《指風鈴連続殺人事件 ~するカナリアと獄の日記帳~》2001年7月9日(月)

佑ちゃんが今日から日記をつけ始めたらしい。

小學生のころ、夏休みの絵日記もろくに書けなくて、先生に叱られていたひとなのに、続くのかなーって思った。

でも、日記っていいかも。ちょっと前、部屋の掃除をしていたら、小學生のときのノートが出てきた。もうそれだけで懐かしくて、しばらく読みふけっちゃった。

これまで、日記を書くひとの気持ちはよくわかんなかったけど、たぶんそういうじなんだと思う。

何年か経ったあとに読み返したら、すごく懐かしくて幸せな気分になれるもの。それが日記。

だから、佑ちゃんのマネをして、わたしも今日から日記をつけてみようって思う。

こっちも、日記……何日続くかわかんないけど。

夏休みの絵日記、わたしだってほとんど続かなくて、先生に怒られたもん。

佑ちゃんといっしょに、ふたりでどなられて、廊下に立たされたんだよね。佑ちゃんはもう忘れてるみたいだけど、わたしは覚えてるよ。

なんか佑ちゃんのことばっかりだなー……。

でも仕方ナイナイ。だってわたし、佑ちゃんのこと、好きだから……。

佑ちゃんはとってもかっこいい。

春にあった育祭でも活躍していたスポーツマン。

うちの育祭には部活対抗徒競走《ぶかつどうたいこうときょうそう》っていうのがあるんだけど、これはサッカー部やバスケ部はドリブルをしながら、野球部は素振りをしながら、剣道部は刀(本らしい!)で居合をしながら走るっていう変な競技。

それで、その競技に佑ちゃんはなんと帰宅部代表で出場しました。後ろ向きになりながら走る、つまりムーンウォークで走るのが帰宅部に課せられた走り方なんだけど。

だけど佑ちゃんはそれで、運部のひとたちを破って1位になったのです! すごいすごい!

あのときはわたし、佑ちゃんをいっそう好きになりました!

だって、すごくすごく、ステキで、かっこよかったから……!

……むむむ。

初日から恥ずかしい日記になっちゃった。

毎日こんなじになるのかなー。

んんんー。でもそれもいいかも?

わたしが思ったことや験したことを、ありのままに書いていこう! それが一番だよね、うん!

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