《【窟王】からはじめる楽園ライフ~萬能の採掘スキルで最強に!?~》二十二話 種も取れちゃいました!!

白い子犬は、窟のり口ですやすや寢ていた。

子犬というのは、し語弊があるかもしれない。

この子犬に見える赤ちゃんは、コボルトなのだ。

昨日むしゃむしゃとご飯を食べ終えてからというもの、今までぐっすりと寢ている。

スライムのシエルがベッドになってくれているので、とても気持ちよさそうだ。

「コボルトの赤ちゃんって、本當に子犬みたいだな」

休憩する俺の言葉に、隣に座るリエナが頷く。

「私もコボルトの赤子を見るのは初めてですね。バリスが言うには、一年ぐらいで我々ゴブリンの平均長と同じぐらいに長するのだそうです。それまでには、だいたい二本足で歩けるようになるようですね」

「へえ。壽命は人間と同じぐらいだって聞いたけど、隨分早く長するんだな」

そんなことを話していると、コボルトの赤ちゃんが目を開けた。

「あ、起こしちゃったか……」

コボルトの赤ちゃんは、寢惚け眼で周囲をきょろきょろと見渡す。

すると、近場で何かを作っていたマッパが立ち上がり、完したそれを赤ちゃんに見せつける。

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二本の、木の棒に丸い球が付いた……確か、マラカスとかいう楽だ。

マッパはそれを赤ちゃんの前で振り始め、不思議な踴りを披し始めた。

赤ちゃんはマッパの気な踴りには目もくれなかったものの、シャカシャカという音のマラカスには興味津々のようであった。

マッパのやつ、楽も作れたのか……

そんな時、エレヴァンが自分の子フーレを連れて窟の奧から帰ってくる。

どうやら採掘から休憩に戻ってきたらしい。

「お、チビが起きたか! ……べろべろべー!」

エレヴァンは赤ちゃんの前で、舌を突き出して変な表をする。

恐らくは、エレヴァンなりに赤ちゃんを楽しませたかったのだろう。

だが、赤ちゃんはその顔を見るなり、泣きだしてしまった。

エレヴァンは焦ったのか、今度は目をぎょっと開けてみる。

いや、エレヴァン……それ、逆効果だ。

案の定、赤ちゃんは聲を上げて泣きわめく。

フーレはすぐさまエレヴァンを引き離した。

「ちょっとお父さん! 何やってんの!?」

「わ、わりい……お前の時も…… あ……そういや、泣かせちゃってたな」

「當たり前でしょ! ただでさえお父さんの顔は怖いんだから!!」

娘の言葉に、「そ、そうか……」とエレヴァンは肩を落とす。

すると、後ろから見ていたケイブスパイダーのタランが、顔を近づけ、口を大きく見せてみた。

自分の変顔なら、赤ちゃんは笑ってくれるとでも思ったのだろう……

當然、赤ちゃんは顔を背けるように泣いてしまった。

タランはショックのようで、その場で固まってしまう。

自分の子供をあやす時は、これでうまくいってたのかもしれないが……

それを見かねたリエナは、赤ちゃんを抱きかかえに行く。

「二人とも、無理に笑わせようとするからそうなるのです……もう、大丈夫ですからねー」

赤ちゃんはリエナの顔を見て、落ち著きを取り戻した。

にこにこと笑い、またゆっくりと目を閉じる。

それを見ていたエレヴァンは、しょぼんとするタランのをポンと叩く。

「タラン、ここは姫に任せよう……」

「……」

タランはコクリと頷く。

「俺たちってそんな怖い顔してるかな……」

エレヴァンとタランはお互いに腕を組んで、埋立地の方へ向かっていくのであった。

二人はし可哀そうだが、赤ちゃんをあやすのはそれだけ難しいのだろう。

その點、リエナはさすがというべきか。

「リエナ……悪いが、俺はまた採掘に行ってくるよ。外の事と赤ちゃんのこと、頼んだよ」

「はっ、お任せください。また目が覚めたら、ごはんをあげてみます」

「おう、頼んだ。何かあったら、また知らせてくれ」

俺はピッケルを持って、窟へとるのであった。

昨日、この島に流れてきた、傷だらけのコボルトとオークの死

付近で海戦が起きたと考えるのは普通だ。

そんな中、採掘をしにいくのに不安がないわけじゃない。

だが、この島をかにするには、やはり採掘以外にないのだ。

それに地上には、魔法を使えるようになったリエナに、ゴーレムや警備隊もいる。

警戒は任せて、俺は一番得意な採掘に集中すべきだ。

十分ほど降りたところで、俺はまた採掘を始めるのであった。

マッパの作ったミスリル製のピッケルは、驚くほどに掘り進められる。

「……しかし、クリスタルの出が悪くなってきたな」

インベントリを確認すると、魔力を上げるクリスタルが採れる頻度がなくなってきたことに気が付く。

俺はもう十分すぎるぐらいの魔力を有しているが、リエナにはもっと魔力を増やしてもらいたい。

それに、フーレやバリスが魔法を使えるようなったときのためにも……

とはいえ、出ないは仕方がないな。

何か別の、有用なを掘り當てられるかもしれないし……

俺は黙々とピッケルを振る。

そしてある程度掘っては、額の汗をぬぐい、インベントリを確認してを繰り返す。

すると……

「……世界樹の種子?」

聞いたこともないがあった。

どうやら、また新たなを掘り當てたようだ。

世界樹なるものが何かは分からないが、種子ということは植の種(たね)であることは間違いないはずだ。

俺は助言者に解説を頼んでみる。

だが、

≪回答不能。鉱石図鑑では報が不足しているため、回答できません≫

つまり、植の種子は専門外ってことか。

まあ、種だ。地上に埋めれば何かしら咲くということだろう。

バリスが何かを知ってるかもしれない。地上に戻ったら、聞いてみよう。

とりあえず新たなが手にったことを俺は喜ぶと、再びピッケルを振ろうとした。

その時、後ろから聲が掛かる。

「おーい、ヒール様」

「お、フーレか。と……」

聲に振り返ると、そこにはフーレがいた。

そのには、白い子犬……コボルトの赤ちゃんが抱きかかえられていた。

赤ちゃんはこちらを見ると、ぴょんと俺のに飛び込む。

そして頭を摺り寄せてきた。

フーレは安心したように呟く。

「やっぱその子、ヒール様を探してたのね」

「……俺を?」

「うん。起きたら、辺りを見回して、不安そうな顔をしちゃって。姫があやしてたから、泣きはしなかったんだけど、落ち著きがなくてさ。もしかしたら、ヒール様を探してるんじゃないかなって思ってね」

「なるほど……」

この懐きよう……もしかして、俺を親と思っている?

寶石箱を開けた時、最初に俺の顔を見たからだろうか?

バリスが言うには、生後間もないコボルトの子だと言っていた。

もしかすると、本當の親の顔も見れず、俺を親と認識したのかもしれない……

こちらとしても、このらしさにはなんとも癒されるものだ。

だが、本當の親に出來れば會わせてやりたかったが……

寶石箱にれて流したことを考えれば、この子の親はもう……

俺は思わず、上目遣いの赤ちゃんをぎゅっと抱きしめた。

「よしよし、いい子だな。 ……そういえば、こいつの名前」

俺がそう思った時、助言者の聲が響く。

≪テイムが可能な魔がいます。テイムしますか?≫

コボルトもそういえば魔だったな。

テイムすれば、この赤ちゃんにも【窟王】の恩恵が與えられる。

だが、まだ赤ちゃんに採掘をさせるわけにもいかないので、今テイムする必要もない。

それに、まだ親が生きていたとしたら……

とりあえず名前だけ考えて、テイムは見送るか。

俺は赤ちゃんをでて、フーレに言った。

「俺はとりあえず地上に戻るよ。こいつも寢かしつけなきゃだし、ちょうどよく分からない植の種を掘り當てたところだったから、バリスにちょっと聞いてみようかなって思ったところだ」

「そう。じゃあ、私は掘るのに戻るね!」

「ああ、頑張ってくれ……うん?」

俺は猛スピードで降りてくる、ミスリルゴーレムに気が付く。

鈴を鳴らしているのを見るに、どこかで何かあったようだ。

「どうした?」

俺の聲に、ミスリルゴーレムは、まっすぐと窟のり口の方を指さした。

「外で……何かあったのか?」

ミスリルゴーレムはうんと頷く。

俺は赤ちゃんを抱えながら、上へと向かうのであった。

この時、埋立地では因縁の対決が始まろうとしていた。

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