい……。

悲しい……。

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