方丈凜の短編が収録されている本は、まだ書店で販売されていた。

同じ本に収録されている、方丈凜ではない別の作家が書いた短編が、いまでも高い評価を得ているので、この短編集も絶版にならず、なお版を重ね続けているみたい。

その短編も読んでみたけれど、なかなか面白かったわ。

し合っている人たちが、ちょっとした気持ちのすれ違いで永遠に別れてしまう語。

こう書くとありがちな筋の作品に見えるけど、登場人の心理描寫にとても見るものがあったのよ。

まあ、その短編については、また後日。

いま見るべきはペンネーム『方丈凜』の短編小説。

新人作家だけあって、文章は削り。

だけど文章力はこの際、どうでもよくて……。

問題は、作品の容ね。

『主人公はおとなしめの子高生。

その主人公には片想いをしているＡという人がいた。

しかし主人公はとても恥ずかしがりやで、Ａとはうまく口も利けない。

やがてＡには人ができる。

主人公はショックをける。

さらに苦しいのは、Ａはその人と長続きせず、結局別れを告げられるのだ。

人は、Ａのことを遊び程度にしか認識していなかったのだ。

Ａは失のショックで自殺してしまう。

主人公は、Ａの元人を激しく憎む。

そして元人に恨みの手紙を送りまくる。

お前のせいで、Ａは死んだのだ。

絶対に許さない。私はお前をいつでも見ている。

いつか必ずＡの無念を晴らしてやる……。

元人はやがて恐怖で発狂し、最後はこちらも自殺する。

主人公は高らかに笑った。は葉わねど復讐は果たしたのだから……』

どうかしら、この筋書き……。

この新人作家『方丈凜』が、第２の事件被害者の『北條凜』と同一人かどうかは分からない。

だけど同一人だとしたら……。この小説はもしかして実話をもとにしていたりしないかしら？

主人公が北條凜で、片想いをしている相手Ａは、當時Ｍ高校の３年生だった岡部義太郎……。

でも、小説の中でＡは死んでいるけれど、死んだのは岡部義太郎じゃなくて妹の子よね。

やっぱりこれは関係ないかしら。ただの作り話、どこまでも小説なのかもしれない。

『方丈凜』も『北條凜』とは無関係かもね……。

……どうなのかしら？