《指風鈴連続殺人事件 ~するカナリアと獄の日記帳~》2001年9月16日(日) 後半

第4の事件

2001年(今年)発生

被害者……堂若菜(15歳・M高校1年生)

M高校地下室にて撲殺死として友人グループ(私たち)が発見。指風鈴。

安愚楽士弦が仕れた地下室の報により、冒険心で東側のへとろうとした友人グループからなぜか離。その後、ひとりで撲殺死となって発見された。兇はなにかいもので、指を切斷したのは電気ノコギリ。兇も電気ノコギリも見つかっておらず。

グループ離の原因は、仲間の誰かにそそのかされたものと思われる。

そしてその誰かとは――消去法で長谷川幸平しかありえない。天ヶ瀬佑樹は6人の先頭に立つから不可能、山本キキラは本人の日記から推測するに恐らくしていない、私(袴田みなも)は當然しておらず、推理を披した安愚楽士弦がそうしたとも考えにくい。

しかし長谷川が堂若菜を外に出したとしても、長谷川は堂若菜殺害の犯人ではない。

彼は犯行時刻、私たちと一緒にいたからだ。工藤桃花もその時點では理事長室にいたため、アリバイが立している(正確に言えば10分間、手洗いのために外に出ているが、その10分で若菜を殺し指を切斷し、指風鈴にするのは時間が5分は足らず不可能である)

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関係者の中で唯一アリバイがないのは岡部義太郎だが、この時點で義太郎が若菜を殺害する理由はあるのか? 若菜もまた、義太郎と接はしているようだが……(堂若菜日記 7月12日)。しかも犯行現場の地下室は、ふだん施錠されており、この日も鍵が朝からずっと理事長室にあったことが報道されている。なぜこの日に限って扉が開いていたのかは不明。

また堂若菜日記9月9日の怪文を書いた人も不明。

しかし若菜日記は、本人の逝去から8月23日までは自宅に品として保管され、その後は山本キキラがずっと保有していたところから、あの文章を書いたのはキキラではないかと推測される。字の変化は、9月9日時點のキキラの心理狀態が反映されたものではないだろうか。追い詰められていたキキラが、自分の日記に書き込むつもりで、間違えて若菜日記にみずからの思いを勢いのままに執筆した可能がある。

被害者……長谷川幸平(16歳・M高校1年生)

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M高校東の雑木林にて他殺として指風鈴狀態で発見。

學校職員のひとりに発見される。

事件よりし前に、工藤桃花教諭と自宅付近でキスをしていた狀態を私(袴田みなも)に発見される。

後日問いただしたところ、ふたりは関係を完全に否定。しかし山本キキラの日記により、ふたりの男関係は確実なものと思われる。

殺害される前日に、何者かと言い爭う電話をしていた。

その電話の中では『おそろしい男』と言っているため、爭った相手は男だと思われるが詳細は不明。

殺害當日のアリバイが関係者全員にないため、誰でも殺害可能だが、殺害當日に工藤桃花といっしょにいたことから(山本キキラ日記 8月3日)、工藤桃花の犯行である可能が極めて大。ただし証拠はない。

また彼が殺害された時點で『7年に1度』『被害者はみんな』という連続事件のジンクスが崩壊した。

被害者……天ヶ瀬佑樹(15歳・M高校1年生)

自宅近所の公園にて他殺として発見。

連続事件被害者として初めて指風鈴ではない。

事件前日に、安愚楽士弦によって呼び出され、數週間ぶりに自宅から出たところを殺害される。

両親(山本キキラの父でもある父親と、天ヶ瀬佑樹の母親)はもちろん、私(袴田みなも)と安愚楽士弦も殺害時刻にはコンビニの中におり、防犯カメラにその姿が寫っていたため、アリバイが完全立。関係者の中でアリバイがないのは山本キキラと工藤桃花だが、キキラについてはその日記の反応から見て可能は低い。

ただしこの時點で、工藤桃花が天ヶ瀬佑樹を殺害する機があるのか?

(天ヶ瀬に限らず、M高校一連の事件はすべて機がよく見えない!)

被害者……山本キキラ(15歳・M高校1年生)

M高校屋上より転落死。

日記の最終ページに『死にたい』とあったことから警察は自殺と判斷。事件なしとされた。

については自殺なのか他殺なのか、私でも斷言しにくい。日記を見る限り、彼の心理狀態は若菜の殺害からこっち、常に危うい狀態にあったようで、そのために最後は自死を選んだとしてもおかしくはないからだ。

しかし、仮に自殺だとしても――

若菜や長谷川くん、天ヶ瀬くんの死がキキラの神に與えたダメージは大きいだろう。

若菜たちが死ななければ、彼は自殺しなかったかもしれない。

そういう意味では、キキラもやはり、この一連の事件の加害者による犠牲者なのだ。

その他――

第1の事件の被害者の兄、岡部義太郎が警察の眼前で自殺している。

義太郎はいつごろからか、若いを見かけては聲をかけていたようであり、若菜の日記やキキラの日記にもその存在が散見される。

「信じてくれ」

「眠れないんだ」

でてくれ」

義太郎はそんなことを口にしているが、そもそもなにを「信じてくれ」と言っていたのか?

そこにはなにか、大きな意味がある気がしてならない。

しかし、こうして事件を整理していくと、工藤桃花と岡部義太郎が常に事件のどこかにいる。

このふたりが実に怪しいのだが、しかし工藤桃花、岡部義太郎ともに「あのひと」「あいつ」と何者かが事件の裏側にいることを口にしている。

長谷川幸平もまた電話でその人と話をしていたようで「おそろしい男」と表現している。

その何者か、長谷川幸平の電話によればおそらく男が、一連の事件の犯人だと思われるが……。

それが誰なのか、私にはさっぱり分からない。見當もつかないのだ。

私や、私の仲間たちが把握していない誰かが、この一連の事件に関連しているのだろうか?

それとも――既存の登場人の中に事件の黒幕がおり、私がそれを見落としているのだろうか?

これはカンだけど。

あと一歩だと思うの。

事件のすべてが分かるその瞬間。

あともうし、あとちょっとで、きっと。

パズルのピースがあとひとつあれば、すべてが分かる。そんな気がする。

とりあえず、明日だ。

ずっと學校を休んでいるという工藤桃花教諭。

に會いに行こうと思う。自宅の住所を調べてでも、面會する。

そして問いただす。いったい事件にどういう関係があるのか、と。

一度ははぐらかされたけれど、今度はもう逃がさない。

あのがなにか関わっているのは間違いないのだから。

M高校の殺人事件はきっともうすぐ終了する。私が犯人を見つけ出すことによって。

そうしなければならない。

絶対にそうするのだ。

私と仲間が、確かに友わしたあの場所を、殺戮と絶の現場として終わらせてなるものか。

私は負けない。

天ヶ瀬くん。

若菜。

キキラ。

長谷川くん。

私に力と勇気をちょうだい。

必ず、勝利してみせるから。

(筆者注・この日記が書かれた翌日、すなわち9月17日夕方に、袴田みなもはM高校東側の雑木林の中でとして発見された。死因は刺殺と判斷された。

そのとき袴田みなもは、自分と友人たちの日記4冊を所有しており、その日記にはみなもの返りが大量に付著していたという。

山本キキラや袴田みなもの日記から、警察は工藤桃花が一連の事件に重大な関わりがあると判斷。任意同行で工藤を警察署まで連行したが、しかし彼が犯行に攜わっていた証拠はついに出なかった。

その後、工藤桃花は2001年10月にM高校を退職。そのまま行方不明となっている)

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