《悪魔の証明 R2》第15話 011 マウロ・パウロ(2)
「ワイヤーがどうしたんだい?」
僕の臺詞を耳にしたせいか、フリッツが目を丸くして尋ねてきた。
「いえ、なんでも」
気恥ずかしさもあいまって、首を強く橫に振った。
「そうか。何でもないんならいいんだけど……でも、マウロ。僕の計畫通りにやれば、何の問題もない。わかっているね」
と述べて、フリッツが僕の両肩に手を置く。
「はい、もちろんわかっています」
そう返事をして、フリッツの腕を摑みながら立ちあがった。
「最後に計畫の最終確認をしよう、マウロ」
「……食堂車の席はすでに予約してあるから、五號車側の椅子に座る。確かそうでしたよね?」
「そうだね。で、その時なんだけど、必ず椅子のすぐ側にアタッシュケースを置いてしいんだ。弾の能力を最大限に引き出すためにね。そして、機関室の破直前に、ルーム六に戻ってくる計畫だけど――これが上手くいかないケースもある。考えたくはないが、私設警察に怪しまれたり、話しかけられたりするケースがあるからね」
Advertisement
「絶対にスカイブリッジライナーが停車してから逃げ出す――確か、そういう話だったですよね」
「その通り」
「ええ、もちろんそれは絶対に守ります……でも、タイミングが悪いと発に巻き込まれたりしそうですね」
「それは問題ないさ、マウロ。そんなこと考慮にれる必要もない。確かに発は機関室から始まり、その後次々と各車両が連鎖発されていく。だけど、この時食堂車を破することはない。食堂車については、最後の車両の破が終わった後にタイミングを見計らって破する」
「すべてが終わってから僕の擔當する食堂車を破するということですね。なるほど、それであれば……」
「マウロ、きみの安全を最大限に配慮した結果このような形にしたんだ。だから、もし停車する前、誰かに怪しまれたとしても、必ず黙を貫くんだ。もしそいつが私設警察だとしても、だ」
フリッツが見たこともないような強い眼差しを送ってくる。
その後、束の間の靜寂が訪れた。
「……はい。絶対に何も言いません」
斷固とした決意を語調に乗せ、僕はそう述べた。
「マウロ、そうだ。絶対に、だ。黙りを決め込んでる人間にはいきなり手錠をかけたりできないからね。手錠をかけられていないのでなければ、 破が始まった瞬間に必ず逃げる隙はできる」
「……停車する前に逃げ出してしまったら、逆に危険だということですね」
確かにフリッツの言う通り、私設警察に拘束されることが一番問題であるような気がする。
「例えば、破が始まる前にこの寢臺車側に向かったとして、そのとき運良くスカイブリッジライナーのスピードが緩まっていたとしても、破しない寢臺車から六號車にかけては乗降口がないから外に逃げることはできない。これではすぐに捕まってしまう。かといって、逆の五號車側に逃げたとしてもすぐに弾が発するから、今度は君の命が危ない。このような狀況に陥らないよう必ず計畫通りいてしい」
フリッツは目を細めながら言った。
彼の言葉にこくりと頷く。
「もう時間ですね、それでは、いってきます。フリッツ」
そう斷って、足元に置かれていたアタッシュケースを片手で持ち上げた。
「フリッツ。私もそろそろ行くわ。マウロ。途中まで一緒に行きましょう」
フェイクウールのブルゾンに袖を通しながら、シャノンが僕をってきた。
これに再びこくりと頷くと、出口へとを向けそのまま歩き出した。背後からコツコツと彼のハイヒールの甲高い音が聞こえてくる。
シャノンからってくれるなんて思いもしなかった。
ここまで來て彼は僕を仲間と認めてくれたのだろうか。
今まで々と小言を言われたが、もう作戦決行時間も間近。仲間割れをするような時間帯ではない。
ようやく仲間としての共通意識が彼にも生まれたのだろう。
若干心強くなった僕が、ドアノブに手をかけた瞬間だった。
橫からカチャリという音が耳にってきた。
恐る恐るその音がした方向を見やった。半ば気づきはしていたが、その音をさせたのはシンだった。ショットガンの撃鉄を引いたのだ。
しかし、あの細いバイオリンケースの中がこんなだったとは考えもしなかった。
いくら飛行場ほどセキュリティが高くないとはいえ、スカイブリッジライナーにこんな代をどうやって持ち込んだのだろう。稅関職員が荷検査でこんな大きいのチェックに失敗するとは思えない。
素樸な疑問が僕の脳裏を過る。
あまりにもショットガンをじっと見つめたせいか、シンが「何か用か?」と、尋ねてきた。
「いえ、何でもありません」
反的にとぼけた。
「シン、おまえの出番はまだだ。くれぐれも暴走するのだけはやめてくれよ」
フリッツが彼に向けそう呼びかけた。
暴走……暴走っていったい何のことだ?
背中に響いたフリッツの臺詞にドアノブにれることを一瞬躊躇した。
だが、それは束の間だった。
気を取り直してからドアを開け、通路へと足を踏みれる。
そして、僕は自分の戦場――食堂車へとを向けた。
貞操観念が逆転した宇宙人の軍隊でエースパイロットの俺だけが唯一男な話【書籍化決定!】
『戦場は女のものだ。男は引っ込んでいろ』そんな言説がまかり通ってしまう地球外知的生命體、ヴルド人が銀河を支配する時代。地球人のエースパイロットである北斗輝星は、その類稀なる操縦技能をもって人型機動兵器"ストライカー"を駆り傭兵として活動していた。 戦場では無雙の活躍を見せる彼だったが、機體を降りればただの貧弱な地球人男性に過ぎない。性欲も身體能力も高いヴルド人たちに(性的に)狙われる輝星に、安息の日は訪れるのだろうか? カクヨム様でも連載しています。 皆様の応援のおかげで書籍化決定しました。ありがとうございます!!
8 77【書籍化・コミカライズ】実家、捨てさせていただきます!〜ド田舎の虐げられ令嬢は王都のエリート騎士に溺愛される〜
【DREノベルス様から12/10頃発売予定!】 辺境伯令嬢のクロエは、背中に痣がある事と生まれてから家族や親戚が相次いで不幸に見舞われた事から『災いをもたらす忌み子』として虐げられていた。 日常的に暴力を振るってくる母に、何かと鬱憤を晴らしてくる意地悪な姉。 (私が悪いんだ……忌み子だから仕方がない)とクロエは耐え忍んでいたが、ある日ついに我慢の限界を迎える。 「もうこんな狂った家にいたくない……!!」 クロエは逃げ出した。 野を越え山を越え、ついには王都に辿り著く。 しかしそこでクロエの體力が盡き、弱っていたところを柄の悪い男たちに襲われてしまう。 覚悟を決めたクロエだったが、たまたま通りかかった青年によって助けられた。 「行くところがないなら、しばらく家に來るか? ちょうど家政婦を探していたんだ」 青年──ロイドは王都の平和を守る第一騎士団の若きエリート騎士。 「恩人の役に立ちたい」とクロエは、ロイドの家の家政婦として住み込み始める。 今まで実家の家事を全て引き受けこき使われていたクロエが、ロイドの家でもその能力を発揮するのに時間はかからなかった。 「部屋がこんなに綺麗に……」「こんな美味いもの、今まで食べたことがない」「本當に凄いな、君は」 「こんなに褒められたの……はじめて……」 ロイドは騎士団內で「漆黒の死神」なんて呼ばれる冷酷無慈悲な剣士らしいが、クロエの前では違う一面も見せてくれ、いつのまにか溺愛されるようになる。 一方、クロエが居なくなった実家では、これまでクロエに様々な部分で依存していたため少しずつ崩壊の兆しを見せていて……。 これは、忌み子として虐げらてきた令嬢が、剣一筋で生きてきた真面目で優しい騎士と一緒に、ささやかな幸せを手に入れていく物語。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※書籍化・コミカライズ進行中です!
8 173【書籍化】萬能スキルの劣等聖女 〜器用すぎるので貧乏にはなりませんでした
※第3回集英社WEB小説大賞にて、銀賞を獲得しました。書籍化します。 剣も魔法も一流だけど飛び抜けて優秀な面がない聖女ソアラは、「器用貧乏」だと罵られ、「才能なしの劣等聖女」だと勇者のパーティーを追い出される。 その後、ソアラはフリーの冒険者業に転身し、パーティーの助っ人として大活躍。 そう、ソアラは厳しい修行の結果、複數スキルを同時に使うという技術《アンサンブル》を人間で唯一マスターしており、その強さは超有能スキル持ちを遙かに凌駕していたのだ。 一方、勇者のパーティーはソアラを失って何度も壊滅寸前に追い込まれていく。 ※アルファポリス様にも投稿しています
8 105俺の得能は「平凡」だった。
この世界には1000人に一人「得能」を持つものが生まれる。 「得能」すなわち得する能力のことだ。サッカーが圧倒的に上手くなる得能や足がめちゃくちゃ速くなる得能、種類は様々だ。 その得能を所持して生まれてきたものは高校から得能を育成する學校、「得能育成學校」に行くことになる。 俺、白鳥伊織はその一人だった。だがしかし! 俺の得能は「平凡」であった。 この話は平凡な俺がある出來事で成長する話。
8 149極限まで進化した頂點者の異世界生活
主人公の黒羽海斗は他の人間とは違うものを持っていた。完全記憶能力、そして、絶対なる力・・・破壊と創造の力を・・・ これは人間が進化をした先にもつ頂點の能力だった・・・ 力を使い、大切な物を守り抜く。 これはそんな主人公の異世界生活の物語。 注意無雙はしません。 応援お願いします。 更新は進みしだい更新します。 不定期の更新だと思います。
8 174ぼくには孤獨に死ぬ権利がある――世界の果ての咎人の星
1990年の春、地方都市の片隅で鬱屈した日々を送る普通の女子中學生、永田香名子の前に現れたのは、ハヤタと名乗る宇宙人の家政夫だった。奇妙な同居生活の中で二人は惹かれ合うが、異星の罪人であるハヤタが、科せられた〈情緒回復計畫〉を達成し、罪を贖う時、彼は殘酷な刑へ処せられる運命だった――。リアリズム、ファンタジー、SFが交差する作風で、ひとりの女性の數奇な人生を1990年から2020年まで追い続けた、異色のゴシック・ロマンス小説、決定版にして〈完全版〉!
8 134