《指風鈴連続殺人事件 ~するカナリアと獄の日記帳~》2001年9月9日(日)

若菜の四十九日。

私は安愚楽くんといっしょに參加し、故人の冥福を祈った。

そして……

これで若菜は天國に行っちゃったのね。

上から、見ていてちょうだいね。あなたを殺した犯人は、必ず私が見つけてみせるから。

ところで。

安愚楽くんから新報。

「長谷川くんの四十九日もいずれ來るだろう? それに備えて――ちょっと長谷川くんの家に出かけてみてね、ご両親の前で線香をあげてきたんだけど」

「偉いわ。私も行かないとね」

「うん、行くといい。……で、それはともかく。……長谷川くんのご両親から、ちょっと気になることを聞いてね」

「ご両親から? どういう話?」

「実はね、長谷川くんは、亡くなる前日、変な電話をしていたそうなんだ。相手が誰かは分からないけど、とても怒った様子で――『あんたのせいで堂がああなったんじゃないのか。あんたの言うことを聞いたばかりにこれだ! 天ヶ瀬になんて謝ればいいんだ。堂は絶対になにも知らなかったのに、あんたのせいで……。あまりふざけるなよ。……あんた……お、おお、おそろしい男だよ……!』――そうんでいたそうだ」

あんたのせいで?

おそろしい、男……?

「その、おそろしい男って……この一連の事件に関係ある人よね?」

「そう考えるのが自然だろうね」

「おそろしい男……」

工藤教諭がひとりごとで言っていた『あのひと』。

岡部義太郎が死ぬ間際に言っていた『あいつ』。

長谷川くんが電話をしていた『あんた』『おそろしい男』。

これらは同一人なの?

若菜を、長谷川くんを、天ヶ瀬くんを殺したのは、その『男』?

工藤教諭や岡部義太郎の裏にいるのも、その人……?

……誰よ。

いままで事件に関わってきた人の中で、そんな、いかにも黒幕らしい人……いた……?

私は正直、これまで、工藤桃花や岡部義太郎が犯行に関わっていると思っていた。

長谷川くんも、もしかしたらなんらかの形で、利用されているのかもしれないと推測していた。

だけどその裏に……

まだ、私の知らない誰かが、存在しているというの?

分からない。

分からないわよ……!!

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