《指風鈴連続殺人事件 ~するカナリアと獄の日記帳~》2001年7月14日(土)

今日はビックリ。

お晝ご飯を食べたあと、筑線を使って姪浜まで出かけたら、そこで佑ちゃんとバッタリ會ったの!

そもそもわたしが姪浜まで出かけた理由は、を頑張ろうと思って、そのためにはちょっとオシャレしてみようかなって、服を買いに來たんだよね。本當なら天神まで行ったほうがいいんだけど、親ナシであそこまで行くのはちょっと怖い……。だから姪浜止まり。これでも勇気を出したほうですよ?

だけど、まさかそこで佑ちゃんと出會うなんて。頑張っているわたしに神様がご褒をくれたみたい。――服を買いに來た、とは、なんだか照れくさくて言えなかったけれど。

ところで今日は、會っただけでは終わりませんでした。

ななな、なんと! 佑ちゃんがわたしを、喫茶店にってくれたのです!

佑ちゃん、なんかちょっと照れたじに笑いながら、

「腹減ってねえか? パフェでも食べにいかんか?」

みたいにってきたの!

どどど、どうしよう。そのときわたしの心臓はバクバク。

まあ、ふたりでごはんを食べたことはこれまで何度もあったんだけど、それはせいぜい學校帰りのラーメンくらいだった。それでも充分嬉しかったけれど。

それなのに今日は、喫茶店。カフェ。

うわーーーーーなんかデートみたい。恥ずかしい! たいへん!

いま思い出しても顔が真っ赤っかになります……。

斷るわけもなく、わたしは佑ちゃんと駅前の喫茶店にりました。

すっごくオシャレで、大人がるようなお店。こんなところ初めて。ファミレスじゃないんだよ。喫茶店っていうかカフェですよ。でも店の中にはわたしとあんまり変わらない年のの子が、彼氏なのか兄弟なのか分からないけど(たぶん彼氏だよね?)、やっぱり若い男の子とふたりで仲良さそうにケーキとか食べてた。みんないつの間に、こういう店にるようになるんだろう。すごいよねー。

それから、わたしは張しながら店員さんにいちごパフェを頼んだ。

佑ちゃんは、なんかいきなりコーヒーとか注文……。

前はコーヒー、まずいって言ってなかったっけ。

ファーストフードとかいったら、いつもコーラのくせに。今回はなにゆえ?

「佑ちゃん、コーヒーとか飲めるようになったの?」

尋ねたら、佑ちゃんはニヤッと笑って答えた。

「ときどきな。あの苦みが最近、好きになったんだ」

「びっくり。佑ちゃんはコーラ専門だと思ってた」

「まあ中學まではな。いや、いまでも好きは好きだけど」

へえ……意外。

佑ちゃんといえばコーラだったのに。それがコーヒーだなんて。むむむ。

あやしい。

よく見ると、佑ちゃん、わたしと目を合わせてくれない。

キョロキョロと落ち著きがない。……そこでピンときた。

これは佑ちゃんが、噓をついているときのクセなのだ。

たぶん、佑ちゃん、カッコつけてるな。

ふだんコーヒーなんか飲まないくせに、自分はもう大人なんだってフリをしてるんだな~?

そう気付いたわたしは、ニヤニヤと笑って言ってみた。

「そんなにコーヒーが好きなら、大盛りにしてもいいんじゃない? わたしがおごるから」

そう言うと、佑ちゃんはビックリしたみたいに目を見開いた。わかりやすい。

そして、わたしから骨に目をそらしながら、

「いや、そこまでは、しなくていい」

そんなふうに言った。

「どうして?」

「どうしても」

「……はあ」

なんでそこでカッコつけちゃうかなあ。

昔からそうなんだよね。佑ちゃんときどき、背びするっていうか、カッコつけちゃうっていうか。

正直、そこだけは佑ちゃん、なおしたほうがいいところだよ。カッコつけても、いいことなんかないのに。っていうかわたしの前でカッコなんかつけなくてもいいのに。

「佑ちゃん、本音を言ってごら~ん? ほらお姉さんに言ってみな~」

わたしは、あえて意地悪に言ってみた!

「言わなきゃ、本當にコーヒー大盛りにしちゃうぞ! すみませーん、店員さん。ちょっといいですか~」

わたしは小聲で、店員さんを呼ぶようなマネをしてみた。

本當に來たら張しちゃうから、絶対に店員さんが來ないような聲で……。

すると佑ちゃんは、すぐにペコッと頭を下げたのだ。

「ごめんなさい、負けました。ちょっとカッコつけてました」

やっぱり。

「ほれみろぉ~。どうしてそんなにカッコつけちゃうかな~」

「……よく見抜いたな。俺が本當はそんなにコーヒー好きじゃないって」

「分かるよ~。佑ちゃんのことなら、わたしはなんでもお見通しなのだ~」

「うん……。そ、そうだよなあ……」

佑ちゃんは、照れたように笑った。

それを見て、わたしも笑って言った。

「わたしの前で、カッコなんかつけなくっていいのに」

それはわたしの本音。

わたしはありのままの佑ちゃんが大好きです。

カッコなんかつけないで、そのままでいてくれたら、それだけで嬉しい。

そしてできるなら、ずっとわたしの側にいてくれたら、もう他にはなにもまないよ。

それからコーヒーとパフェが運ばれてきた。

佑ちゃんはやっぱりコーヒーが苦手らしく、苦い苦いって言いながら飲んでた。その顔が面白くて、わたしは笑っちゃったけど……。

でも、ちょっとかわいそうでもあった。せっかく姪浜まで來て喫茶店にってるのに、嫌いなものを飲むなんて。

「佑ちゃん、後悔してる? コーヒーなんか頼むんじゃなかったぁ、って思ってる? パフェにすればよかったって思ってる……?」

しな」

「本音を言いなさい」

「かなり後悔してる」

「素直でよろしい!」

わたしはそう言って、それじゃパフェを分けてあげよっかなーと思ってから……。

その瞬間、我ながらドキッとすることを考えついてしまった。なんて脳みそだろう。まさか、まさか、そんなことを思いつくなんて。は、はしたない……。

でも、わたしは昨日決めたはず。

もうちょっと勇気を出して、を頑張ってみようって。

だから、わたし。……自分のスプーンに、パフェをのせて、佑ちゃんに食べさせてあげようとした。

「はい、あーん……」

わわわ。

どうしよう、どうしよう。

なんだか、カップルみたい。

わたし、なんでこんなことしてるんだろう。

佑ちゃん、馬鹿だって思ってないかな? 嫌だって思っていないかな?

気付いているよね。わたしのスプーンでこんなことするなんて。これはつまり、その、間接キス……。

ぱくっ。

佑ちゃん、食べちゃった。

わたしの使ったスプーンで、わたしの食べかけのパフェを。食べちゃった。

「お、おいしい?」

わたしは心、ドキドキしまくり。

心臓が破裂しそうになりながら、尋ねたのです。

……だけど。

佑ちゃんは「うん」なんて、ぶっきらぼうに答えるだけ。

こっちは張で死にそうになりながら、パフェをあげたのに。

もうちょっと、嬉しいとか照れるとか、してくれていいのに。ちょっとだけ悲しくなったので、わたしはおどけるしかなかった。

「これ以上は、もうあげないよ? わたしのわたしの!」

パフェを、ぱくぱく食べた。

なんだか酸っぱい気がした。

頑張って、あーんってしたのになあ。

佑ちゃん、全然、なんとも、思わなかったのかなあ。

わたしはそこで、チラッと佑ちゃんのほうを見てみた。

佑ちゃんは、なんか、じーっとわたしのほうを見てる。

ううう。なんで見てるんですか。わたしのこと、馬鹿みたいって思ってるのかなあ。いつまでも子供みたいって思ってるのかなあ。わからな

(筆者注・ページ終盤が破られており、わからな、以降の文章は不明)

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