《悪魔の証明 R2》第13話 010 アカギ・エフ・セイレイ(2)
その頃になると、彼らにとってテロとの戦いはもう過去のものとなっていた。
といっても、もちろん先の荷検査の件が解決されたわけではない。
ハンニバル・ニトロ限定範囲指定戦略型ピンポイント弾に対してベルトコンベア型の荷検査ではその対策とならないのだから、同様の荷検査しか行えないスカイブリッジ國際線でもテロは必ず発生する。
だが、富裕層が率先して飛行機に乗らなくなったせいか、スカイブリッジへのテロの頻度はそれほど多くなかった。
テロは起こっても一年に二十回未満。スカイブリッジライナーの全離発著數から換算すると、乗客がテロに遭遇する確率は小數點以下。二十一世紀初頭までの飛行機事故遭遇確率と同程度よりし上くらい。
その數値は彼らにとって無視をしても良いくらいのものだ。
しかも、飛行機で戦略型ピンポイント弾を使われたら全員の死亡が確定していたのだが、スカイブリッジの場合ないながら、乗客が生き殘るケースもある。運営陣を含めた航空會社の人間たちにとって、良心の呵責はそれほど大きくない。
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そういった経緯があり、現在――彼らは経営の主を飛行機からスカイブリッジライナーへ完全にシフトしている。
トウキョウからびるスカイブリッジだけでも、米國合衆國では、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンD.C、英國では、ロンドン、マンチェスター、ドイツでは、ベルリン、ミュンヘン、スペインではマドリッド、バルセロナなど各國の主要都市と結ばれている。
彼らはすでに飛行機と同程度……いや、それ以上の通網を有していると述べても過言ではない。
その各路線を運行する超電浮上式高速リニア新幹線スカイブリッジライナーを、多くの一般人が利用するのだから、本當に薄利かは別にして、薄利多売主義の彼らが、數の犠牲は無視するという倫理で行するのもある意味當然だった。
かといって、彼らは飛行機の運用を完全に停止したわけではない。
制限付きで飛行機は運行させている。それは誰のためか、もちろん――政治家や一部の富裕層のためだ。
「貧困層の多いテロリストの搭乗を抑制するため、価格を非常に高く設定するというテロ対策を航空會社が選択したおかげで、一般の人間が搭乗することが不可能になったが、金が有り余っている富裕層は飛行機に搭乗することができる」と、形容した方がより正確かもしれない。
當然、一般の人間ではなく世界経済を回している中心人たちが搭乗するのだから、航空會社が取った飛行機航行におけるテロ対策はその価格設定だけではない。
目視確認による荷検査――無論政府の重要資料がったスーツケースなどは除外するが――はもちろんのこと、スカイブリッジライナーの搭乗員を抑制して空港職員を増やし、そのほとんどを空港警備に回し検査制を厳重化している。
倫理的な問題は多分に含まれるが、飛行機に搭乗する人數は制限されているので、安全面だけ考えるとそれ以上ないくらい効果的な措置といえるだろう。
プラスして、地上から放たれる可能がある地対空ミサイルを懸念し、各飛行機が取る空路を一般に公表しないという対策も行っている。
當然飛行機が利用できない庶民からの不平不満は百年スパンで多く出ているが、結果彼らの判斷は正しくそれ以來一度も飛行機破テロは行われていない。
だが、この彼らの判斷のおかげで僕が飛行機に搭乗できる可能はほぼなくなったのもまた間違いないことだ。
「で、どうなんだい? アカギ君」
スピキオが目を細めて訊いてきた。
「……スピキオさん。僕個人の意見としては、とても自由であるとは思えません」
長考した結果、導き出した回答はこれだった。
「自由であるのに自由ではない。不思議だねえ、アカギ君。まあ、かくいう私も當然きみと同じことを思っているけどね」
「良かった……正解だったんですね、ピキオさん」
「正解? 正解なんてないさ。きみと僕がただ偶然同じことを思っていた。それだけだ。だけど、自由を謳歌している人にとっては違う。一パーセントの人たちと例えた方が良いかな。いずれにせよ、彼らはそうは思っていないよ。きっとね」
「そういう人たちでも……でも、スピキオさん。果たしてこんな世の中で、自由なんて思っている人がいるんですかね」
気が遠くなる程の稼ぎをしないと、飛行機にれることさえ葉わない。
空を飛べる道が存在するのに、空を飛べない。飛べない鳥が飛べないのとは意味が違う。
これがはたして自由な狀態と言えるのだろうか。
そんなわけがあろうはずがない。すべては、あのテロリストたちのせいだ。
僕は心の中でそう深く憤った矢先のことだった。
スピキオの背後、RESERVEDと書かれた表札が置かれた一番奧のテーブルにひとりで座っているの子が目にった。
ツインテール。き通るような金の髪。薄い水の瞳。デコレーションがされたタイつきのクラシックブラウスが細のにぴたりとフィットしている。顔を見る限り、僕の年齢と同じくらいに見えた。
彼の姿を一通り確認した僕は、このゴスロリ、いつの間にテーブルについたんだろうか、と首を捻った。
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