《悪魔の証明 R2》第22話 018 セネタル・スワノフスキー(1)
先を行くクレアスの背中に視線を合わせた。
「クレアス。おまえは先に行って、エリシナと合流しろ」
と、指示を與える。
「何か問題でもあったのか? セネタル」
クレアスが怪訝そうに尋ねてきた。
そのまま、こちらへと振り返ろうとする。
「クレアス、こっちを振り向くな。顔をそのままにして食堂車から出ろ。気づかれる」強い口調で命令した。「奧にアタッシュケースを持っているやつが、もうひとりいた。同じタイプのアタッシュケースを持っているやつらは、さっきすれ違ったを含めるとこれで四人。もうこれは偶然とは言えない」
「……? って、どのだ?」
クレアスが顔を左右させる。
「さっきも言っただろう? 顔をあまりかすな」
「ああ、悪い。でも、怪しいなんていたのか?」
「そうか。見てなかったのか……まあ、無理もない。ここに來るまで何人ものとすれ違ったからな」
「……悪い。次はちゃんと見るよ」
クレアスが申し訳なさそうに謝ってくる。
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「いや、構わない。それより、今はあの年だ。明らかに不自然な行をしている奴がいる」
「年? もしかして、あの奧に座っている年か?」
そう確認してくると、クレアスは微妙な角度でそちらへと顔をやった。
食堂の奧のテーブルには気の弱そうな年が陣取っていた。
テーブルの上に置かれたマグカップには手もれず、落ち著きのない様子であちらこちらに顔を向けている。傍らには、例のアタッシュケース。怪しいというのを通り越して、自分がテロ組織の一味だと自白しているようなものだった。
「あの年の態度を見ればわかるだろう? どう考えてもテロリストの一味だ」
「そうだな、セネタル。しかし、また今回も年端もいかない子供が使われているのか……」
「――おそらく油斷をうために、あの年をリクルートしたってところだろう。知っての通り、テロリストが良く使う常套手段だ」
「まあ、そういった年は何度も見てきたよな……あいつの処遇をどうするかは、セネタルに任せるよ。とりあえず、俺は戻る。エリシナが俺たちを探しにこちらに來たら、余計に目立ってしまうからな」
そう言い殘して、クレアスはこの場を去っていった。
「ああ、し様子を見たら、俺もすぐに合流する」
と彼の背中に、し遅れて聲をかけた。
そして、クレアスの姿が車両から消えた後、不自然な行とけ取られないよう顔をかさずを橫に向けた。
一定の歩調で前へと進んでいく。
時間厳守か……この分だと守れそうにないな。
そんなことを考えながら、流し目で年を観察した。
年は相変わらず挙不審な態度を取っている。
こんなわかりやすいテロリストがいるのかと思わず自分の推理を疑ってしまいそうになる。それは、これは何かの罠なのかと自問する程だった。
まずい――
注視しすぎたのか、年と思わず目が合いそうになった。
急いで視線を元に戻す。
幸い年は床に置いてあるアタッシュケースへ顔を向けており、私の向を気にしている素振りは見せていない。
窓際のテーブルに到著すると、ゆっくりと椅子に座り込んだ。
陣取った場所は年から真正面の方向にあるが、彼が位置しているテーブルからは若干離れていた。
これくらい適度の距離があれば、彼が私に監視されていることに気がつく可能はほぼないだろう。
そして、席に腰を押しつけてから、再びさりげなく年を視界にれた矢先のことだった。
「お客様?」
と、の聲が聞こえてきた。
顔を上げると、そこにはウェイトレスが立っていた。
なんだ、こいつ。なぜ私に聲をかけてくる?
思いも寄らぬことに、一瞬頭が混した。
だが、すぐに彼はただオーダーを取りにきただけであることに気がついた。
私の困した様子を見たせいか、ウェイトレスは怪訝そうな顔をする。
だが、コーヒーを注文すると警戒を解いたのか、表が一変して笑顔になった。
「すいません。考えことをしていて、つい反応が遅れて……」
彼に向け謝罪の言葉を述べた。
「いいえ、構いませんよ。こちらも言葉足らずでしたから――こちらこそ申し訳ございませんでした。また何かありましたら、お聲がけください」
そう言って、ウェイトレスはにこりと笑った。
「お姉さん。ついでと言ってはなんですが、お尋ねしたいことが……」
私は年がいつからこの食堂にいたか、ウェイトレスに尋ねた。
と同時に、さりげなくポケットから私設警察手帳を見せる。
手帳を視界にれたウェイトレスはぽかんとした表で、はあっ、と気の抜けた聲を出して頷くだけだった。
おおっぴらに手帳を提示しないのは、もちろん年に自分が私設警察であることを悟らせないためだ。
ここまで來て、テロリストに自分の正を気づかれるわけにはいかない。
「えーっと、申し訳ございません。ご質問は何でしたっけ? あの年とは……」
ウェイトレスの顔がし曇りを見せる。
この手の質問をされたことがないのだろう。ある意味一般人としては當然の反応だ。
とはいえ、話している最中妙な反応をされては困る。
そう考えた私はどこからどのように説明しようか、し頭を悩ませた。
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