《悪魔の証明 R2》第10話 008 セネタル・スワノフスキー
廊下側にを乗り出し、六號車への間口を通り過ぎようとするその男を目で追った。
あきらかに怪しい。
下車の準備にはいささか時間が早過ぎる。このスカイブリッジライナーは、日本側の排他的経済水域はすでに抜けているとはいえ、まだ日付変更線にさえ辿り著いていない。當然、終著駅のロサンゼルスなどまだまだ先だ。
それにもかかわらず、あのライトグレーのスーツを著込んだ男は、に不釣り合いなサイズのアタッシュケースをふたつ持って車を移している。
「あいつがテロリストだ」
ぼそりと呟いた。
もちろん、こんなに簡単にテロリストの正が判明していいのか、という疑問はある。だが、あのような不自然な行をする男を容疑者から外すわけにはいかない。
次にあの男の追跡を命じようと、背後にいるエリシナたちの方へ顔を向けた時だった。
今度は食堂車の中へっていこうとする大柄な男が、視界の片隅にった。
小柄な男と同じく手にはアタッシュケースふたつ。これまた、當然かのように同のライトグレーのスーツ。
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アタッシュケースをふたつ持つ男が同じタイプのスーツを著て、同時間に車をそれぞれ反対方向へと移する。
こんな偶然はありえない。
あいつらがテロリストだ。であれば、あのアタッシュケースの中には何がっている?
考えるまでもない、弾だ。あのARKが関與しているとすれば、おそらくハンニバル・ニトロ限定範囲指定戦略型ピンポイント弾。
頭の中でそう試算した瞬間だった。
何か勘づいたのか、突然大男のがぐるりとこちらの方へと向いた。
考えるまでもなく、エリシナたちをルーム四に押し込んだ。そして、自らのも部屋の中へと飛び込ませる。
ドアを閉め、ほっと一息つく。
「あのふたりだ」
エリシナとクレアスにそう告げた。
「あのふたりって?」
聲を揃えてふたりは尋ねてきた。
「あの連中がテロリストだ。ふたりともライトグレーのスーツを著用していて、両手にシルバーのアタッシュケースを持っている」
と、先程視認したままの報を伝える。
「顔の特徴はどんなじだったの? ライトグレーのスーツとアタッシュケースだけじゃ、誰がテロリストか見分けがつかないわ」
細い眉を吊り上げながら、エリシナが問いかけてきた。
「顔の特徴を確認する前に、隠れるしかなかったからな。見ていない。逆に危うく大男の方にこちらの顔を確認されるところだった」
「小男の方は?」
「そっちも終始こちらに背中を向けていたから、そのチャンスはなかった」
私は首を橫に振った。
「では、他に特徴は?」
そう再び尋ねてきたエリシナの口調は、若干呆れ気味だった。
「……ふたりとも金髪で白人だった。大男はの長は二メートル程。小男は一メートル六十センチくらい。そして、先程述べた通り、ライトグレーのスーツを著用していて、ふたりの手にはシルバーのアタッシュケース。ここまでくれば該當の人間は絞られるだろう」
「まあ、絞られると言えば、絞られるかも知れないけれど……」
若干不服そうにしながら、エリシナはそう聲を零した。
「ライトグレーのスーツ……トウキョウ駅からロサンゼルス駅まで二十時間以上かけて行こうってのに、わざわざスーツを著て列車に乗るやつがそういるとは確かに思えない。セネタルの言う通り、テロリストたちの特定は簡単そうだな」
クレアスが言った。
これは私の意見に賛同した、と見做して良いのだろうか。
「クレアス。そう楽観しないで。そんなに簡単に事が運ぶとは思えない」
エリシナが吐息をらしながら言う。
「でも、セネタルの報があれば、そのふたりの特定は簡単にできそうじゃないか」
「……スカイブリッジライナーに搭乗しているテロリストは、果たしてそのふたりだけなのかしら?」
「なるほど、そのふたりを特定した後、俺たちがどうするかということか」
「例によって、ふたり、もしくはその一味が、戦略型ピンポイント弾で武裝しているのは間違いないのだから、乗客のいるこの場で戦闘行為に及ぶなんてことはできないわ。捕まえた瞬間そいつらの仲間に弾を使われたら、乗客どころか私たちまで死んでしまう」
彼の意見は一理ある。
確かにむやみやたらとふたりを捕まえたら、エリシナが心配している通り乗客どころか自分たちものっぴきならない事態に陥ることだろう。かといって、あのふたりを放置しておくわけにもいかない。
そう考えた私は、ふたりに新たな指示を送ることにした。
「とりあえず、あのふたりの行を監視する。俺とクレアスは大男の行方を追う。あいつはどう見てもやっかいだ。あんな図の男がひとたび暴れ出したら、ひとりでは対処できない。悪いが、エリシナはひとりで小男を追ってくれ。今はまだ捕まえようとするな。ある程度の時間彼らを偵察したら、またこの部屋……ルーム四に集合する。一度お互いが見たものを報告し合ってから、テロリスト殲滅作戦を練ることにしよう」
「了解。で、部屋に帰ってくる時間はどうするの?」
エリシナが尋ねてきた。
「再會する時間は……」
私は判斷に迷い口籠った。
それを見かねたのか、「二十二時半でどうかしら」と、エリシナが提案してきた。
「ああ、そうしよう」
「時間は日本時間。日付変更線が近いからって、時計はいじってないわよね?」
「ああ。カレンダーは十一月十四日。間違いない」
腕時計を確認しながら、私は斷言した。
一方のクレアスは、「あ、俺の時計は、十三日……今、変更する」と慌てた様子で、腕にはめた時計の針を合わせ始めた。
「ふたりとも。必ずその時間に絶対戻ってきてね。深追いは危険だから、無理しないで。もし、時間までに帰ってこなかったら私が迎えに行く」
エリシナが強い口調で私たちに宣言する。
「ああ、エリシナ。時間厳守だ」
ようやく時計の針を直し終えたクレアスがそう聲を返した。
その瞬間――彼の目とエリシナの目が絡み合った。
彼と彼の間にできあがった微妙な空気。
私はその空間に目を細めながら思う。
このふたりの間にまだ進展はないのか……と。
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