《指風鈴連続殺人事件 ~するカナリアと獄の日記帳~》2001年7月17日(火) 前半

晝休み、安愚楽くんが、

「地下室へのり口が、もうひとつあったかもしれない」

「學校の東側にある雑木林の中に、が見つかった」

なんて言い出した。

そしてその後、みんなでを見に行くことになった。

は、思ったよりも大きい。人間ひとりが立ったままっていけそうなじ。

地下室へのり口というより工事現場の出り口みたいだけど……。

やがてを眺めていた安愚楽くんが言った。

「どうだい、みんな。懐中電燈とかをちゃんと用意してさ、このの奧を、ちょっと冒険してみないかい?」

そのセリフに、ハセガワくんとキキラちゃんは骨に嫌そうな反応を見せた。

こんなの中にわざわざろうだなんて、確かに好きだと思う。

わたしもそこまでりたくない。が好きとか嫌いとかいうより、単純に、なんだか怖い。

だってこのがもし、本當に地下の病院跡地へのり口なら、その先は、人が殺された場所なんだから。

だけど佑ちゃんは、の奧に、ちょっと興味があるみたい。

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それに、みなもちゃんも安愚楽くんの言うことに賛同した。

「なんだか楽しそう。私、こういうのやってみたかったの」

みなもちゃんは、なんだかニヤニヤしていた。

地下室のを知りたくて仕方がないってじ。

こうなると、だんだん場の雰囲気が冒険しようってじになってきた。佑ちゃんも、目がなんだかイキイキしているし。……こうなったら、仕方がない。

「佑ちゃんが行くなら、行ってもいいけど」

それはある程度、本音だったと思う。

それがどこであろうと、佑ちゃんが行きたい場所なら、わたしもついていきたいから。

やがてキキラちゃんとハセガワくんも行くことに賛して、明日の放課後、の中に冒険に行くことが決定した。

正直、なんだか嫌な予もするし、わたしはいまでもあまり乗り気じゃないけれど……。でもみんな、もう行こうってことになっちゃったし。いまさら嫌とは言えないよ。ここで空気を崩して、みんなに嫌われたくないもん。

佑ちゃんはもちろん、みなもちゃんもキキラちゃんもハセガワくんも、みんなすごくいいひとたち。大好き。素敵な仲間だって思ってる。

冒険に行くことが決定したあと、みんなで海に行ってビーチバレーをしたんだけど、それだってすっごく楽しかった。なんだか青春ーっ、ってじがした。みんな最高の友達だって思った。……だけどわたし、暗い子だ。いまでもときどき、小學生のときみたいにまたいじめられないかって不安になる。まわりに嫌われないかって思うと、怖くて仕方がないんだ。自分でも嫌になる……。

だけど。

からの帰り道、佑ちゃんが言った。

「そういえば明日の冒険さ、あのの中がどうなってるか分からねえじゃん。だからさ、集合場所を決めとこうぜ。もしの中で、俺たち仲間同士が離れ離れになっちまったら、あの砂浜にまた集合しよう」

その言葉にみんながうなずく。

わたしもうなずいた。……このとき、なんだかとてもホッとした。

仲間同士。いい言葉。ありきたりだけど、誰かに『仲間』って言ってもらえると、本當に嬉しいんだ。

佑ちゃん、ありがとう。

わたしがさみしいなって気持ちになったとき、わたしを助けてくれるのは、いつも佑ちゃんだったね。

最高のなじみ。素敵な友達で、仲間。それが佑ちゃん。……でもわたしは、もっと佑ちゃんと仲良くなりたい。大好きだって言い合える関係になりたいんだ。

ところで放課後。

わたしとみなもちゃんは、予定通り、ふたりで地元の図書館に向かった。

行く途中、話題は、あの地下室のドアとのことになる。

「でもあのドアもも、本當に古そうだったね。……戦前のものかどうかは分からないけど」

「それを調べてみようじゃない。結果が分かったら、明日、みんなに報告したらいいわ」

さてそれから図書館に到著。

図書館はけっこう大きくて、本は何千冊も何萬冊もありそう。

窓はひとつしかなく、しかもカーテンがかかっていて、外かららない仕組みになっているから(本を日焼けから守るためらしいけど)、薄暗いじなのが、ちょっとニガテなんだけど……。逆にみなもちゃんはこういうところが好きらしく、本人が読書好きっていうのもあって、図書館には何度も來ているらしい。

「相変わらず落ち著くわ。私、図書館に住んでもいいくらいよ。……ふふっ」

なんて言いながら、ズンズン図書館を進んでいく。

笑ってる姿がちょっと怖いよ、みなもちゃん!

そんなみなもちゃんは、図書館の常連だけはあって、どこになにがあるのか分かっているらしい。

まったく迷いもせず、図書館の奧深くにある、學校関連資料のコーナーに辿り著いた。地元の學校についての本がいくつも並んでいて、その中には『M高校のあゆみ』とか『M高校創設の日』とか、それらしい本が並んでいる。

「図書館に、M高校の本まであるんだ」

「M高校が自分たちで発行した本を、図書館に寄贈してるのよ」

「あ、そういうこと。……本當だ、本の裏にバーコードとかないね」

わたしは図書室に來るのが3回目くらいだし、前に來たときは『火の鳥』と『三國志』をちょっと読んだだけだったから、こういう本があるのはぜんぜん知らなかった。……マンガしか読まない子でゴメンナサイ……。

「さて、まずは――學校が建つ前に病院があったのかどうか。そこから調べないとね」

「どうやって調べるの?」

「片っ端からそれらしいのを読めばいい。それだけよ」

そう言うとみなもちゃんは、『M高校のあゆみ』を手に取ると、すごい勢いでパラパラパラパラーッてめくりはじめた。

「み、みなもちゃん、それ、ちゃんと読んでるの!?」

「當然でしょ。……ハズレね。病院のびの字もないわ。はい、次」

みなもちゃんは。『M高校のあゆみ』を本棚に戻して、『M高校創設の日』を取る。

また、パラパラパラパラ。強烈なスピードで指がいて瞳がく。す、す、すごい。

なにか手伝いたいんだけど、わたしじゃ足手まとい。次元が違いすぎてなにもできません。

仕方ないので、本棚に並べてある本を取って、みなもちゃんが「次」って言うたびに本を手渡し、みなもちゃんが読み終わった本を棚に戻す。その作業だけやりました。

さて20分も経たないうちに、みなもちゃんはすべての資料を読み終わっちゃいました。

長い黒髪(すごく綺麗であこがれてる! どんなシャンプーを使ってるんだろう?)をかきあげながら、みなもちゃんは言うのです。

「ハッキリ言って収穫はないわね。1971年に學校が創設され、校舎もそのとき作られたはずだけど、前が病院だったかどうかは分からないわ」

「そう。……じゃあ、戦時中はM高校が病院だったっていうのはデマかな?」

「さあ。……斷言するのはまだ早いわよ。調べるべき場所はもうひとつあるんだから」

「え? どういうこと」

「次はこっちよ、若菜」

続いてみなもちゃんは歩き出す。わたしはそれについていって――

到著したのは、郷土史のコーナー。M高校というより、この場所、I郡の歴史について記された本が並べられた場所。學校の歴史だけじゃなくて地元の歴史について書かれた本ばかり並んでいて、その數は30冊くらい。

「ここを調べたら、M高校以前のこの土地のことが分かるはず。郷土の歴史だものね」

「あ、そっか。……みなもちゃん、頭いい……」

M高校について調べるんだからM高校の本だけ読めば、なんとかなると思っていたわたし。

郷土の歴史を調べる、なんて、よく思いつくなあ。――みなもちゃんはまた、本をすごい勢いで調べ始めて――やがて5分も経たないうちに、その場所を見つけた。

「ビンゴ。……若菜、ここを見て」

みなもちゃんが差し出した、分厚い本の一部分には、確かにその文字が躍っていた。

『I郡大字●●にI病院を建立(現在のM高等學校)』

あった!

確かにこのM高校の前には病院があったのだ。

I郡大字●●っていうのは、M高校の住所だ。それはわたしでも分かる。やっぱりこの場所は病院だったんだ。

じゃあ、安愚楽くんの話していた、地下室での拷問や指切りの話は、本當に……?

って、そんなことを考えていると、

ガシッ!

急に、肩をつかまれた。――だ、だれ!?

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