《悪魔の証明 R2》第35話 033 クロミサ・ライザ・リュウノオトハネ(1)
「ねえ、スピキオ。本當にこの子がやるの? やっぱり、私がやった方がいいんじゃない?」
ツインテールを風にあてながら、私は尋ねた。
だが、運転席にいるロングアフロヘア……ドレッドというのかしら……
いずにせよ、そのような髪型をしたデスマスクの男。スピキオ・カルタゴス・バルカはやはり返答をよこさない。
「いつも同じようなことを言っているような気はするのだけれど。それで、スピキオ。いつ兵は使われるのかしら? 私もそろそろ我慢の限界が來ているわ。いいえ、怒っているわけじゃないのよ。だって、レディーですもの。それとも、いつもの通り永遠のと例えた方があなたにとっては良いのかしらね」
私は再度語りかけた。
だが、スピキオは黒いハンドルを握ったまま無言を貫く。
思い返してみると、さっきからずっと私を無視している。というより、今日家を出てから一度も口を聞いていない。
ふん、と鼻を鳴らしフロントミラーに映るデスマスクから目を切って、ウィンドウの外へと顔をやった。
颯爽と――というより、超高速に木々が目の前を駆け抜けていく。
區畫整理された綺麗な道。周囲は手れの行き屆いた芝生に囲まれ、先には青々とした緑の姿。生活レベルの高さを証明するかのように、その奧に大きなビルが立ち並んでいる。
ようやく、舊市街地を抜けたんだ。
そう思いはしたが、気分はそのような理由から鬱屈したままだった。
よく緑は人の心を落ち著かせるというが、私に対しては無意味な格言だわ。
と、っぽくため息をつく。
そのまま引き続きぼんやりと外を眺めた。
しの時間を経た後、「舊市街地では汚いビルばかりだったけれど、今度は自然がいっぱいね」と、呟いた。
さらに矢継ぎ早に、「緑、緑、緑。今度はどこまで行っても緑ばっかり。誰も聞いていないのはわかっているけれど、緑ってどこまでいっても緑よね」と、自作の格言を述べる。
素人にしては中々の出來にもかかわらず、これに誰も反応を見せない。
「……第六研の連中、今回は何を仕掛けてくるつもりかしらね。いつもの通りやられなければ良いのだけれど。でもね、スピキオ。それは大丈夫なのよ。心配しなくていいの。だって、私に任せてくれたら、すべてアトミックに解決してあげるのだから」
今度はスピキオのみを対象として聲をかけた。
束の間の後、ちっ、と舌打ちをする。
また無反応だった。
「あーあ、暇だな。クロミサ、凄く暇。誰かおしゃべりしてくれないかなー」
とは言いつつも、例えスピキオと話しても暇は解消されないのはわかっていた。
一緒に住んでいることもあり、話をする機會は相応にある。
だが、よくもまあ、こんな面白みのない人間に育ったわね、そう思うくらい彼との會話はつまらない。
スピキオがトゥルーマン教団にってからというもの、それは顕著だ。
はー、と溜め息をついた。
そういえば、ここ最近溜め息ばかり。
このままでは幸せが逃げていってしまうのではないかしら。
「そんなことはどうでもいい……本當に暇なのだけれど。緑ばっかだし。だって、緑ってやっぱりどこまでいっても……」
窓の変わり映えしない風景を見ていると、また口から愚癡が出てしまった。
だが、私にはこの劣悪な環境下でも暇を潰せる方法がひとつだけある。おもむろにポシェットへと手をばした。
がさごそと中を探る。何かが掌にあたったがした。
「ああ、これこれ。やっぱりこれよね。暇な時といえば、やはりロマンスなの。私のような永遠のにはロマンスの栄養補給が必要なのよ。もちろんご存じであるとは思うのだけれど」
それを摑み取り、ポシェットから手を引き抜く。
掌を開くと銀紙に包まれたキャンディーが現れた。
銀紙をピリピリと外し、思う。
やっぱりストレスが溜まった時は、メロンキャンディーよね、と。
にたりと微笑むと、メロンを模したのキャンディーを指で挾んだ。
太にかしてみる。
そのキャンディーは、まるでエメラルドのような青白い輝きを放った。
「メロンキャンディーって、まるでマリリン・モンローのライターのようねーーそう、ロマンスの香りがするわ。トルコ石のブルーではないけれど。後、シェパードが居ればもっといいのに。でも、車の中にそんなのいるわけないわね。だから、私は今、そのロマンスを金網にれる。一応説明はしておくけれど、要はメロンキャンディーを食べるということよ」
そう訥々と語ってから、ぽいっとキャンディーを口へ放り込んだ。
ペロペロと舌でメロンキャンディーを弄んだ後、ヘッドミラー越しに助手席でポツンと座っているを見つめた。
「ねえ、あなた。あなた、まるでお人形さんのようだわ」
表を氷の王へと一変させ言う。
大きな黒のリボンにフリルがふんだんに施された赤いドレス、足には白いソックス――って明らかに狙ってるでしょ。
の出で立ちを観察して、そう毒を吐いた。
いや、正確にいうと、口から聲は出てしまっていたのでそれは心の中だけではなかった。
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